プレオープン開始
朝ご飯もそこそこに済ませると
私は一階へ降りた。
プレオープンに向けて
お店の最後の準備を始める。
「さて、あなた達!
今日が本番よ!
頑張りましょうね!」
まずは、みんなへの声掛けから。
カウンター兼レジを整え
お客様を迎える机と椅子をもう一度丁寧に拭く。
ナプキンを並べ
小さな花を飾っていると…
ギンの声が聞こえてきた。
〘朝から鬱陶しいほど元気ね~。
ガイルは、なんでこんな女を
側に置くのかしら〙
「ギンちゃん、おはよう!
今日は頼むわね!」
〘ふんっ!
アンタに言われたからじゃないんだから!
ガイルのためなんだからね!〙
そう言うと、ギンはいつもより激しく
くるくると宙を舞い始めた。
光の粒が舞い散り
その輪郭が少しずつ形を成していく。
やがて現れたのは………
白く艶やかな長い髪
金色に輝く瞳
白いレースをふんだんにあしらった
黒いワンピース
まるでゴシックロリータのような
小さな女の子だった。
「………………」
〘なによ。
何見てんのよ!
気持ち悪いわね!!〙
「……か……」
〘はぁ!?
なによ!
言いたいことがあるなら
ハッキリ言いなさいよ!!〙
「可愛い~~~~~!!」
〘バ……バカじゃないの!?
ジロジロ見るんじゃないわよ! バカ女!!〙
「だって、すごく可愛いんだもの!」
思わず頬が緩む。
「私ね、お兄ちゃんしかいなかったから
お姉ちゃんか妹が欲しかったの」
〘だ、だから何なのよ!!
バカ女の妹になんてならないわよ!!〙
そんなやり取りをしていると
ザックさんとジレンくんが店へ入ってきた。
「よお! いよいよ今日だな……って!」
ザックさんがギンを見つけて目を丸くする。
「また新しいやつじゃねぇか!
こいつは何の物なんだ!?」
「リールさん、おはようございます!」
ジレンくんは元気よく挨拶をすると
ギンを見つめて目を輝かせた。
「……わぁ、お人形さんみたい!」
「二人とも、おはよう!
今日は頑張りましょうね!」
そう言いながら
私はギンの本体を
柔らかい布で優しく拭き上げる。
「この子はギンちゃん
この剣の子なの」
「はあ!? あの呪われた剣って
有名なやつだろ!?
はぁ~……もっとイカツイやつかと思ったぜ」
ザックはギンを頭の先からつま先まで
何度もジロジロと見回した。
「ギンちゃんって僕も呼んでいい!?
あ、後で似顔絵描かせてよ!」
ジレンくんは目を輝かせながら
嬉しそうに声を弾ませる。
〘アンタたち……
揃いも揃って、バカよ! バカ!!
ふんっだ!!〙
「……ギン、そのへんにしとけ」
低い声が店内に響く。
振り返ると
ガイルが二階からゆっくりと降りてきた。
真っ白なコックコートに身を包み
胸元には黒い前掛け
その姿は
いつもよりずっと料理人らしく見えた。
「うわっ! ガイル、かっけぇ!」
ザックが思わず目を見開く。
「本当にお店の料理長さんみたいです!」
ジレンも目を輝かせた。
「……全員揃ったな」
そう言いながら、ガイルは皆の顔を見渡した。
「ええ! 全員揃ったわ!」
「へへ! なんかワクワクするよな!」
「僕、頑張る!」
〘……ガイルのためなんだから
バカ女のためじゃないんだから〙
皆が思い思いに声を上げた、その時だった。
〘アタシの存在、忘れてるわよぉ~♡!!〙
〘俺もいるぜ~!〙
バンさんとボクさんの声が店内に響く。
「…………」
ガイルは何も言わず、眉間にしわを寄せた。
「ふふっ、力強い助っ人の登場ね!
今日一日、皆で頑張りましょう!!」
そう声を掛けると、皆は力強く頷いた。
そして………
「……開けるぞ」
ガイルが静かに扉へ手を掛ける。
いよいよ、プレオープンが始まる




