『俺が俺になった訳3』〜俺が見たかった未来〜
あの日の勝負は、俺の勝ちだった。
結局、爺さんに勧められて
俺も魔獣討伐隊へ入ることにしたが
訓練に次ぐ訓練
毎日が戦いの日々だった。
だが、俺に勝てる奴は誰もいない
互角にやり合えるのは
デリーぐらいなもんで
他は雑魚ばっかだった。
ただ、俺にも一つだけ苦手なことがあった。
魔獣に、とどめを刺すこと…
どうしても、それができなかった。
致命傷を負わせているんだ
苦しませるくらいなら
とどめを刺してやった方がいい。
頭では分かっている
それでも
最後の一歩だけは踏み出せなかった。
だから魔獣は、勝手に死んでいく
だが…デリーには、その迷いはなかった。
「ガイル!見ろよ!
万能石、こんなに手に入れたんだ!」
「……すげぇな」
「フフン!ほら、ガイルにもやるよ!
なんかあったら、ちゃんと使えよな!」
結局
その万能石を俺が使うことはなかったが
ジレンを助けるために使うことになった
……デリー、あれで良かったんだよな
「今回の討伐で
特に功績を挙げた者を発表する!」
討伐隊本部に隊員たちが集められる
隊長が一枚の紙を広げ、口を開いた。
「今回、単独で上位魔獣二体を討伐し
第三部隊を救援した功績を称え……」
周囲がざわつく
「あれ、あの現場にいたのって……」
「ガイルだろ?」
「またあいつかよ」
「すげぇよな」
「アイツこそ、バケモンだよな」
隊長は小さくため息をついた。
「……ガイル、前へ」
俺は面倒くさそうに前へ出る。
「報奨金、昇格推薦、並びに……」
「……ふん、いらねぇ」
隊長の言葉を遮る。
「お前は……またか」
呆れたように隊長が眉をひそめた。
「そんな賞は、デリーにやってくれ」
その場が静まり返る。
「そろそろ……理由を聞こうか」
「別に……
ま、頼んだぜ、隊長サン」
それだけ言って踵を返す。
「おい、待て!
記録上、お前の功績だぞ!」
俺は振り返らずに答えた。
「……ふん
俺は、とどめは刺してねぇ
それでも寄越すってんなら……
ま、そういうことだ」
手をひらひらと振る。
「……デリーは将来、もっと強くなる
そういう肩書きは
アイツに持たせてやってくれ」
そう言って部屋を出た。
数日後
デリーは満面の笑みで
二人の行きつけの店へ飛び込んできた。
「ガイル!!聞いたか!?
俺、表彰されたんだ!!」
賞状を両手で掲げ
子どものようにはしゃぐ。
「隊長がさ!
『お前の活躍は見事だった』って!
くぅーーっ!!
これでまた一歩、夢に近づけた!」
嬉しそうに笑うデリーを見て
手に持っていたグラスを
デリーに向け、俺も小さく笑った。
「……そうか、良かったな」
「へへっ!
もっと頑張る!
絶対、隊長まで上り詰めるから!」
俺は何も言わなかった。
本当のことを知れば
きっとデリーは喜ばない。
だから、これでいい
夢を追って笑っている顔の方が
ずっとデリーらしいから。
一番隊隊長になったデリーが
ミリーを嫁さんにして
いつものようにニカッと笑う。
そんな未来を
このときの俺は信じて疑わなかった。




