第26話 人間と最後の寵姫
妖魔の王が統べる国。
夜の国。
その国の中央にそびえ立つ【荊の城】は静かにざわめき立っていた。
かつて妖魔の王にかけられた死の呪い。
その呪いによって妖魔の王は深い眠りについた。
そして呪いの進行を防ぐため、王の寵愛を受けていた6人の魔に染まる姫達もまた、深い眠りについていたのだ。
しかし、妖魔の騎士により召喚された一人の人間の活躍により、その呪いのチカラは削がれていった。
そして今、眠りについていた最後の寵姫達が目を覚ます。
「慈姫テオリス様、深い眠りからのお目覚め、謹んでお喜び申し上げます」
真っ白な髪の毛を揺らしながら、第三寵姫である石姫ディアがとても綺麗なお辞儀をしてみせる。
それに続きその後ろに控えていた、他の寵姫や臣下たちもそれぞれに礼を尽くしてみせた。
「……ディア?それにみんなも」
第二寵姫・慈姫テオリスは黒い霧が包む棺からゆっくりと身体を起こし辺りを見回す。
テオリスの身体は包帯に巻かれている。
全身に広がる火傷を隠すように。
だがその肢体は艶めかしく、包帯の有無など関係なく見るものを魅了する。
薄いベールに淡く隠された包帯の巻かれた顔。
時折ベールから覗く青い瞳。
傷んだ果実のように膨らんだ唇は、まるで宝石のように輝いていた。
テオリスの腕や首、全身の至る所には装飾品がつけられている。
それらは彼女が得意とする魔術を行うためのものだ。
装飾品たちはシャラシャラと彼女の動きに併せて鳴ってみせる。
それはまるで彼女を彩る音楽のように。
「カルミラ様は………そう、まだ眠っておられるのね。ミリアムちゃんは?」
テオリスは寂しそうに、主である妖王カルミラについて尋ねた。
答えに気が付いていたとしても。
だが姉姫である扉姫ミリアムがいないことに気がつき、口元に笑みが溢れた。
それは他の寵姫たちも同じである。
彼女たちは扉姫がなぜいないのかを知っているのである。
扉姫はいつも待っている。
用意した扉を開ける者を。
扉姫が眠っていた棺。
その扉はひっそりと開いている。
今日は、この後にもう1話掲載します。




