バンさんの愛情大暴走
〘あら!あらあらあら!〙
〘これなんかいいじゃないっ!?
ほら!リールちゃん♡〙
そう言いながら
バンさんが一着の服を差し出した。
それは若草色のエプロン付きワンピースだった。
「あ……可愛い」
思わず声が漏れる。
手に取って生地を触ってみる。
今着ている服よりもずっとしっかりしていた。
裾は膝下まであり、 動きやすそうだ。
(これならお店の仕事もしやすそう)
そう思いながら 鏡の前で軽く合わせてみる。
「……これにしようかな」
呟きながら値札へ視線を落とした。
【2000∌】
(2000∌……日本で言うと
いくらくらいなんだろう…
万単位とかじゃ……ないわよね?)
不安になって、ちらりとガイルを見る。
「……変な気ぃ使うな」
ガイルは私の視線に気付いたらしい。
「好きに買え」
そう言って また店の外へ視線を向ける。
「……うん」
小さく頷いた。
そんな私達のやり取りを
バンさんは少し離れた場所から見ていた。
〘んふふふふふ♡〙
何やら意味深な笑みを浮かべている。
けれど珍しく口は挟まない。
ただ
〘あらっ♡これも可愛いじゃない!〙
バサッ!
ガサッ!
バササッ!
まるで砂山を掘るかのように あさっている
そして… 服の山から一着引っ張り出した。
〘リールちゃん!
今度はこっち着てみなさーい♡〙
「えぇっ!?」
どうやら、まだまだ選ぶ気らしい。
バンさんの張り切りっぷりに 思わず頬が緩む。
(…嬉しいけど、派手なのはやめて~)
〘あ、そうだわ!
ねぇ、ガ・イ・ちゃーん♡〙
身体をくねくねさせながら
バンさんはふわりとガイルの方へ飛んでいった。
「……ふふ」
二人の様子を横目に
私は店内をゆっくり見て回る。
(……仕事着と普段着があれば十分よね)
そう思いながら
並べられた服の値札を一つずつ確認した。
(巣立っていく子達が少ないってことは……
お店の収入も多くないってことよね)
(想石があるっても
あれは、あの子達の心そのもの
それを、私のために
使わせるわけにはいかないわ)
若草色のワンピースを抱えたまま、小さく頷く。
「……よし」
そして振り返った。
「バンさん」
〘なぁに~?♡〙
「あと一着だけ
普段着にできる服を選んでもらえませんか?」
そう言うと、バンさんの目がきらりと輝いた。
〘ほぉら!ガイちゃん、出番よ!〙
ドンッ!
ドンッ!
バンが後ろからガイルを押す。
「お、おい!やめろ!」
「……お、俺は!」
必死に抵抗しようとするガイル。
だが… バンはにっこりと微笑んだまま
人差し指でガイルの顎をくいっと持ち上げた。
〘……選べって言ってんのよ〙
「…………」
ガイルが黙った。
首に手を当てながら
ガイルが困ったような顔で私を見る。
(……あ)
「バ、バンさん!
い、いいです! 自分で選びますから……!」
慌ててそう言いかけた時だった。
ガイルが服を一着手に取る。
そして… そっと私の肩に当てた。
「え?」
「……女もんは、よく分からねぇが」
そう言いながら
今度は別の服も持ち上げる。
一着目は、空を思わせる淡い水色のワンピース。
二着目は、裾に花の刺繍が入った
ベージュのワンピースだった。
「……嫌なら断れ」
ぶっきらぼうにそう言って
ガイルはそっぽを向く。
(………)
(どっちも可愛い)
(というか……結構どストライクで好きかも……)
〘ん~~ふふふふふ……♡〙
少し離れた場所から
バンさんが不気味な笑い声を漏らしていた。
その視線の先には、私とガイル。
〘それでいいのよ、それで♡〙
うんうんと満足そうに頷く。
〘いっくら言っても
リールちゃんは遠慮するし~〙
〘ガイちゃんはガイちゃんで
リールちゃんが好きそうなお洋服を
チラチラ見てるくせに言わないんだから♡〙
バンさんは大袈裟に肩を竦めた。
〘はぁ~……手のかかる子達ねん♡〙




