バンさん再登場
〘ちょっとぉ!そんな地味なのダメよぉ~!〙
バンが派手な色のワンピースを掲げる。
〘ほら!こっちのショッキングピンクの方が
可愛いじゃない!〙
「えぇ……」
私は思わず顔を引きつらせた。
「店員としては派手すぎませんか?」
〘派手だから、いーいのよ!〙
バンは胸を張る。
〘目立つじゃない!それに…〙
私の周りをくるくる飛び回りながら
手にしたメジャーのようなものを構えた。
ジャッ!!
ジャッ!!
〘リールちゃんの白い肌によく映えるわ~♡〙
「わっ!」
気付けば肩幅や腕の長さまで測られている。
「ちょ、ちょっとバンさん!?」
〘動かないの!正確に測れないでしょ!〙
「いつの間にそんな物を……」
〘んふふふ♫
服選びには欠かせない必須アイテムよぉ♡〙
得意げに鼻を鳴らすバン。
そして、くるりと振り返った。
〘ね!ガイちゃんも
何か言ってやんなさいよ!〙
「あ?」
ガイルは壁際に立ったまま腕を組む。
「俺は……別に」
そう言ってそっぽを向いた。
〘んもー!!〙
バンが呆れたように叫ぶ。
〘だからアンタはダメなのよ!〙
〘アタシがついてきて本当によかったわ~!〙
「何がだよ」
〘全部よ、全部!!
そ~んな仏頂面で
女の子のお洋服選びなんて
はー!!もう!!〙
バンがガイルの頬を指でぐいぐいとつつく。
「俺の強面は、産まれつきだ
ほっとけ…」
なおも塩対応のガイルに
バンさんがハンカチのようなものを
噛んで
〘キーーーー!可愛くないわーーー!〙
と怒っている
「そ…それにしても、びっくりしました」
私は空気を変えようと
バンさんに話しかける。
「バンさんって、あそこから離れられるんですね」
ーーー数十分前
ガイルと買い出しへ行こうとして
店を出た時だった。
〘んふふふふ……あーた達
……話は聞こえたわよぉ……〙
そう言いながら、
バンは戸口の脇からぬ…っと現れた。
「うわっ!?」
思わず声が出る。
「なんだ、お前付いてくんのか」
ガイルが露骨に嫌そうな顔をした。
けれどバンは気にも留めない。
〘リールちゃんのお洋服を買いに行くんでしょ?〙
〘アタシが選んであ・げ・る♡〙
「え!いいんですか!?」
私は、ぱっと顔を明るくした。
「私、あんまりセンスなくて……助かります!」
(……というか
会社と家の往復ばっかりだったし
最低限の服があれば十分だったのよね……)
〘そ~ぉ!?〙
〘アタシ、張り切っちゃうわよぉ~♡!!〙
バンはその場で飛び跳ねながら
喜びを全身で表現した。
「……古くせぇセンスじゃなきゃいいがな」
隣でガイルがぼそりと呟く。
冷めた目でバンを見ていた。
「ふふっ」
私は思わず笑った。
「私なんかのために
あんなに張り切ってくれてるのよ?
嬉しいわ」
ガイルは何も言わなかった。
けれど
一瞬だけ、 鋭い視線がこちらへ向けられる。
「……」
何か言いたそうだったけれど
結局口は開かなかった。
その時
〘さあ!!
何してるの、あーた達!!〙
〘さっさと! とっとと!
スキップして! 行くわよぉ!!〙
その結果…
気付けば私は
バンさんの熱烈なコーディネートを受けていた。
ガイルは開始五分で
帰りたそうな顔をしていたけれど
私なんかのために
こんなに張り切ってくれる人がいる。
それがなんだかくすぐったくて
でも………
少しだけ、嬉しかった。




