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楽になりたかっただけなのに、熊みたいな男に拾われました!~物と話せる不思議な店で人生やり直します~  作者: かゆると


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吐き出した想い

〘ほぉ~んと、リールちゃん♡ってば

 鈍ちんさんねん♡〙


〘リールの鈍さは

 今に始まったことじゃねぇだろ~?

 …ま、そこもリールのいいとこだけどな~♡〙


「バンさん!?

 それに……ボクさんまで!」


私は驚いて辺りを見回した。


「ど、どうして?」


〘そりゃ来るわよぉ~♡

 あーんなにふらふらしながら

 歩いていくんだものぉ~〙


〘心配にもなるさ~

 リールに何かあったら……

 ガイルが俺を燃やしかねねぇからな~〙


「…ガイルは、そんなことしないわ」


私はふいっと川へ視線を戻した。


流れる水面を見つめながら、小さく笑う。


「……優しい人だもの」


その声を聞いたバンさんは、くすっと笑った。


〘ふふふ……

 リールちゃんってば

 本当にガイちゃん♡のこと……〙


最後まで言わずに、意味ありげに微笑む。


するとボクさんも、どこか満足そうに頷いた。


〘だな~

 ま、俺らはここでお役御免だな

 あとは……任せたぞ~〙


「……え?」


……………………


「……チッ」


聞き慣れた舌打ちに

私は勢いよく振り返る。


そこには

少し息を切らせたガイルが立っていた。


「ガ、ガイル!?」


思わず立ち上がる。


「なんで、ここに……?

 ミ、ミリーさんは!?

 ほっといていいの!?」


ガイルは私をじっと見つめたまま、一歩近づく。


「……黙れ」


低く、短い一言。


その声に、私は思わず口をつぐんだ。


「はぁ……

 こんなとこで何してんだ」


そう言うと

ガイルは私の隣へどかっと腰を下ろした。


「き、気が付いたら来てただけで……

 別に意味なんか……」


私は気まずくなって

ふいっとガイルから視線をそらす。


「……そうか」


それ以上、ガイルは何も聞かなかった。


「…………」


「…………」


川のせせらぎだけが、静かに耳へ届く。


流れる水を眺めながら

私たちはしばらく何も話さなかった。


やがて私は、小さく息を吸う。


「……ミリーさんって、ガイルの初恋なのね」


ガイルの肩が、ほんのわずかに動いた。


「ギンちゃんから、聞いたわ」


「……チッ

 余計なことを」


小さな舌打ちが、川の音に溶ける。


私は勇気を振り絞って、ガイルを見た。


「今も……

 好き、なの?」


ガイルは答えない。


ただ静かに川を見つめたまま

口を閉ざしていた。


「……だったら、どうだってんだ」


その一言に、私は息をのむ。


「ど、どうって…別に…

 た、ただ……い、妹としては……

 複雑……だけど……でも……」


「……そうじゃねぇ」


ガシッ!


突然、ガイルの大きな手が私の頭を包む。


「きゃっ……!」


ギギギ……


今にも噛みつきそうな顔をしたガイルに

強引に顔を向けられる。


「いたたっ……

 ちょ…ちょっと、ガイル…っ!」


まっすぐに私を見つめる琥珀色の瞳と

目が合う。


いつものぶっきらぼうな目じゃない。


何かを必死に堪えているような

そんな目だった。


「……お前は」


低く、静かな声が響く。


「どう思う…って聞いてんだよ」


「わ、私は……」


言葉が出ない


胸が苦しい


頭の中は真っ白で、何も考えられなかった。


「……分からない、けど……」


言いたいことは、たくさんある。


胸の中には

自分でも分からない感情が溢れるほどある。


なのに………


今はもう

素直な思いを伝えることしか考えられなかった。


「二人が……一緒にいるのを見るの、嫌なの」


声が震える。


「なんでか分からない

 でも……


 二人が楽しそうに料理してるのも嫌


 私の知らない昔話をしてるのも嫌


 ミリーさんがガイルに触るのも嫌

 

 初恋って聞いたのも嫌


 ……全部」


涙が滲んで、視界が揺れる。


「全部……

 全部嫌なの!!」


胸の奥に押し込めていた思いを

叫ぶように吐き出した。


「………………」


ガイルは、何も言わなかった。


その沈黙が怖くて、私は唇を噛む


(……幻滅、されたかな)


そう思った瞬間

堪えていた涙がポロリと零れた。


どうして今まで言えなかったのか

その理由が、ようやく分かった。


ガイルに、幻滅されたくなかった


こんな汚い感情を全部ぶつけたら

ワガママで、嫌な奴だって思われる気がして


だから、ずっと胸の奥へ押し込めていた。


(ああ…私

 この人に、ガイルに

 嫌われたくなかったんだ…)


その理由は、自分でも分からない


でも―――…


「はぁ……」


ガイルが、小さくため息をつく。


その音に、私はぎゅっと目を閉じた。


(……嫌われた)


そう覚悟した、その瞬間………


…ふわり


「……え?」


突然、身体が宙に浮く。


気が付けば

私はガイルにお姫様抱っこされていた。


「…ガ、ガイル!?」


慌てて見上げると

ガイルは私を見もせず歩き出す。


「……やっと言ったな」


ぽつりと呟いたその声は

どこか呆れたようで


それでいて……

少しだけ、嬉しそうだった。


「え……?」


私は何を言われたのか分からず

ただガイルを見つめる。


ガイルは何も答えない


その代わり、私を抱いた腕に

少しだけ力を込めると

そのままスタスタと歩き始めた。


「じ…自分で歩ける!

 降ろして!」


腕の中でじたばたと、もがく。


すると、私を抱くガイルの腕に

さらに力がこもった。


「……ふん」


鼻で笑うように呟く。


「自分の顔、見てみろ」


「……なっ」


悔しくなって睨み返す。


「…誰のせいよ!!」


思わず声を荒げると

ガイルは一瞬だけ目を細めた。


「……俺のせいだな」


あっさり認められて、言葉に詰まる。


ガイルは前を向いたまま、小さく続けた。


「……黙って隠しとけ」


その言葉に


どうしてか分からない


でも、また涙が滲んでくる。


見られたくなくて

私は慌てて顔をガイルの胸に埋める。


「~~っ……」


鼻をすすりながら、小さく呟く。


「責任……取って」


ガイルは足を止め、黙って私を見る。


「クッキー、作って

 たくさん」


涙をごまかすように、ぷいっと顔を背ける。


「……ガイルも食べちゃダメ

 全部、私が独り占めするんだから」


そう言い切ると、ガイルは小さく鼻で笑った。


「……お前のもんだって言ったろ」


その一言と一緒に

私を抱く腕へ、少しだけ力がこもった。

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