間話 第七寵姫 月姫サクヤ
恋をしているのだろう?
お前はその男を愛しているのだ。
助けたいのだろう?
愛した男は死の呪いに掛かっている。
たった一つ。
呪いをかけてくれたら、お前の想い人を助けてやろう。
妖魔の王を呪っておくれ。
荊の呪いをかけておくれ。
他の妖魔が近づけぬようにしておくれ。
よいな。決して秘密を話してはいけないよ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
月の妖精は夢を見ていた。淡く光る月の光の中で。
遠い過去に犯した、過ちの夢。
「ルナ-!ルナー!?」
誰かが遠くから、月の妖精を呼ぶ声が聞こえてくる。
それはこの世界に召喚された人間の声であった。
声に気がつき、月の妖精が慌てて自分の姿を整えると、木陰から人間が姿を現した。
「ルナ…?」
人間が月の妖精を見つけ、二人の目が合う。しかし妖精は自分が隠していること、自分が人間にさせていることの重さから、その場を逃げだそうと背中を向けた。その瞬間に人間が話しを始める。
「ごめん!オレ…なにも知らないのに勝手なこと言っちゃって、でも頑張ってみたんだ。呪いの依り代も一つ壊せたんだ。寵姫さまも二人目覚めて。それで…えっと…だから…」
たどたどしく、けれど必死に謝る人間の様子を見て、申し訳なさがこみ上げてくる。
アナタがなにも知らないのは、なにも教えてないから。
アナタが一生懸命になってくれることを“知っていて”それに甘えているのは私。
「私こそ…… ごめんなさい」
月の妖精は着物の裾を握りしめ、うつむき加減に謝った。
この謝罪の言葉には様々な、意味が込められている。
この二人の物語が進むのはまだまだ先の話。




