明日、がまた来るなんて
ガチャ
「ほれ、入れ」
「お、お邪魔しまーす……………」
私は家の中へ足を踏み入れた。
そして……
「……は??」
思わず声が漏れた。
そこは、見渡す限り物だらけだった。
しかし、汚部屋というわけではなかった。
ゴミは一つも落ちていない
むしろ綺麗に整理されている。
あるのは食器類
掃除道具
調理器具
そして……
壁際には、日本ではまず見ないような
盾や剣が並べられている。
防具らしき物まであった。
更に……
ザワッ……
空気が一瞬動いた。
いや
揺らいだ、と言うべきかもしれない。
思わず辺りを見回す。
でも、窓は閉まっている。
風が吹いたわけじゃない。
…それなのに
まるで
私がここへ入ってきたことに
驚いたかのように。
「オイッ、突っ立ってねーで
テキトーに座れ」
「え、あ、うん」
(座れったって……)
私は辺りを見回した。
(どこによ……)
物だらけの部屋の中で
小さな椅子を見つける。
(…あれなら座れそう)
腰を下ろそうとした、その時
カタン……
椅子が微かに動いた。
(……ん?)
思わず目をこする。
もう一度見る。
でも……
椅子は何事もなかったように
静かなままだった。
「ほれ、これ飲め」
ガイルが差し出してきたのは
温かなミルクが入った小さなマグカップだった。
「あ、ありがとう」
両手で包むように持つ。
じんわりと伝わる熱が
冷え切った指先を温めてくれた。
一口飲む。
甘くて温かい…
冷えた身体に
少しずつ熱が染み込んでいく。
(……おいしい)
ホワホワしていると……
バサッ!!
突然何かが飛んできた。
「うわっ!?」
慌てて受け止める。
「……嫌かもしれねーが」
ガイルはぶっきらぼうに言った。
「とりあえず今夜はそれ着て寝ろ」
そして親指で二階を指す。
「部屋は二階上がって右だ」
広げてみると
白い男物のシャツだった。
丸い首元に 小さなボタンが付いている。
「…ガイルは、まだ寝ないの?」
「俺はまだやることがある」
そう言いながら
ガイルは奥の部屋へ向かった。
途中で足を止める。
そして振り返ると
ニヤリと口の端を吊り上げた。
「なんだ
添い寝してほしいのか?」
「い…いぃ…いらないわよ!!」
「そうか」
ガイルは鼻を鳴らした。
「まあ、何かあったら呼べ」
そう言って 奥の部屋を親指で示す。
「ここにいるから」
それだけ言うと
ガイルは奥の部屋へ入っていった。
(……からかわれた~!
なんなのよ、あの人
むかつくわ)
そう思いながら私は二階へ上がった。
部屋の扉を開ける。
そこは物で溢れていた一階とは違い
すっきりと片付けられた
六畳ほどの洋風の部屋だった。
渡されたシャツへ着替え
ベッドへ身体を沈める。
…柔らかい。
その瞬間、全身から力が抜けた。
(なんか……疲れた……)
今日は色んなことがありすぎた。
川へ飛び込んで
変な熊みたいな男に助けられて
泣いて
怒鳴って
からかわれて…
(……でも)
私は毛布を胸元まで引き上げた。
(死ぬ気は……失せたな)
「…変な、人」
それだけ口にすると
そのまま寝てしまった。




