表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
楽になりたかっただけなのに、熊みたいな男に拾われました!~物と話せる不思議な店で人生やり直します~  作者: かゆると


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/6

新しい、名前

「さあて、着いたぞ、起きろ」


「…起きてるわよ」


散々泣いたせいで

身体はもうヘトヘトだった。


腕も足も力が入らない。


まるで肩へ掛けられた濡れたタオルみたいに

私は男の肩の上でだらりとしていた。


「ふんっ……」


男は鼻を鳴らした。


「抱っこしてやろうか?

 それとも、おんぶの方がいいか」


「はぁ!?

 …なっ…なっ…何言ってんのよあなた!」


慌てる様子の私を見て

男はニヤリと口の端を吊り上げた。


「お姫さん抱っこでもいいぞ」


そうからかうように言いながら

男は私をゆっくりと地面へ降ろした。


「……似合わないわ」


「あ?」


「……いえ、別に」


(お姫様抱っこしてるこの人を

 想像したら似合わなかったってのは

 黙っとこう)


「……まあ、いい」


男は不機嫌そうに鼻を鳴らした。


「とにかく入れ」


…なんとなく察したらしい。


でも、それを言葉にするのは癪だったのか

眉だけがピクピクしている。

 

(……バレてる)

 

私はそっと視線を逸らした。


男はそんな私を一瞥すると

目の前の家の鍵を開けた。


(……ここが、いいとこ……?)


男が鍵を開ける様子を見ながら

私は首を傾げた。


(いい、とこ……?!)


そこで、ふと我に返る。

 

若い男女が真夜中に

 

誰もいない場所で

 

二人きり。

 

(……いや待って)

 

一気に頭の中が、覚醒する。

 

(ちょっと待ちなさいよ私)


急に固まった私を見て

男は眉間にシワを寄せる


「…お前ぇ……

 変なこと考えてるだろ」


「……へ、変なこと!?」


思わず声が裏返る


「バカかお前は!

 心配しなくても

 とって食ったりしねーよ!!」


男は腰へ手を当てると

大きなため息を吐いた。


「……あ、ま、うん、だよね」


パニックになって


一瞬で色んな考えが

頭をよぎったものの


考えてみれば

何かあるならとっくにあったはずだ。

 

川から引き上げられて


担がれて


泣いて


ここまで来た。

 

今さら何かするつもりなら

もっと早くしているだろう。

 

(……私、何考えてんのよ)


そう自分で反省はしたものの


それを認めてしまうのも

なんだか…悔しかった


「…据え膳食わぬは

 男の恥とも言うけどね」


そうボソリと呟くと


「お子ちゃまが使う言葉じゃねーよ」


「…お子ちゃまぁ!?

 人のこと何歳だと思ってんのよ!」


「ふんっ…知るか!

 お前の名前も年齢も

 教えてもらってねんだから」


(あ……そういえばそうだ)


望んで助けられたわけじゃない

でも…確かに助けてもらった。


その事実は変わらないのに

私は憎まれ口ばかり叩いていて


名乗ることすらしていなかった。

 

ただ……

 

月の大きさ

 

見たこともない景色


どこまでも続く草原に

大きな木々がポツポツと立っている。

 

日本みたいに建物が並んでいるわけじゃない。

 

遠くには街らしき灯りも見える。


でも、その建物も

 

石造りの壁

そして尖った屋根

 

まるで映画やゲームで見た

ヨーロッパの街並みみたいだった。

 

この男の服装

 

そして、目の前に建つ家…


赤レンガの壁


二階へ続いているらしい螺旋階段

 

そして、大きな看板には

見たこともない文字で何かが書かれている。

 

(……表札……じゃないわよね?)

 

家の隣には

見上げるほど大きな木が立っていた。

 

まるで

その家を守るように

 

月明かりを受けた葉が 夜風に揺れている。

 

改めて見れば見るほど

違和感しかない。

 

(……どう考えても)

 

私は空を見上げた。

 

(ここ、日本じゃないわよね……?)


もし……


ここが日本じゃないなら、と


そう思った瞬間

不思議と一つの考えが浮かんだ。

 

新しい名前にしたい。

 

その方が……

生き直せる気がした。

 

私はしばらく考えてからゆっくり口を開く。

 

「リール」

 

「……あ?」

 

「リールよ」

 

男が片眉を上げた。

 

「歳は二十一歳」


「……リール、か」


男は小さく頷いた。


「俺はガイル、歳は二十三だ」


「え、誰が?」


「あ?」


「いや、え? 二十三?……」


私はガイルを見上げる。


少し考えて…

 

もう一度下から上まで、見る。

 

「えええええ!!?」


思わず叫んだ。


「嘘よ!!

 詐欺よ!!

 訂正してお詫びしなさい!!」


「うるせぇ!!

 …とにかく、いい加減中入れ!!」


(23?ホントに?

 でも…老け顔の人も世の中いるし

 でも…でも……)


そうブツブツ考えながら

私は、家の中へ足を踏み入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ