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楽になりたかっただけなのに、熊みたいな男に拾われました!~物と話せる不思議な店で人生やり直します~  作者: かゆると


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『俺が俺になった訳2』〜デリーとの出会い〜

〘ガイちゃん♡

 あなたも、そろそろ

 人間のお友達を作らなきゃだめよ~♡〙


「……いらない」


俺は即答した。


「じいちゃんと、ばあちゃん

 それに、お前らがいればそれでいい」


〘…………ったく、ガキだな~〙


ボクは呆れたように肩をすくめる。


〘まぁ~ガイルらしくていいけどよ~〙


バンさんは、ふふっと笑った。


〘そういうところも

 ガイちゃん♡らしいものねぇ♡〙


「……ふっ

 なんだよ、それ」


思わず笑みがこぼれた、その時だった。


「ねぇ、誰と話してんだ?」


聞き慣れない声に振り返る。


そこには

俺と同じくらいの歳のガキが立っていた。


「……関係ねぇだろ」


そう言って店の中へ戻ろうとすると

そいつはヒョイッと俺の前へ回り込む。


「なあ、俺と遊ばない?」


「……遊ばねぇ」


「なんでだよぉ、いいじゃんか!

 遊ぼうぜ!」


「なあ!なあ、なあ!」


「だぁっ! しつけぇな!

 遊ばねぇったら、遊ばねぇよ!」


「…………」


デリーは俯いたまま動かない。


「……うっう……うわああああん!!」


「なっ……!お、おい!

 やめろ! 泣くな!!」


デリーは涙をボロボロこぼしながら

大声で泣き始めた。


道行く人が何事かとこちらを振り返る。


(お、おい……

 なんで俺が悪者みてぇになってんだよ……)


デリーは涙の隙間から、チラリと俺を見る。


「……俺と遊ぶ?」


「……だから! 俺は!」


「…うわああああああん!!」


俺の言葉を遮るように

さらに泣き声が大きくなる。


「いいじゃんかぁ!

 遊んでよぉぉぉ!!」


(な、なんなんだよ……こいつは)


「わ、分かった!

 分かったから、もう泣くな!!」


「…………!」


涙が、ピタリと止まる。


「じゃあ、俺と戦おうぜ!」


デリーは満面の笑みで木刀を差し出した。


「…………は?」


あまりの切り替えの早さに

思わず間の抜けた声が出る。


「俺さ!

 前から君のこと見てたんだ!


 良い身体してるなって!

 俺と同じくらい戦えそうだなって!」


「…………お前……

 気持ち悪ぃって言われねぇか?」


デリーは一瞬きょとんとしたあと

ニカッと笑った。


「よく言われる!!

 でも、俺は俺だから 

 何言われても、気にしないんだ!」


「………………」


「……ふっ、そうか、悪かった


 で?何本勝負にすんだ?」


「あっ!やる気になった?」


デリーは、パアッと顔を輝かせる。


「ここは狭いから、河原へ行こう!」


そう言うなり……


グイッ!


俺の手を掴み、勢いよく走り出した。


「お、おい!」


……と思った次の瞬間


ピタッ。


「……っ!」


ドシン!!


急に立ち止まった背中へ

思いきりぶつかる。


「いってぇ……」


額を押さえていると


「あっ!忘れてた!」


「……いきなり止まんなよ」


「へへへ!」


照れくさそうに頭をかきながら


「俺、デリー!よろしくな!!」


「……………」


(たくっ……調子の狂う奴だぜ)


「俺は、ガイル」


そう言って右手を差し出す。


デリーは満面の笑みで

その手を力強く握った。


デリーは

それから毎日のように店へやって来た。


まだ朝もやが残るような時間だってのに

ズカズカと俺の部屋へ入ってくる。


「起きろよぉ!」


そう言って、遠慮なく俺の体を揺さぶる。


「……うるせぇ、眠ぃんだよ……」


何度


「朝は入れんな」


と扉の野郎に頼んだことか。


だが

そのたびに返ってくる答えは決まっていた。


〘仲良きことは、良きことですよ〙


そう言って


カチャリ――


嬉しそうに扉を開けちまう。


「…チッ…裏切り者」


扉は何食わぬ顔で答える。


〘私は

 仲良しのお手伝いをしているだけですよ〙


「余計なお世話だっての…」


デリーは

成人したら魔獣討伐隊に入り

功績を残したい。


それが口癖だった。


「なんで、そんなに功績にこだわんだよ?」


俺がそう聞くと

デリーは照れくさそうに頭をかいた。


「だってさ、ミリーが

 強いって周りに認められなきゃ

 俺を好きにならないって言うんだよ」


「……ああ、アレか」


最近

やたらとデリーと一緒に来る変わり者の女。


初めて会った時から

やけに俺にベタベタしてくるし


デリーと話しているのに

平気で割って入ってくる。


「……そういうの、やめろ」


そう言うと、決まって機嫌が悪くなる。


正直、面倒で苦手な奴だった。


「だから

 俺、魔獣討伐隊で偉くなるんだ!」


木刀を空へ掲げ、デリーはニカッと笑った。


その笑顔が、少し眩しかった。


目を輝かせて未来を語る

しかも、それは誰かのための夢で。


その夢を本当に叶えようと

毎日努力している。


……俺には、無いもんだった。


「ふん…ミリーのために精進すんだな

 ……まずは、俺に勝ってな!」


カンッ!!


木刀を振り下ろす。


デリーは間一髪で受け止めた。


カンッ!


カンッ!


カンッ!!


木刀を打ち合わせながらも

デリーは楽しそうに笑う。


「なんだよ!

 俺の話は、まだ終わってないぞ!」


「ほっ!」


一歩踏み込み、木刀を振り抜く。


「なあ、ガイル!

 お前もさ!

 俺と一緒に、魔獣討伐隊に入ろうぜ!!」


「……俺は、いい」


「えーーっ!なんでだよぉ!」


そのまま木刀を打ち合わせる。


カンッ!


カンッカンッ!!


「……別に」


「あっ!そうだ!」


デリーがパッと顔を輝かせる。


「俺が勝ったら、入ってよ!!」


「あぁ!?

 お前、俺の話聞いてたか!?」


カーーン!!


勢いよく弾かれたデリーの木刀が

空中でくるくると回る。


俺は落ちてきた木刀をヒョイと受け止めた。


「はぁ……はぁ……」


肩で息をしながら、デリーは笑う。


「うん!聞いてたよ!

 『別に』ってことは

 どっちでもいいんでしょ?」


そう言って俺の手から木刀を受け取る。


「……ま、まあな」


「へへっ!

 じゃあ、入ってもいいってことじゃん!


 俺が勝ったら、入ってよ!」


「……ふんっ、いいぜ

 勝てるもんなら、な!」


カン!!


木刀がぶつかり、高い音が河原に響く。


デリーは満面の笑みで叫んだ。


「約束だからね!!

 ガイル!一緒に強くなろ!!」

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