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楽になりたかっただけなのに、熊みたいな男に拾われました!~物と話せる不思議な店で人生やり直します~  作者: かゆると


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2/6

現れた熊みたいな男

冷たい

 

痛い

 

苦しい

 

二月の川は

想像していたよりも遥かに冷たかった。

 

(痛い……)

 

死ぬって

もっと楽なものだと思っていた。

 

(でも……もうすぐ楽になれる……)

 

そう思いながら

私は、更に深く水へ身を委ねた。

 

その時だった。

 

ガシッ!!

 

突然 誰かに腕を掴まれる。

 

「おいっ!!お前!!大丈夫か!?」

 

低く大きな声が響いた。

 

次の瞬間

私は凄まじい力で 水面へ引き上げられる。

 

「ゴホッ!!」

 

肺に入った水を吐き出しながら

私は激しく咳き込んだ。

 

苦しい……

 

でも、そんなことよりも…

 

(……なんで……)

 

ぼやける視界の中

誰かが私の肩を支えている。

 

「しっかりしろ!!

 おい!!聞こえるか!?」

 

必死な声だった。

 

ゆっくりと顔を上げる。

 

そこには、スキンヘッドで

異様に身体が大きく

鋭い目つきをした男がいた。

 

まるで熊みたいだ。

 

でも、その強面に似合わず

今にも泣きそうな、心配そうな顔だった。

 

(……誰……?

 ううん、誰でもいい…)


「……んで…………たのよ」


「あぁ!?よく聞こえねぇ!

 なんだ!苦しいのか!?」


男が顔を近づける


「なんで……!!助……けた…のよ!!」


「…………は??」


男の目つきが更に鋭くなった


「……楽に…楽になりたかったのに!」


男は数秒黙った。


そして


「……あー……なるほどな」


そう呟く。


「〘楽に〙なりたかった……ねぇ」


男は頭をガリガリ掻いた。


「じゃあお前、死にたかったわけじゃねぇんだな」


そう言うと、男は突然しゃがみ込んだ。


「……え?」


次の瞬間

私は荷物みたいに肩へ担ぎ上げられる。


「…ちょっ!!ちょっと!!」


慌てて暴れる私を無視して

男は立ち上がった。


「暴れんな暴れんな」


そして、男は面倒臭そうに鼻を鳴らす。


「楽になりてぇんだろ?

 いーいとこ連れてってやっから

 大人しくしてろ」


そう言うと男はズンズン歩き出す


逃げようともがいてみたが

私を担ぐその腕はビクともしない


視線を下へ向けると

…思っていたより高い。


男の肩から地面まで、かなり距離があった。


(…これ以上暴れたら

 …落とされるかも)


そう思って

渋々…身体をこの男に預けた


「………………」


男は何も言わなかったが

私を担ぐ力が少しだけ緩んだ


(どこ行くんだろ…)


周りを見渡してみると

建物が何もない平野が広がっている


そして、ふと違和感に気付く


(……月が……大きい)


橋の上で見た時よりも、ずっと近く感じる。


まるで空へ浮かぶ巨大な灯りみたいに

辺りを照らしていた。


一定のリズムで揺られていると

不思議と、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。


泣いている赤ちゃんを

車へ乗せてドライブすると

いつの間にか寝てしまう。


そんな話を聞いたことがある。

 

(……なんとなく

 赤ちゃんの気持ちが分かるかも)

 

そう思ってしまった。


「……はぁ……」


思わずため息が漏れた。


「何してんだろ、自分……

 楽になりたくて川に飛び込んだのに……


 よく分かんない熊みたいな男に

 担がれてるなんて……」


「……おいコラ」


低い声が返ってくる。


「わざとだろ、聞こえてんだよ」


「……聞こえるように言ってんのよ」


「……あーあー、そうかいそうかい」


男は呆れたように言った。


「じゃあ俺も言わせてもらうけどな」


そう言った瞬間

私を担ぐ腕に力が入る。


「いった!? なにすんのよ!」


「軽すぎんだよ、お前」


男は鼻を鳴らした。


「力加減ミスったら、折れんぞ」


「荷物みたいに

 勝手に人を担いだのあなたでしょ!?

 何文句言ってんのよ!」


「文句じゃねぇ!」


男は即座に言い返した。


「だー!!鈍いやつだな、お前!」


そう言いながら

男はガリガリと頭を掻く。


「軽すぎっから

 ちゃんと飯食えって言ってんだよ!!」


「はあ?!

 何逆ギレしてんのよ!

 わっかんないわよ!!」


そう言うと

再び逃げようともがいてみる


「ほんっとさっきから

 何なのよあなた!


 目つきだけで

 人殺しそうな顔してるのに

 勝手に人を助けて


 涼しい顔して

 木でも引っこ抜きそうな

 身体してんのに

 勝手に人担いで 


 機嫌悪そうな声してんのに

 勝手に人の心配して…っ!

 

 ほんっと…!!」


そう言って

男の肩をバシバシ叩いて


暴れて叫んでるうちに

なんだか涙が溢れてきた


「……優しくされても

 心配されても

 ………どうしていいか…

 今は…分かんないのよ…」


静かな沈黙がしばらく流れた後


男は担いでいるのとは

反対の手で自分の耳を塞ぐ仕草をする


「……泣きてぇなら泣けよ

 こんな時間だ

 だーれも聞いちゃいねー


 俺も、うっさい泣き声なんか

 聞かねぇよ」


(あなた……ほんっと……)


そう言おうとした。


でも、次の瞬間には大声で泣いていた。


叫ぶように


八つ当たりするように


そして……子供みたいに。

 

なんだか……

ひどく安心して

 

今まで溜め込んでいたもの

全てを吐き出すように


私は、泣き続けた。

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