ドーンザワカフェ
数日後…
私は机いっぱいに紙を広げ
小さくため息をついた。
「はぁ……」
何枚書き直しただろう。
目の前には
書きかけのチラシが何枚も並んでいる。
その中の一枚には、大きくこう書かれていた。
『ドーンザワ商店リニューアルオープン』
「なんか……違う気がするのよね」
間違ってはいない。
リニューアルオープン。
それは事実だ。
でも……
「何かが足りない……」
私は大きく伸びをすると
もう一度チラシへ視線を落とした。
(リニューアルオープン……
間違いじゃない
でも、それだけじゃ……
お茶が飲めることも
軽食が食べられることも
伝わらない
どうしたら新しくなった
お店の魅力をもっと伝えられるんだろう……)
頭を悩ませていると………
「ちわーっ!リール、来たぜー!」
元気な声とともに
ザックさんが店へ入ってきた。
その後ろから
ジレンくんも嬉しそうに駆け寄ってくる。
「リールさん、こんにちは!
この前お願いされたコップ
色付けしてきたよ!」
「本当!? ありがとう!」
私は笑顔で二人を迎えた。
「おっ、何書いてんだ?」
ザックさんが机の上のチラシを覗き込む。
「お店のチラシよ」
「へぇ、どれどれ…」
『ドーンザワ商店リニューアルオープン』
そう書かれた文字を見つめ
ザックさんは首を傾げた。
「字が上手くなったなー!
お?でも商店なのに
お茶が飲めて飯も食えるんだろ?
なんか……レストランみたいだな」
「兄ちゃん、違うよ」
ジレンくんがすぐに首を横へ振る。
「商店もあるし、軽食だし……
レストランとは違うよ」
「じゃあ、何だ?」
「えっと……」
ジレンくんは腕を組み、考え始めた。
「うーん……」
しばらくして、ぱっと顔を上げる。
「あっ!
前に読んだ絵本にね
『カフェテリア』
っていうお店が出てきたんだ!」
「カフェテリア?」
私はその言葉を小さく繰り返す。
「うん!
お茶を飲んだり、ご飯を食べたりしてた!」
「…………」
その瞬間だった。
(……カフェテリア
そうだ……)
私の脳裏に、日本で見慣れた景色が浮かぶ。
木のテーブル
コーヒーの香り
笑顔で談笑する人たち。
(……カフェ)
思わずチラシを引き寄せる。
『ドーンザワ商店リニューアルオープン』
その文字をじっと見つめ
私は鉛筆を走らせた。
そして、新しく書いた文字を見つめる。
『ドーンザワカフェ』
「……これだわ!!」
思わず笑みがこぼれる。
「商店でもあり……
お茶も飲めて、軽食も楽しめる
うん、この名前なら
このお店らしさが伝わる………
二人とも、ありがとう!」
私は嬉しそうに笑う。
「後は……そうね……」
そこまで言って、ふと考え込んだ。
(……人数が足りないのよね)
厨房はガイル
そして、店内の接客は私
それだけなら、何とかなるかもしれない。
でも……
ボクさんの木陰に作った席は、お店の外だ。
料理や飲み物を運び
食べ終わった食器を下げ
注文を聞いて
お会計もする。
それだけでも十分忙しい。
それに加えて……
(このお店は
ただ飲んだり食べたりするだけの
お店じゃない)
私は二階に並ぶ食器たちを思い浮かべる。
(食器さん達の声を聞いて
その子の魅力を伝えて
お客様の話も聞いて
そして…
『持って帰りたい』
『お家でも使ってみたい』
そう思ってもらう)
それが、このお店で一番大切なこと。
だからこそ
慌ただしく接客していては意味がない。
店員が忙しそうに走り回れば
その空気は、お客様にも伝わってしまう。
そうなれば
お客様も落ち着かず
食器さん達と
ゆっくり向き合う時間もなくなってしまう。
(それじゃあ……
このお店を始める意味がない)
私は腕を組み、小さく息を吐いた。
(どうしたらいいんだろう……)




