プロローグ
橋の上は、思っていたよりも
夜風が冷たかった。
私は手すりへ手を掛けながら
静かに川を見下ろす。
月明かりが川面で揺れ
ゆらゆらと下流へ流れていく。
「……綺麗、吸い込まれそう……
このまま落ちたら……楽になれるかな」
そう口にした瞬間
勝手に涙が頬を伝った。
店長の進言で パートになってから半年。
私は、自分なりに頑張ってきた
仕事を早く覚えようとした
期待に応えたかった
迷惑を掛けたくなかった
だけど……
〘店長のお気に入り〙
そう思ったらしいお局様たちは
執拗に私を責め続けた。
些細なことで怒られ
ロッカーを開ければ中身が出されている。
休憩へ行こうとすれば
仕事を押し付けられ
休みの日ですら 電話が鳴り止まない。
そして時には
呼び出されることもあった。
そんな毎日が 半年ほど続いて
気付けば
朝になるのが怖くなっていた。
仕事へ向かうだけで
吐き気がするようになった。
ブルルルル……
カバンの中で スマホが震える。
見なくても分かる
お局様の一人だ。
出ても嫌味
出なくても嫌味
私はスマホを取り出すこともせず
ただ川を見つめた。
「いっぱい頑張ったよね……」
誰に言うでもなく呟く。
「たくさん耐えたよね……」
まるで返事のように
フワッと夜風が吹いた。
「もう……楽になってもいいよね」
そう言いながら
私は手すりを乗り越えた。
…怖くない、何も…感じない
そして、それが当たり前かのように
……身体を前へ預けた。




