お店屋さんごっこ?
難しい顔をしたまま黙り込んだ私を
ジレンくんが心配そうに覗き込んだ。
「リールさん、どうしたの?」
「え?」
私は、ハッと顔を上げる。
「あ……ううん、大丈夫」
にっこり笑って首を横に振る。
「心配させちゃって、ごめんね。」
「なんか悩み事か?」
ザックが自分の胸を、ドンッと叩く。
「俺たちで良ければ力になるぜ!」
「…………」
私は二人の顔を見つめ
少しだけ困ったように笑った。
「んー……実はね
人手が足りないの」
「人手?」
「うん、厨房はガイル
店内の接客は私
でも、お店って……
それだけじゃ回らないのよね」
すると
ジレンくんが、ぱっと目を輝かせた。
「じゃあ!」
小さく両手でガッツポーズを作る。
「僕で良ければ、店員さんやるよ!」
「俺も!」
ザックも負けじと手を挙げる。
「俺も手伝う!」
思わず笑みがこぼれる。
「二人とも……ありがとう」
その時だった。
ジレンくんが首をこてんと傾げる。
「でもね……
店員さんって、どうやるの?」
ジレンくんの仕草に
思わず笑みがこぼれた。
(か、可愛い……)
私はそっと
ジレンくんの前へしゃがみ込む。
「……ジレンくんは
店員さんになってみたい?」
「うんっ!!」
元気いっぱいに頷く。
その笑顔を見て
私も自然と笑顔になった。
「じゃあ……今日は
お店屋さんごっこをやってみましょうか」
「お店屋さんごっこ!?」
ジレンくんの目が、ぱっと輝く。
「そう、お店屋さんごっこ」
私はにっこり笑う。
「私がお客様をやるから……
ジレンくんが店員さんをやってみて?」
「うん!!」
ジレンくんは元気よく頷いた。
すると、その横で
ザックも勢いよく手を挙げる。
「おっ! じゃあ俺も店員やるぜ!」
胸を張り、大きく息を吸い込む。
「いらっしゃせぇぇぇー!!」
「……はい、ダメです」
「えぇっ!? なんでだよ!!」
思わず声を上げるザックさんに
私は苦笑いした。
「最初の挨拶ってね
お客様が、そのお店をどう感じるか……
第一印象が決まる大切なものなの」
ザックは『ふむふむ』と
頷きながら腕を組む。
私は続けた。
「だから、元気なのはとてもいいこと
でも……元気なだけじゃなくて
相手に気持ちよく聞こえるように
はっきり、でも丁寧に伝えることも大切なの」
「あ、なるほどなぁ……」
ザックさんは感心したように何度も頷いた。
そんな話をしていると……
「……何の騒ぎだ?」
低い声が聞こえた。
振り向くと
首へ手を当てながら
ガイルが二階からゆっくりと降りてきた。
「あ、ガイル」
私は少し申し訳なさそうに振り返る。
「ごめん……うるさかった?」
「……いや」
ガイルは小さく首を振る。
「それより……何してんだ」
すると、ジレンくんが嬉しそうに駆け寄った。
「あのね、あのね!
今、お店屋さんごっこしてるんだ!
僕と兄ちゃんが店員さんなの!」
満面の笑みでガイルを見上げる。
「ガイルさんも、お客さんやってよ!」
「…………」
ガイルは少しだけ
考えるように目を細めると
ふっと口元を緩めた。
「……いいぜ」
ザックへちらりと視線を向ける。
「その代わり………」
ニヤリ。
「俺はワガママな客だからな、覚悟しとけ」
「おっ!?」
ザックが一瞬たじろぐ。
その横で、ガイルは
ジレンくんの頭をくしゃっと優しく撫でた。




