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楽になりたかっただけなのに、熊みたいな男に拾われました!~物と話せる不思議な店で人生やり直します~  作者: かゆると


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素直じゃない三人

翌朝。

ふわりと漂う、バターの香りで目が覚めた。


「ん~……いい匂い……」


大きく伸びをしながら部屋を出る。


(今日の朝ごはん、なんだろ~)


そんなことを考えながら

キッチンを覗き込んだ。


「ガイル、おはよ~……え?」


思わず言葉が止まる。


そこにいたのは、ガイルではなく……


「ボ、ボクさん!?」


ボクさんだった。


白いフリフリのエプロン。


お揃いのフリフリ三角巾。


鼻歌まじりに

パンへたっぷりとバターを塗り

フライパンでこんがりと焼いている。


(……なんで!?

 というか、その格好似合いすぎ……!)


そして、そのすぐ横には……


枝でぐるぐる巻きにされた

ガイルが転がっていた。


「ガ、ガイル!?」


慌てて駆け寄ろうとすると


〘よぉ、リール♡

 おはよう!よく眠れたかぁ?♡〙


ボクさんはにかっと笑う。


〘あぁ、いいんだいいんだ♡

 コイツぁ、オレがリールに

 愛情た~っぷりの朝飯を作るのを

 邪魔した罰だからよぉ♡〙


そう言いながら


ガイルを足で、ゲシッ


もう一度、ゲシゲシッ


「…………」


枝に巻かれたままのガイルは

無表情でボクさんを睨んでいる。


「…………えぇぇぇ……」


私は目の前の光景に

ただ立ち尽くすしかなかった。


ボクさんは鼻歌まじりに

軽くステップまで踏みながら

上機嫌で朝食を作っていく。


パンへたっぷりとバターを塗ると

砂糖を惜しみなく振りかける。


それをフライパンへ乗せ

蓋をしてじっくり蒸し焼きにする。


頃合いを見て、ひっくり返し

今度は反対側にも少しだけ砂糖を振り

こんがりと焼き色を付けた。


甘く香ばしい香りが部屋いっぱいに広がる。


火から下ろし、少しだけ冷ますと……

表面の砂糖が、パリッと音を立てた。


中はふんわり


外はカラメルが薄く固まった

香ばしいバタートースト。


〘ほぉれ♡〙


ボクさんは得意げに胸を張る。


〘オレの得意料理だ

 さぁ、食ってみなぁ!〙


そう言いながら


なぜか……


パチンッ


ガイルの頭を軽くはたいた。


「…………」


枝でぐるぐる巻きにされたまま

ガイルは小さくため息をつく。


(……早く終われ)


そんな心の声が聞こえてきそうな顔をしていた。


「うわぁ……美味しそう」


思わず目を輝かせる。


……でも、その次の瞬間


(……いや、その前に)


私は枝でぐるぐる巻きにされた

ガイルへ目を向けた。


(『ガイルを離してあげてください』って

 言わなきゃ……)


そう思った

……思ったのだけれど


(でも……

 食べないと終わらない気もする……)


チラリと、ボクさんを見る。


期待に満ちた目で、こちらを見つめていた。


(……うん)


私は覚悟を決めて、一口かじる。


「…………!」


表面は、パリッ


砂糖が心地よく砕け

そのあとに、サクッ


そして、中は驚くほどふんわり。


甘さの中へ

バターのほどよい塩気が広がっていく。


思わず笑みがこぼれた。


「ふふっ……!」


もう一口。


「えっ、本当にすごく美味しいです!」


〘だろぉ~~!?♡〙


ボクさんは胸を張って笑う。


そして、くるりと振り向くと


パシンッ


ガイルの頭を軽くはたいた。


〘と、いうわけだガイル!〙


もう一発


ペシッ


〘今、見てたな!?〙


ペシッ


〘覚えたな!?〙


ペシッ


〘ほれ!

 次はお前が作ってみろぉ!!〙


「…………」


ガイルは、小さく息を吐くと

呆れたようにボクさんを見つめた。


「……相変わらず、素直じゃねぇな」


〘ふんっ!お前もな~!〙


ベシッ!!


強めにガイルの頭をはたいた

ボクさんの顔が


何故だろう


その姿が、私には……


『お父さん』のように見えた。


(……お父さん、か)


その言葉が、胸の中に残る。


(ガイルの、お父さんとお母さんは……

 どんな人だったんだろう?)


聞いてみたい。


でも……

その言葉は、喉の奥で止まった。


(……聞かない)


家族の話は

思っているよりずっと難しい。


……それは、 私自身が

一番よく知っているから。

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