プレオープン反省会
翌朝
私はいつもより少し早く目を覚ました。
ガイルが淹れてくれたコーヒーを片手に
店内を見渡せるカウンター席へ腰を下ろす。
「うーーーん……」
昨日のプレオープンを思い返しながら
一人反省会を始めた。
「やっぱり……
ちょっとバタバタし過ぎてたわよね」
プレオープンは限定二十組。
だけど私は
〘二十組〙ということばかり気にしていて
実際に何人来店するのかまでは
考えていなかった。
思い返せば
人数にして六十人近くはいたはずだ。
この先、ドーンザワカフェが
グランドオープンし
人気店になれば
昨日以上のお客様を迎えることになる。
「……動線、なのかなぁ」
私は店内を見渡した。
「やっぱり厨房への道が少し狭いし……
いっそ席は外だけにした方が……
でも、暑い日も寒い日もあるし……
あー、考えがまとまらない……」
腕を組みながら頭を悩ませていると
カラン、カラン。
「よぉ! 昨日は楽しかったなー!!」
「おはようございます!!」
ザックさんとジレンくんが
元気いっぱいに店へ入ってきた。
「二人とも、おはよう!
昨日は本当にお疲れ様!」
私は笑顔で二人を迎える。
「おう!」
「お疲れ様でした!」
二人が返事をすると
ジレンくんがおずおずと口を開いた。
「リールさん、僕ね!
店員さんやってみて楽しかったんだけど……
何度もお客さんに
ぶつかりそうになっちゃったんだ……」
「俺も!」
ザックさんが苦笑いしながら頭をかく。
「料理運んでるときにさ
こぼしそうになったんだよなー」
「やっぱり……」
私がそう呟いた、その時…
「……朝から元気過ぎだろ……お前ら」
低く落ち着いた声が聞こえた。
振り向くと
厨房からガイルがゆっくりと姿を現す。
湯気の立つコーヒーカップを片手に
少し呆れたような表情を浮かべている。
「ガイルさん、おはようございます!」
「よお!!」
ザックさんとジレンくんが声を揃える。
ガイルは小さく息を吐き
「……ああ」
とだけ返した。
そして、そのまま
カウンターの引き出しを開けると
一枚の紙を取り出す。
バサッ……
無言でテーブルの上へ広げた。
「……なんかに使えるだろ」
「え……?」
目の前に広げられたのは
ドーンザワカフェの図面だった。
「ガイル……これ」
ガイルは何も答えず
図面の数か所を指で示す。
「……ここと、ここ
それからここだ。」
指先が止まったのは
店内の陳列棚が置かれている場所だった。
「陳列棚を寄せろ」
そう言うと、店内全体を見回しながら続ける。
「……少しは動きやすくなる」
「でも、その棚を寄せてしまうと……」
私は図面を見つめながら、小さく首を傾げる。
「日差しがもろに当たらないかしら……
食器さん達が
色褪せてしまわないか心配だわ」
その言葉に
ガイルが外を親指で差しながら
「だったら
ボクにグリーンカーテンを
掛けさせりゃ問題ねぇだろ」
「グリーンカーテン?」
思わず聞き返すと、ガイルは腕組みをして頷く
「つる植物を這わせりゃ
夏の日差しは和らぐだろ…」
確かに、見た目も涼しげになるし
食器たちも守れる。
「なるほど!」
私は思わず手を叩いた。
「それなら食器さん達も安心だし
お客様も涼しく過ごせそう!」
「おぉ!それ、いいじゃねぇか!」
ザックさんも嬉しそうに声を上げる。
「グリーンカーテン
僕も育てるの手伝います!」
ジレンくんも目を輝かせた。
ガイルはそんなやり取りを静かに聞いていたが、小さく頷き
「……悪くねぇ」
と、一言だけ呟いた。
その短い一言に
みんなの表情がぱっと明るくなる。
「じゃあ、動線の改善と
グリーンカーテンは決まりね!」
私は図面に新しくメモを書き込みながら
少しずつ理想のお店に近付いていくことが
嬉しくて、自然と笑みがこぼれた。




