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呪いの姫君が振り向かない ―この月が綺麗だって君に伝えたかったんだ―  作者: 蛙酒夏海
第一章 夜の国編

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第22話 人間と御伽話の少女

妖魔の国。深い樹海の奥にある、月明かりでオーロラのように輝く花畑。

そこに現れたのは一人の人間。



「ミリー?いる-?」


 珍しく一人で森へ来ていた。

 ジョセフ老人も月の妖精ルナもいない。

 一人で魔獣の闊歩する暗い森を歩けるようになるなんて、ここへ来た頃は想像もできなかった。

 もちろん警戒はしているが、ある程度の事態には対応できるようになった。

 成長したものだ。


 今日は、魔獣を退治するワケでも、魔法の練習をしにきたのでもない。以前にここで出会った少女を探しに来ていた。


 この花畑で出会った、ミリと名乗った少女。

 妖魔の姫、第一位。扉姫ミリアム。


「お兄ちゃん!ミリと遊びにきたの!?」


 突然、後ろから腰の辺りに抱きつく小さな手。

 魔獣に襲われないように気を張っていたにも関わらず、抱きつかれるまで全く気がつかなかった。


「ミリ!そう、遊びに来たんだよ。そうだここに咲いている花で冠を作りながらお話をしよう?」

「ほんとうに?やったー!」


 こうやって見ると、妖魔のお姫様だなんて信じられない。

 ただの小さな子供だ。

 花のように笑顔を咲かせ、楽しそうな笑い声を響かせている。


「知らなかったよ。ミリはお姫様なんだってね」

「そうだよ!ミリはお姫様でお姉ちゃんなの!」


 楽しそうにするミリと花を摘み、花冠の編み方を教える。

 月明かりの中、美少女と花冠を作る。

 なんて幸せな時間だ。


 でも今回の目的は、残念ながらただミリと遊ぶことじゃない。

 

「ミリ、前に会ったときに、仲直りをさせてあげたいって話をしていたの覚えてる?」

「覚えてるよ!ミリはね、サクヤちゃんのお姉さんだから頑張るの!」


 ミリは「ふふー」と口角を上げてドヤ顔を決めてみせる。


「でもね、ミリ…頑張ってるんだけど、上手くいかなくて」


 ミリは花冠を編む手を止めて、しょぼくれて見せる。

 

 もう長い間ずっと呪いが解けていない。

 その間、彼女なりに色々頑張り続けてきたのだろう。


「それ、オレにも手伝わせて欲しいんだけど…いいかな?作戦があるんだ」

「本当に?ミリも“さくせん”できる?」

「もちろん!ミリがいなきゃできないんだ。まずはね………」


 目を輝かせ始めたミリに“作戦”を伝える。

 もう上手くいくか分からない、それじゃ駄目なんだ。


 放っておけない、そう思えるくらいには踏み込んだ。


 この世界に来るまでは、なにをするにもぼんやりしていた。

 自分なんてただの一般人だと思っていたし、実際そうだったんだ。

 でも、ここにきて、ここでできることがある。

 できたこともある。


 あとは覚悟を決めるだけだ。



 できた花冠を頭に乗せてあげると、ミリの顔に満面の笑顔が咲いた。


一体、2人はどんな作戦を企てたのでしょう。


今日はこの後に、もう1話掲載します。

19時までには……

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