表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
楽になりたかっただけなのに、熊みたいな男に拾われました!~物と話せる不思議な店で人生やり直します~  作者: かゆると


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/42

誰かのために

「そういえば」


ザックがパンケーキを頬張りながら

ガイルを見た。


「お前、料理できたんだな」


「……あ?」


ガイルは湯呑みを口元へ運ぶ。


「あぁ。爺さんのおかげでな」


そう言って、小さく笑った。


〘んふふふふ……♡〙


その後ろでは

バンさんが意味ありげな笑みを浮かべている。


今にも口を挟みたそうに

ガイルの後ろをふわふわと

行ったり来たりしていた。


「…………」


ガイルは見なかったことにするように

そっと視線を逸らす。


(バンさん……話したくてうずうずしてる)


その様子がおかしくて、思わず笑みがこぼれた。


「そういえば」


私はガイルへ視線を向ける。


「さっきバンさんが言ってたわよね。

 お婆さんは、お菓子作りが上手だったって」


少し首を傾げる。


「じゃあ……お爺さんも料理が得意だったの?」


ガイルは少しだけ目を伏せる。


「……まぁな」


その一言が終わるか終わらないかのうちに……


〘ちょ~っと、ガイちゃん!!〙


待ってました!!と言わんばかりに

バンさんが二人の間へ飛び込んできた。


〘ち・が・う・で・しょぉ!?♡〙


「……」


ガイルは小さくため息をつく。


「……余計な話だ」


〘そぉんなことないわよぉ♡〙


バンさんは得意げに胸を張る。


〘ダンナさんねぇ

 お料理全部が得意だったわけじゃないのよぉ♡〙


「え?」


思わず聞き返す。


〘このパンケーキだけ♡〙


バンさんはテーブルに並ぶパンケーキを

どこか懐かしそうに見つめた。


〘これはねぇ……

 オカミさんに怒られた時に

 仲直りしたくて覚えた唯一のお菓子なのよぉ♡〙


「仲直り……?」


〘そうよぉ♡

 夜遅くまでお客さんと飲んで帰ってきては

 オカミさんによく怒られてたの♡


 それでねぇ♡

 ダンナさんも、素直じゃないから

 『ごめん』の一言がなかなか言えなかったの

 それでねぇ

 一生懸命覚えたのが

 このパンケーキなのよぉ♡〙


〘最初は焦がしたり、生焼けだったり♡

 それはもう、ひどい出来だったわぁ♡〙


「……あぁ」


ガイルが小さく笑う。


「婆さん、最初は文句言いながら食ってたな」


〘そうそう♡

 『なんなんですか、これは!』

 『甘くない!』

 『パサパサしてる!』

 なんてダメ出ししながら

 笑顔でちゃんと全部食べちゃうんだから♡

 本当に仲の良い夫婦だったわぁ♡〙


バンさんは嬉しそうに微笑む。


〘それをねぇ♡

 ガイちゃんったら

 毎日ダンナさんの隣に

 ぴったりくっついて見てたのよぉ♡〙


〘『爺ちゃん! 次は!?』

 『次は何するの!?』って

 目をキラッキラさせながらねぇ♡〙


そう言いながら

バンさんはガイルの頭へ肘を乗せた。


〘あ~あ♡

 あの頃のガイちゃんは可愛かったわぁ♡


 あ~んなに素直で

 あ~んなに可愛らしかった子が……〙


ガイルの頭をぽんぽんと叩きながら

大きくため息をつく。


〘それが今じゃ……

 こんな無愛想な熊男になっちゃってぇ…

 はぁ~……残念♡〙


「……放っとけ」


ガイルは嫌そうに頭を払う。


それでもバンさんは楽しそうに笑っていた。


私はそっと、もう一度パンケーキへ目を落とす。


(誰かと仲直りしたくて、生まれたお菓子……

 誰かを笑顔にする、お菓子……か)


甘い香りが、ふわりと鼻をくすぐる。


(……なんだか、いいな)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ