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楽になりたかっただけなのに、熊みたいな男に拾われました!~物と話せる不思議な店で人生やり直します~  作者: かゆると


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26/41

この……アタシが♡

「……ん?」


私が振り返ると、


バンさんは腕を組んだまま

ふわりと宙へ浮いていた。


けれど……

どこか、いつもと雰囲気が違う。


光に包まれた姿はそのままなのに

その輪郭は今までよりもずっとはっきりしていた。


ふわりと波打つ紫色の髪。


白い古代ローマの衣を思わせる

ゆったりとした装い。


胸元にはいくつもの首飾りが揺れ

金色の瞳が妖しく輝いている。


男とも女ともつかない

不思議な美しさを纏った姿だった。


「……バ、バンさん?」


思わず呟くと、


〘うふふふふ♡〙


バンさんは妖しく微笑む。


けれど、その視線は私ではない。


真っ直ぐ見つめているのは

ザックとジレンだった。


〘ア~タ達……♡〙


ゆっくりと二人を指差す。


〘リールちゃんのために頑張るって言うなら……

 仕方ないから、認めてあげるわ♡〙


「……え?」


ザックが目を丸くする。


その隣では

ジレンもぱちぱちと瞬きを繰り返していた。


「兄ちゃん……」


「ああ……」


二人は顔を見合わせ

恐る恐るもう一度バンさんへ視線を戻す。


「……見えてる」


「聞こえてる……」


〘そうよ♡〙


バンさんは得意げに胸を張る。


〘このアタシが心を開いた相手には

 ちゃんと声も届くし、姿も見えるの♡〙


そして……

ザックをちらりと睨みつける。


〘……ま、センス皆無のダメ男だけどねぇ♡〙


「バ、バンさんってば……」


バンさんはふわりとガイルの隣まで飛んでいく。


そして、ぽんっとガイルの肩を叩いた。


〘さぁ~て♡〙


〘ジレンちゃんはお絵描き♡

 センス皆無のダメ男はお勉強♡〙


〘ガイちゃんは

 リールちゃんのために

 お~いしいお茶を淹れてあげなさい♡〙


「……あ?」


ガイルが眉をひそめる。


〘何よぉ♡〙


〘先生役は二人に取られちゃったんだからぁ♡


 ガイちゃんは

 リールちゃんのアフターケア役に徹しなさい♡〙


〘ちゃんと美味しいお茶を淹れて

 疲れたら休ませて

 たまには褒めてあげるのよぉ♡〙


〘それが今のガイちゃんの……

 お、仕、事♡〙


「……余計なお世話だ」


ぼそりと呟くガイル。


〘照れちゃってぇ♡

 素直じゃないんだからぁ♡〙


「……ったく」


ぶつぶつと文句を言いながらも

ガイルは結局

そのままスタスタと二階へ上がっていった。


「……ガイル、大丈夫かな」


思わず苦笑しながら、その背中を見送る。


ふと視線を戻すと

ジレンくんは炭筆を走らせながら

ちらちらとバンさんを見上げていた。


(……あ)


きっと描いてる。


今度のモデルは、バンさんなんだ。


一方、ザックはというと……


「…………」


目の前にふわふわと浮かぶバンさんを

ぽかんと口を開けたまま見つめていた。


まだ信じられない。


そんな表情だった。


〘なによぉ♡〙


バンさんは腰に手を当てる


〘そんなに見つめられると

 照れちゃうじゃなぁい♡〙


「……いや」


ザックは恐る恐る口を開いた。


「その……

 オバケ……じゃないんだよな?」


一瞬の静寂。


そして………


〘オ、オバケですってぇぇぇ!?〙


バンさんの怒声が店中に響く。


〘キィーーーーッ!!

 やっぱりアンタはダメ男よぉぉぉ!!〙

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