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楽になりたかっただけなのに、熊みたいな男に拾われました!~物と話せる不思議な店で人生やり直します~  作者: かゆると


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45/55

プレオープン、大成功!

〘ちょっと、バカ女ー!!

 まだ二人組の客が外で待ってるじゃない!!

 店内空かないの!!?〙


ギンの叫び声が店中に響いた。


「……っ!」


私とガイルは同時に我に返る。


だが、その直後…


〘ちょっと、ギンちゃん!!

 空気読みなさいよ!!〙


〘ギン~、お前ほんっと気が利かねぇなぁ

 そこも可愛いんだがよ♡〙


「ハイハイ! 今行くわ!」


私はそう言って厨房を出ようとした。


その時……


「……待て」


ガイルに呼び止められる。


「え? なに?」


ガイルは冷蔵庫を開けると

ゴソゴソと何かを探し始めた。


やがて一つの小さな瓶を取り出し

私の方へゆっくり歩いてくる。


「……口、開けろ」


「……は?」


突然の一言に思わず固まる。


「……いいから」


そう言いながら

ガイルは私の顎へそっと手を伸ばした。


「な、なによ!?」


思わず口を開いた、その瞬間


ぽいっ


「もがっ……!」


口の中に放り込まれたのは

小さな焼き菓子だった。


サクッ。


噛んだ瞬間

香ばしいバターの香りが口いっぱいに広がる。


甘さは控えめで、ほどよい食感。


思わずもう一口

もう一口と噛みしめてしまう。


ごくん。


「……これってクッキー?

 えっ、ガイル、クッキーまで作れるの?」


「……試作品だがな」


そう答えると

ガイルは私の頭をぽんっと軽く叩いた。


「……毒見係、ご苦労さん」


ニヤリ…


いたずらっぽく口元を緩めると

そのまま何事もなかったように

コンロの前へ戻っていく。


「もうっ!」


私は思わず頬を膨らませた。


「最初からそう言ってよ!」


その後も店内は慌ただしさを取り戻し


気が付けば

プレオープン終了の時間になっていた。


「ありがとうございましたー!

 グランドオープンの際も

 ぜひまたお越しください!!」


最後のお客様を見送り、私は扉を閉める。


カラン……


ベルが静かに鳴り、店内に静寂が戻った。


私はゆっくりと振り返る。


ザックさん

ジレンくん


そしてガイル

三人と目が合う。


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


ほんの数秒の沈黙。


次の瞬間……


「「「終わったーーーー!!」」」


私とザックさん、ジレンくんは

同時に大きく両手を上げた。


その様子を見ていたガイルは

小さく口元を緩めながら


「……終わったな」


そう静かに呟いた。


〘リールちゃん!!

 お疲れ様♡よく頑張ったわねぇ♡〙


バンさんが嬉しそうに声を弾ませる。


〘お前らも頑張ったなー!

 今日は可愛い子ちゃんも大勢来たしな~♡〙


ボクさんは相変わらずの調子でケラケラと笑う。


〘ふ、ふんっ!

 ガイルの料理があったからこそじゃない!!〙


ギンは腕を組み

そっぽを向きながら鼻を鳴らした。


「ふふっ」


思わず笑みがこぼれる。


「みんなも、本当にお疲れさま」


そう言うと

ザックさんもジレンくんも大きく頷いた。


ガイルはみんなのやり取りを静かに眺めながら


「……ああ」


短く返事をする。


だけどその横顔は、どこか満足そうだった。


「……腹、減ったろ」


ガイルがそう言いながらテーブルに並べたのは

色とりどりの料理だった。


ふわふわのオムライスに

サラダ、スープ、焼きたてのパン。


そして………

ジレンくんの前には

小さなお子様ランチまで用意されていた。


「うおっ! 美味そうだな~!!

 いただきま~す!!」


ザックさんは目を輝かせながら席に着く。


「ガイルさん、ありがとう!

 僕、お腹ペコペコだったんだ!」


そう言うなり、二人は勢いよく食べ始めた。


「ちょっと、慌てて食べると喉に詰まるわよ」


思わず笑いながら声を掛ける。


「まあ……食べてる暇なんてなかったものね」


そう言って、私も料理へ手を伸ばした。


「いただきます」


一口食べると

疲れた体にじんわりと温かさが染み渡る。


誰もが夢中で料理を頬張り

さっきまでの慌ただしさが嘘のように

店内には穏やかな時間が流れていた。


やがて食事も終わり

お疲れ様会はお開きとなる。


「今日は本当にありがとうございました!」


「また明日な!」


ザックさんとジレンくんは笑顔で手を振り

ドーンザワカフェを後にした。


ザックさんとジレンくんを見送った後

私は二階へ上がった。


棚いっぱいに並ぶ食器たちを見渡し

にっこりと微笑む。


「みんなも、お疲れさま

 今日はゆっくり休んでね」


私の声に応えるように………


……ザワッ


棚いっぱいの食器たちが

小さく空気を揺らした。


その空気はまるで


「楽しかった!」


そう伝えてくれているようだった。


「ふふっ」


思わず笑みがこぼれる。


私は一つひとつ棚へ目を向ける。


「えーっと……

 今日、巣立っていった子たちは……」


数を確認すると……


四十八個。


「……四十八個も」


思わず頬が緩む。


「みんな、新しいお家で

 大切にしてもらえるといいな」


そう呟き

もう一度棚いっぱいの食器たちを見渡す。


どこか満足そうな空気に包まれた部屋を後にして、私は静かに自室へ戻った。

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