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楽になりたかっただけなのに、熊みたいな男に拾われました!~物と話せる不思議な店で人生やり直します~  作者: かゆると


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配置完了!後は…

片付けを始めてから、数日が経った。


店の中は少しずつ整理されてきている。


とはいえ…

相変わらず食器類は多い。


どこで待機していてもらうかで頭を悩ませていた。


店頭には鎧や武器達。


そしてギンも、店頭へ移動してもらった。


今まではカウンターの隅に置かれていたらしい。


けれど、せっかくなら

日光の当たる場所の方が気持ちいいだろう


そう思って提案したのだ。


『べ、別にアンタに言われたから

 ここにしたわけじゃないわよ!』


窓際に立て掛けられたギンが

ふわりと人型に姿を変え声を上げる。


『ガイルがここにしたらどうかって

 言ってくれたからなんだから!

 勘違いしないでよね! クソ女!』


「……クソ女、クソ女って」


私は思わず苦笑した。


「私にはちゃんと名前があるのよ?」


ギンに向かって掌を差し出す。


「ねぇ、名前で呼んでくれない?

 同じ女同士、仲良くしましょ?」


すると


『誰がアンタなんかと仲良くするもんですか!』


『べーーーっだ!!』


ギンは盛大に舌を出した。


もちろん表情は見えない

でも、そうしているように感じた。


「ふふっ」


思わず笑みがこぼれる。


(……ま、いっか)


窓から差し込む陽の光が

ギンの剣身をきらりと照らした。


私は思わず見上げる。


(少しずつ距離を縮めていけばいいものね)


店の両壁には調理器具達を並べた。


フライパンに鍋。


お玉や木べら達も見やすいように掛けてある。


カウンター前の一番目立つ場所には

お茶碗やお皿達。


大きさごとに並べると

なんだか少し誇らしげに見えた。


そしてカウンターの上には、コップや急須。


窓から差し込む陽の光を受けて

きらりと輝いている。


「ふぅ……」


私は大きく息を吐いた。


数日前まで

足の踏み場もなかった店内とは思えない。


まだ完璧じゃない。


でも…

少しずつ、お店らしくなってきた。


その間もガイルは

ほとんど仕事部屋に籠もりきりだった。


相談に来る物達の話を聞き

帳簿をつけ、時にはお客さんの対応をする。


私が片付けに集中できているのも


きっとガイルが店のことを

一人で支えてくれているからだ。


「さて、と……」


私はカウンター席へ腰を下ろした。


目の前には真っ白な紙。


そして炭筆。


腕を組みながら紙と睨めっこする。


「この世界にはSNSはない」


ぽつりと呟く。


「なら、リニューアルオープンしたことを

 伝えるには……」


……しばらく考え込み


やがて顔を上げた。


「やっぱりチラシ作りよね」


そう言った瞬間

真っ白だった紙へ勢いよく炭筆を走らせた。


…………。


………………。


どれくらい時間が経っただろう。


私はようやく炭筆を置いた。


「……できた」


達成感と共に、机の上の紙を見つめる。


「………………」


沈黙。


そして。


「……ダメだわ、やっぱり」


私は大きくため息を吐いた。


紙には確かに描いた。


コップ。


お茶碗。


剣。


防具。


描いた……つもりだった。


…でも


「何これ……」


自分で描いておいて何なのだが

何が描いてあるのか全然分からない。


コップは潰れた樽みたいだし

剣は魚の骨みたいだ。


お茶碗に至っては謎の生き物に見える。


「ひどい……」


思わず額を押さえる。


そして問題はもう一つ。


文字だった。


読めない。


だから、書けない。


「うぅ……」


私は机に突っ伏した。


ガイルに教えてもらおうかとも思った。


ふと仕事部屋の扉へ視線を向ける。


最近のガイルは忙しい。


今日も朝から部屋へ籠もったまま…


頼めばきっと教えてくれる


そんなことは分かっている


でも…


(忙しいのに……これ以上

 手を煩わせるわけにもいかないし……)


私は炭筆を握り直し

再び真っ白な紙へ視線を落とした。

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