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呪いの姫君が振り向かない ―この月が綺麗だって君に伝えたかったんだ―  作者: 蛙酒夏海
第一章 夜の国編

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間話 第三寵姫 石姫ディア

 星守の民(エルフ)は見目麗しいものが多かった。

 その中でもひときわ輝くものがいた。


 そのものは、王の末の娘であった。

 王家に伝わる宝石の名をつけられた娘は、成長とともにその美しさを増していった。


 そしてその娘も恋をする。

 娘の美しさをもって叶わぬ恋などなかった。

 二人はすぐに結ばれた。

 

 しかし娘が恋をした男は、王妃である母が密かに思いを寄せていた男だった。


 叶わぬ恋に、叶えてはいけない恋に、王妃が狂うのは早かった。


 王妃は実の娘を呪った。

 恋い焦がれるその美しい瞳で、男を見つめることができないようにと。


 娘の目が恋した男を見ることは二度と無かった。

 娘が見つめた男は、その眼差しで石になってしまったのだから。



 悲しかった。

 恨めしかった。

 心から溢れるすべての感情が痛かった。


 だから心なんて、この体から取り出してしまいたかった。

 


 深い深い世界樹の枝の影で、娘は胸を掻き毟り、自分の心を剔り出そうとした。

 血が流れ、爪が剥がれ、音は粘度を増していく。

 自分の腕が背中の皮を破ったとき、そこに心はないことを知った。

 もう呪われた目を、開けるチカラも残っていなかった。


 次に目が開いたとき、その眼差しをまっすぐ見つめる金色の瞳がそこにはあった。


 金色の瞳に映る、自分の瞳を見たとき、心のありかを知った気がした。


とてもとても、悩んだお話でした。


次回は"決意"の回となります。

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