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第14話 次の依頼と、それぞれのやり方

翌日。


 ギルドに入った瞬間、空気が少しだけ変わったのが分かった。


 視線。


 昨日よりも、明らかに多い。


「……やっぱり見られてるな」


「はい」


 リリアも小さく頷く。


 でも、その表情は落ち着いている。


「気にする必要はありません」


「まあ、そうだな」


 そうは言っても、慣れるものでもないけど。


 受付へ向かう。


 昨日と同じ女性が対応してくれた。


「おはようございます」


「おはようございます。昨日の報告、確認しております」


 軽く頭を下げられる。


 その仕草が、ほんの少しだけ丁寧になっている気がした。


「本日は依頼を受けられますか?」


「はい」


 リリアが答える。


「では、こちらを」


 差し出されたのは、一枚の依頼書。


「……少し難易度が上がっています」


 そう言われて、目を通す。


「森のさらに奥での調査、及び討伐……」


 昨日より、明らかに範囲が広い。


「複数の強化個体が確認されています」


「……複数」


 思わず声が漏れる。


 昨日の一体だけでも、結構ギリギリだった。


(さすがに、ちょっときついか……?)


 横を見る。


 リリアは静かに依頼書を見ている。


 少しだけ考えてから――


「受けます」


 はっきりと言った。


「……大丈夫か?」


「はい」


 こちらを見る。


 まっすぐな目。


「無理はしません」


 昨日と同じ言葉。


 でも、少しだけ重みが違う。


「危険であれば、すぐに引きます」


「……だな」


 頷く。


 その判断ができるなら、大丈夫だ。


「じゃあ、受けよう」


「承知しました」


 受付が手続きを進める。


 そのとき。


「おい、それ受けんのか?」


 後ろから声。


 振り向くと、昨日の勇者たちだった。


 今度は、しっかりとしたパーティを組んでいる。


「森の奥だろ?あそこ、結構ヤバいぞ」


「そうらしいな」


 軽く答える。


「お前ら二人で行く気か?」


「そのつもり」


 正直に言う。


 すると、少し呆れたような顔をされた。


「いや、やめとけって。普通パーティ組むだろ」


 もっともな意見だと思う。


 実際、その方が安全だ。


 でも――


「……俺たちは、このやり方でいくよ」


 無理に強がるつもりはない。


 ただ、今の形が一番やりやすい。


 リリアも横で小さく頷いた。


「……ふーん」


 勇者は腕を組む。


「まあ、止めはしねえけどさ」


 少しだけ笑う。


「死ぬなよ?」


「そっちもな」


 軽く返す。


 変に張り合う気はない。


 でも、引くつもりもない。



 ギルドを出る。


 いつも通り、森へ向かう道。


「……さっきの、大丈夫だったか?」


「はい」


 リリアはすぐに答える。


「事実を言われただけですので」


「まあ、そうなんだけど」


 少し考える。


「無理に二人にこだわる必要はないと思う」


 正直な意見。


 もっと人数がいれば、安全性は上がる。


 でも。


「……ですが」


 リリアが少しだけ言葉を選ぶ。


「ユウトさんのやり方は、合理的だと思います」


「合理的?」


「はい」


 こちらを見る。


「無駄に戦わない。危険を避ける。確実に削る」


 静かな分析。


「それを崩す必要はないかと」


 その言葉に、少しだけ間が空く。


 それから――


「……そっか」


 小さく頷く。


 否定されると思っていたわけじゃない。


 でも。


(ちゃんと見てくれてるんだな)


 そう思えた。


「ありがと」


 自然に言葉が出る。


 リリアは少しだけ目を伏せて――


「いえ」


 小さく微笑んだ。


 ほんの少しだけ、距離が近い。



 森の入り口に着く。


 昨日より、少しだけ奥へ進む。


 空気が変わる。


 重い。


「……気をつけよう」


「はい」


 リリアも剣に手をかける。


 一歩ずつ進む。


 音を立てないように。


 慎重に。


(……こういうとき)


 頭の中で、選択肢を並べる。


 戦うか、避けるか。


 引くか、進むか。


(最悪、戻ればいい)


 ――ログアウト。


 それがある。


 だからこそ、無理をしないで済む。


 でも同時に。


(頼りすぎるのも危ないな)


 さっきの戦闘を思い出す。


 ギリギリだった。


 タイミングを間違えれば、間に合わなかった可能性もある。


(ちゃんと判断しないと)


 それが、このスキルの使い方だ。


 考えながら進む。


 そのとき――


 遠くで、音がした。


 金属がぶつかるような音。


「……戦闘音?」


 リリアが小さく呟く。


「誰かいるな」


 顔を見合わせる。


 少しだけ迷う。


 関わるか、避けるか。


 だが。


「……様子、見るか」


「はい」


 慎重に近づく。


 木の陰から覗く。


 そこにいたのは――


「……さっきの」


 ギルドにいた勇者たち。


 だが、その様子は――


「っ……押されてる」


 明らかに劣勢だった。


 相手は、強化個体が二体。


 連携が崩れている。


(……どうする)


 助けるか。


 見捨てるか。


 簡単な話じゃない。


 横を見る。


 リリアも、迷っている。


 でも。


「ユウトさん」


「……ああ」


 短く頷く。


 答えは、同じだった。


 深く息を吸う。


 吐く。


(無理はしない)


 それでも。


(できることは、やる)


 バットを握る手に力を込める。


「……いくか」


「はい」


 静かに頷くリリア。


 次の瞬間。


 俺たちは、同時に踏み出した。


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