同じ目線で
「……やっぱり、そう言うと思ったわ」
私は小さく笑って
もう一度ガイルの隣へ座り直した。
ガイルはまだ
私の手首を掴んだまま、何も言わない。
私はそっと、その手に自分の手を重ねた。
「心配してくれる気持ちは、本当に嬉しいの
でもね…私も同じくらい
ガイルを心配してるの」
ガイルの肩が、ほんの少しだけ揺れた。
「ここのところ、ほとんど寝てないでしょう?
食事だって、まともに食べてない
食べても、スープだけの日が多いし……
物達の相談も
お店の仕事も、一人で抱え込んでる
そんなガイルに
これ以上負担を増やしたくないの」
私は静かに微笑んだ。
「それに……私も、頼りっぱなしは嫌なの
ガイルと同じ目線で、隣に立っていたい」
そう言いながら、店内をゆっくり見渡す。
綺麗に並んだ食器達
窓辺で日向ぼっこをするギン
看板では、バンさんがこちらを見守っている。
「じゃなきゃ……
この子達も、きっと納得しないわ
支えてもらうだけの人が…」
私は店内へゆっくり視線を向けた。
「この子達を次の人へ送り出していく
頼りっぱなしの人が
偉そうに、この店やこの子達のことを語る」
小さく首を横に振る。
「私だったら……なんとなく嫌だわ」
もう一度ガイルを見る。
「だから今回は、ガイルに頼らない
自分のことは、自分でなんとかする
ちゃんと自分で活路を見つけたいの」
私は重ねた手に少しだけ力を込めた。
「だから……
少しの間だけ、見守っていてくれない?」
ガイルは眉間に皺を寄せたまま
何も言わず私を見つめていた。
その瞳はわずかに揺れていて
まだ納得していないように見える。
(……こうなったら)
私はどちらかと言えば
少年漫画の熱い戦いや試合
そんな、男達が本気で
ぶつかり合うような漫画ばかり読んでいた。
だから当時は、休み時間も
一人で漫画を読んでいることが多かった。
そんな私にも
たった一人だけ友達がいた。
その子が夢中になっていた少女漫画を
ある日「絶対読んで!」と
半ば強引に押し付けられたのだ。
その中で見た……
困った時のおねだり必殺技。
(たしか……こうだったわよね)
私はそっと身体を少しだけ前へ寄せ
ガイルを見上げる。
「……ダメ?」
ガイルが一瞬、目を見開いた。
「…………」
まるで何か言おうとしたように唇が動く。
けれど、ふいっと視線を逸らし
そっぽを向く。
「……好きにしろ」
(……)
(……効いた、のかしら?)
「ありがとう、ガイル」
私は嬉しそうに笑った。
「じゃあ……」
そう言いながら、視線を自分の手元へ落とす。
「……手、離してくれる?」
「…………」
ガイルは一瞬だけ固まると
そっぽを向いたまま
慌てるように手を離した。
「……悪ぃ」
ぼそりと呟く。
私は思わずその横顔を見る。
耳までとはいかない。
でも………
頬がほんの少しだけ赤く見えた。
(……気のせい、かしら)
「リールさん!」
カウンターの方から
ジレンくんの元気な声が響く。
「このお店の目玉商品って、なにー?」
「あ、待って! 今そっち行くわ」
立ち上がろうとすると
「リール!」
ザックも紙と炭筆を持ったまま笑った。
「とりあえず、書く方から始めようぜ!」
「はい! ザック先生!」
思わず敬礼すると
ザックが照れくさそうに頭を掻く。
店の中が少しずつ賑やかになり始めた
その時………
〘……チッ〙
聞き慣れた声が店内に響いた。
〘仕方ないわねぇ……♡〙
「……ん?」
私は思わず振り返った。




