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楽になりたかっただけなのに、熊みたいな男に拾われました!~物と話せる不思議な店で人生やり直します~  作者: かゆると


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18/25

聞こえる理由

ザックと別れ、私達は店を後にした。


すると………


〘ふんっ!!〙


バンさんが振り返る。


そして店へ向かって勢いよく中指を立てた。


〘ガイル以上にセンス皆無の男って

 いるのねー!!〙


更に親指を下へ向ける。


〘ブーーーーーッ!!〙


全力でブーイングしていた。


「アハハ……」


私は思わず苦笑する。


「まあ、悪気はなかったんでしょうけど……」


腕の中には、

ガイルとバンさんに選んでもらった服の入った袋。


思わず抱きしめる。


「白は汚れが目立つし……

 私にはちょっと勇気がいるかな」


そう言うと、


〘でしょー!?〙


バンさんが勢いよく振り返った。


〘リールちゃんは接客業なのよ!?

 白なんて一日で終わるわよ!!〙


〘あの若造、

 なーんにも分かってないんだから!!〙


「ガイル、本当にありがとう」


私は服の入った袋を胸元へ

抱き寄せながら微笑んだ。


すると


「ああ」


ガイルは短く答える。


そして私の手から袋をひょいと取り上げた。


「あっ

 …ありがとう」


思わず笑みがこぼれる。


荷物を抱えていた腕が軽くなった。


「それより……聞いてもいい?」


「あ?」


「バンさんって、他の人には見えてないの?」


そう尋ねると、ガイルは前を向いたまま頷いた。


「ああ

 見えてねぇし、聞こえてねぇだろうな


 前にも言ったが

 バンやギンみてぇなうるせぇのは稀だ」


視線の先では


〘キーーーーー!!〙


バンさんがまだ店の方を向いて

空を殴る真似をしている。


〘あの若造ぉぉぉ!!〙


〘センス皆無よぉぉぉ!!〙


相変わらず元気だ。


「あはは……」


思わず苦笑する。


ガイルはそんなバンさんを一瞥して続けた。


「だが……」


ガイルは少しだけ視線を前へ向けた。


「力がありゃ聞こえるってもんでもねぇ

 アイツらが心を開かねぇ奴には

 聞こえねぇし、見えねぇんだ」


「……そうなんだ」


私が呟くと

ガイルはちらりとこちらを見る。


そして、ほんの少しだけ

優しい顔をした。


「バンはともかく……

 ギンも素直じゃねぇが

 お前には心を開いてる」


「え?」


「無意識だったんだろうが

 お前の気が入ったおかげで

 アイツは呪いに負けずに済んだんだ」


「……そうだったら、嬉しいな」


私は思わず笑った。


「ねぇ

 食器達の声も

 いつか私に聞こえるようになるかな?」


「アイツらの声は小せぇからな」


ガイルは腕を組む。


「難しいかもしれねぇ」


「だが…」


そこで少しだけ言葉を切った。


「気配だけは感じてんだろ?」


「あ、やっぱり!?」


私は思わず声を上げた。


「あれ、そうだったんだ!

 空気が揺れるみたいな感じかな


 でも、その空気で分かるの

 焦ってる、とか驚いてる、とか…

 なんとなくだけど、伝わってくるのよ」


ガイルは少しだけ目を細めた。


「……十分だ」


「え?」


「聞こえるだけが全てじゃねぇ」


そう言って前を向く。


そして…

「……ありがとな」


聞こえるか聞こえないかほどの

小さな声で呟き

そのままスタスタと前へ歩いていった。


「……」


でも………


(……あ)


一瞬だけ見えた。


振り返ったガイルの横顔。


その口元は少しだけ緩んでいて

出会ってから今までで

一番優しい笑顔に見えた。


〘あらあら♡〙


いつの間にか後ろにいたバンさんが

のしっと私の頭の上に乗る。


〘ガイちゃんのあんな笑顔

 久しぶりに見たわ♡〙


「……」


私は遠ざかっていくガイルの背中を見つめた。


「ガイルは……」


ふと気になって口を開く。


「いつから物達の声が

 聞こえていたんでしょう?」


するとバンさんは少しだけ目を細めた。


〘……それはね〙


〘ガイちゃん……

 いいえ、ガイルが

 自分で話してくれるまで待っててあげて〙


いつもの軽い口調だった。


でも、その声はどこか優しい。


〘アタシから話すのは

 ちょっとタブーなのよ〙


「そう……なんですね」


〘…ええ〙


バンさんは小さく頷いた。


そして


〘でも、リールちゃんになら

 あの子はもしかしたら……〙


そこまで言うと

バンさんはふっと口を閉じた。


「……?」


首を傾げる私に

バンさんはいつもの笑顔を向ける。


〘ううん♡なんでもないわ♡〙


そう言いながら

前を歩くガイルの背中へ視線を向けた。

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