お礼に来た兄弟
〘また来たわねーーーーー!!
センス皆無の若造がああ!!〙
突然、店の外から
バンさんの怒鳴り声が響いた。
「え?」
私は思わず顔を上げる。
その直後
カランカラン……
店のドアが開いた。
「ちわー!」
聞き覚えのある声。
「ガイル! リール! いるかー?」
「え……!ザックさん!……と」
私は言葉を途中で止めた。
ザックの隣に
見慣れない男の子が立っていたからだ。
茶色い髪を短く切り揃えた少年
ザックとはあまり似ていない。
年齢は十歳くらいだろうか
少年は不安そうな顔で
ザックの服の裾をぎゅっと掴んでいる。
「こ、こんにちは……」
遠慮がちな声だった。
「…こんにちは!」
私は少年の目線に合わせるように
そっと身をかがめる。
「あなたは、ザックさんの弟さんかな?」
「う、うん……」
少年はこくりと頷いた。
「僕、ジレン」
「ジレンくんね」
私はにっこりと微笑む。
「よろしく」
するとジレンは
少しだけ安心したように肩の力を抜いた。
「ガイル……さんに、お礼を言いに来たんだ」
「そうだったのね」
私は優しく頷く。
「ガイルは今、仕事部屋にいるんだけど……
もう少しかかりそうなの」
そして首を傾げた。
「もし時間があるなら
ここで待っててもらえるかしら?」
「あ、うん」
ジレンが頷く。
私はふと少年の顔を覗き込んだ。
「体調はもう大丈夫?」
その言葉に、ジレンの表情がぱっと明るくなる。
「うん!万能石のおかげで
すっかり良くなったんだ!」
そう言いながら、嬉しそうに笑った。
「お兄ちゃんと、ガイルさんのおかげだよ」
「そう」
私も自然と笑顔になる。
(か、可愛い……)
思わず頭を撫でたくなる
けれど、ぐっと我慢した。
まだ初対面だ
驚かせちゃうかもしれない。
「じゃあ、お茶を淹れるわね」
私は立ち上がる。
「向こうの席で待っててくれる?」
「うん!」
今度はさっきよりずっと大きな声で
ジレンは頷いた。
二階へ上がり、お茶の準備をしながら
私は仕事部屋へ目を向けた。
扉は少しだけ開いている。
そっと隙間から中を覗くと……
ガイルは机に向かったまま
何やら書類と睨めっこしていた。
その時
「……あいつが来たのか?」
顔も上げずにガイルが言う。
思わず肩が跳ねた。
「わっ!気付いてたの?」
「…気配で分かる」
相変わらずぶっきらぼうだ。
私は苦笑しながら扉を少し開く。
「あ、ごめん
…邪魔しちゃった?」
ガイルはペンを走らせたまま首を横に振った。
「いや」
「ザックさんと
弟さんのジレンくんが来てるの」
そう言うと、ガイルの手が一瞬だけ止まる。
「…ジレンもか」
小さな呟きだった。
「あなたにお礼が言いたいんですって」
そして廊下の向こうを指差した。
「終わったら下に来てくれる?」
ガイルは机の上の書類を一枚めくる。
「……ああ」
短い返事。
けれどその声は
どこか少しだけ柔らかかった。




