5 物質 (2) -- 物質群の動きの組織化
5 物質 (2) -- 物質群の動きの組織化
エナァジに具わる内的な傾向 -- 創発の源 (意外に重要)
生物や結晶の形成などでの物質群の動きの組織化 (重要)
物質群の動きの組織化の要件
構成要素の物質群の動きが組織化されていることが、生体(生物)の自発的・主体的・能動的な動きの究極の鍵ーー生物を無生物から分ける鍵ーーと思われます。
さらに、構成要素の物質群の動きが組織化されていて、自己組織化を果たせることーーより高い物理的秩序を形成できること・オートポイエシスのシステムであることーーが、生体(生物)の一番の本質と思われます。
《 エナァジに具わる内的な傾向 -- 創発の源 (意外に重要) 》
物理的秩序は、一般に、エントゥロピは増大するという熱力学第二法則により、自然に崩壊し、物事はランダムな混沌に向かいます。この動きは、基本的に、物質外部の巨視的なレヴェルでのエナァジの働きによる、と思われます。
さりとも、他方で、エナァジには、物質内部にて、可能なら、自分自身を素材として使い、より高度な物理的秩序を形成しようとする傾向が具わりているように、見えます。
生物の活動をふくめ、この宇宙での全ての生産的な事象は、根本的に、エナァジのこの傾向に由来する、と思われます。意識の形成や思考の働き――これらは高度で動的な物理的秩序です――も、この傾向による、と思われます。
さもなくば、見事な結晶の塊や生物をふくめ、物質がより大きく複雑な物質に進化することはとてもできないと、思われます。
ところで、(この見方は、物理学ではまだ認識されてはいず、ある意味、異端と思われますが)、たとえば、物質は、ほかの物質と接触しなく、単独で存在するあいだ、無数の構成要素からなる波動の存在様相にある、と思われます。このため、物理量(= 空間位置)が確定していず、物質の存在は、ある意味、曖昧です。この状態は、ひくい秩序の不定元の海の状態と見なせます。
しかし、物質がほかの物質と接触すると、その相互作用の発生を契機として、物質(の無数の構成要素群)は、空間の局所的な1点に集中する、粒子のような存在様相に移行して、その物質の物理量は一つに確定し、物質の存在は明確になります。この状態は、より高い秩序の状態と見なせます。
(ちなみに、物理的な相互作用は、たがいに相手の存在を問う問いと見なすことも、可能です。なぜなら、相互作用の発生は、物質内部での観念的な働きを活性化するからです。単独では曖昧な物質の存在も、問われることで、そして、観念的な働きを根拠として、確定するのです。逆に言えば、相互作用によりて問われないかぎり、物質は、その存在を確定させる必要はないのであろう、と思われます)。
つまり、物質には、原則、二つの存在様相があり、一つの物質においてさえ、その秩序の度合いは互いに切り替わるです。
そして、その切り替えは、物質の正体であるエナァジ(により体現される内的な作用)によりて直接に果たされる、と思われます。
つまり、エナァジには、(なんらかの物理的な相互作用をとおし問われることで)、可能なら、自分自身をより高い秩序の状態に移行させようとする傾向が具わりているのです。これは、エナァジにそなわる本質的な傾向と思われます。
つまり、エナァジには、(物質外部の巨視的なレヴェルでの物理的秩序の崩壊を齎しがちな外的な働きとは裏腹に)、内的には、可能なら、自分自身をより高い秩序の状態に昇格させようとする――進化させようとする――創発の傾向が本来的に具わりているのです。
そして、この創発の傾向が、この宇宙での様ざまな物質の発生――核融合や化学反応をとおしての様ざまな物質の形成や進化――の根本的な原動力と思われます。
そして、物質の、生物への進化も、この進化に該当します。生物の発生と進化、そして、意識の発生も、物質の進化です。
《 生物や結晶の形成などでの物質群の動きの組織化 (重要) 》
私たち人間にとり、生物が主体的に動くことは、当たりのことであります。私たちは、そのことになんの不思議も感じません。
しかし、生物の、対外的・自発的・能動的な動きは、物理法則に違反しているよう、思われます。
まず、生物の、対外的な動きは、ほとんど、すべて、筋肉運動により実現されています。そして、筋肉運動は、それを構成する無数の細胞群の、収縮や伸張の動きにより形成されます。さらに、細胞の収縮や伸張は、その細胞内の物質群の、細胞内での対外的な動きによりて齎されます。
以下の事象などが、物質の対外的な動きに該当します。
a) 自転
b) 空間移動
c) 化学反応
つまり、生物の対外的な動きは、究極的には、細胞内の無数の物質群の、細胞内での対外的な動きによりて齎されるです。
さらに、これを厳密に説明することはとても難しいですが、細胞内の物質群の動きは、統合的かつ協調的、と評価されます。このことは、また、細胞内の物質群の動きは組織化されて、制御されている、とも表現できます。
さもなくば、それらの動きは出鱈目になり、細胞が自発的・統合的・能動的・目的的に動くことはできないことになります。そもそも、その細胞は細胞たりえないです。(それ以前に、生物は決して発生できなかりしはずです)。
たとえば、小さな池に単細胞生物のゾウリムシがいて、見掛けじょうランダムに動いている、とします。その目的は、私たち人間には必ずしも察知できませんが、しかし、単細胞生物に脳は具わりてはおりません。しかし、ゾウリムシを構成する無数の物質群は、ゾウリムシがそういうふうに動けるようにするために、かならず、統合的かつ協調的に動いているのです。脳がなくても、生物の動きは組織化されて、制御されているのです。
分子生物学などの観点から見て、細胞内の物質群の動きはあまりに高度で複雑です。このため、私たちは、無意識には感じているにせよ、そういうことになかなか気づけません。しかしこれは必然です。
このゆえ、細胞内の物質群の動きは、かならず、組織化されていて、統合的かつ協調的でなくてはならないのです。
そして、このことが、細胞――生体・生命――のいちばん重要な特徴です。つまり、構成要素の無数の物質群の動きが組織化されていて、それらの動きに統合性と協調性の具わりていることが、生命の本質であり要点です。
そして、これは、また、オートポイエシスの要点でもあります。生体(生物)はオートポイエシスのシステムです。各種の物質の結晶の形成プロセスもオートポイエシスのシステムです。
しかし、物質は、(内的には、一人称の主体でありて、みずから自発的・能動的に動作しているにしても)、外的には三人称の客体です。そして、三人称の客体である物質は、なんらかの物理的な相互作用に受動的に巻きこまれないかぎり、みずから対外的に動くことは決してできません。
そして、微生物・細胞・組織・器官などの生体は無数の物質群で形成されますが、そういう1個の物質群の集合体におき、その物質群が(静的な意味で)いかに高度に組織化されていようとも、対外的には三人称の客体でしかないそれら無数の物質群の動きが自然に組織化されて、それらに統合性と協調性の具わることは、ありえないです。
ちなみに、白血球や赤血球は遊離細胞とのことですが、これらの動きも組織化されて制御されている、と思われます。白血球には染色体――ジーノウム・DNAの集合体――が含まれているとのことですが、赤血球に染色体は含まれないそうです。(赤血球の染色体は、赤血球の製造が完了せしのちは、赤血球の体積を減らすため、除去されてしまうそうです)。それでも赤血球は統合的に活動するのです。これは、染色体にさえ、細胞全体の動きを組織化し制御する働きは具わりてはいない、ということを意味します。(では、なにが白血球や赤血球の動きの統合性を齎しているのでしょうか? 不思議としか言いようがありません)。DNAの第一の用途は、蛋白質を製造するための情報を保持することとのことですが、DNAも細胞を構成する物質群の一つであるという点で、DNAと他の構成要素の物質群とのあいだに、違いは丸きりないのです。DNAさえ三人称の客体なのです。
さらに、重力・電磁気力・原子や分子を結合させる力などの物理的な力に、無数の物質群の動きを組織化する能力ないし機能はまるきり具わりてはおりません。たとえ、無数の物質群が集合し、1個の集合体を形成しつとして、その全体の動きが自然に組織化されることは、普通、ありえないのです。
さらに、無数の物質群の動きが組織化されて、それらの動きに統合性と協調性の具わることは、高い動的な物理的秩序が形成されるということも、意味します。
しかし、エントゥロピは増大するという熱力学第二法則により、高い物理的秩序は自然には決して形成されません。
つまり、生物の対外的な動きは、根本的には、細胞内の無数の物質群の(細胞内での)対外的な動きの総体として齎されるですが、それらの動きが自然に組織化されて、それらに統合性と協調性の具わることは、不可能なのです。
このゆえ、生物の、対外的・自発的・統合的・能動的・目的的な動きが自然に実現されることは、ありえないです。
しかし、生物の主体的な活動は実際に実現されています。ゆえに、それは、物理法則に違反する他はないのです。
そして、同様のことは、各種の物質の結晶の塊についても該当します。
各種の物質の結晶の塊には、その形態的な形に統合性と協調性が具わりています。このことは、雪の結晶で特に顕著です。このゆえ、それは、静的ではあるにせよ、高い物理的秩序です。
そして、このことは、それらの形成プロセスにおき、無数の構成要素の物質群の動きが組織化されて、それらの動きに統合性と協調性の具わりていしことを、意味します。
このため、各種の物質の結晶の塊の形成も、物理法則に違反します。
しかし、生物の主体的な活動や、結晶の塊の形成は、現実に実現されています。すると、それは、それらの動きが物理法則に違反しているのではなく、むしろ、無数の物質群の動きが組織化されて、それらに統合性と協調性の具わるメカニズムないし枠組が、まだ知られておらず解明されてはいない、ということを意味すると、思われます。
つまり、ここはまだ空白地帯です。つまり、そのメカニズムないし枠組の解明は、物理学や自然科学にとりては未踏の領域です。
しかし、事象の性質から見て、その解明は、結晶学・生物学・分子生物学・生物物理学などの個別的な学問分野の担当ではないよう思われます。それは、まさに、自然科学の基礎をなす物理学の担当になるよう思われます。物理学での新しい研究分野です。物理学により取りくまれることが強く望まれます。
ちなみに、結晶の塊の形成プロセスは、かなり静的なオートポイエシスのシステムなので、取りつきやすいかも知れません。
《 物質群の動きの組織化の要件 》
生物や結晶の形成などでの物質群の動きは組織化されています。それらには、統合性と協調性が具わりています。
そして、その組織化の要件は、論理的に推測することができます。以下のことがその要件と推測されます。
i) 物質群の全体の物理的な状態についての情報収集をはたす働き。これは状態を測定する働きです。この測定には、ほかの物質とのあいだで生じる、エナァジや力などの外的な影響についての測定も含まれます。この働きが必要なのは、全体の現在の状態についての情報のないかぎり、全体をつぎの瞬間にはどのような状態にすべきなのか、決して判断(設計)できないからです。そして、測定とは、測定対象の値(= 観念)を読むことなので、観念的な働きです。
ii) 物質群の全体の、つぎの瞬間での物理的な状態を設計する働き。これは、物質群の状態についての情報収集により得られし情報――観念――にもとづき、全体の、つぎの瞬間での状態を演算(設計)します。この設計は、物質群の物理的(物質的)な動きの、観念的な根拠になります。この働きも観念的な働きです。
iii) 物質群の全体の、つぎの瞬間での物理的な状態を実際に実現する働き。これは、物質群の全体の、つぎの瞬間での状態についての設計にもとづき、その状態を実現する働きです。そして、状態を実現するゆえに、(全体の内部において)、物質群を外的に動かす――自転・空間移動・化学反応――必要があります。(ただし、外部から操作して動かす必要は必ずしもないと思われます。例えば、それぞれの物質が設計にしたがい自ら動くなら、それで実現される、と思われます)。この働きは、物質群の動きを齎すゆえに、物理的(物質的)な働きです。
ただし、iii)の働きは、ii)の設計――観念――にもとづき物質群の動きを齎すゆえに、物理的にきわめて深刻な問題をはらんでいると予想されます。それでも、iii)の働きを想定しないかぎり、生物や結晶の形成などでの物質群の動きは決して組織化されえない、と思われます。そのゆえiii)の働きは論理的な必然です。




