【6.5話】ドラゴンステーキ
客の来ない午後。当たり前に退屈が支配する魔法道具店。
ラウンレイフィ……レイは少なくなった棚を見ながら、次に置く品を考えていた。
:次は何作るんだろ
:武器は世界の均衡が崩れるらしいから
:じゃあ置物?
:動物モチーフとかどうですか
:ドラゴンの置物とか
「ドラゴンですか……」
レイは少し考えた。
:ドラゴンって、実在しますか?
:異世界なら居てほしい
:美味しいのかな
「いますよ、ドラゴン」
:いるんだ
:やっぱりいるのか
:ファンタジーの王道
:東洋風?西洋風?
:強いのか?
:ステーキにして食べたら美味しい?
「食べるという発想は……そうですね……。まず、ドラゴンの肉は、おすすめしません」
:食べたことある言い方
:あるの?
:まずいの?
「美味しくありません。血生臭い上に、個体によって呪いを持ってる場合もあります」
レイはさらりと言った。
:火を通せば駄目かな?
:フグみたいに可食部に分けたり下処理しても無理?
:怖い
:でも、言い方的に、少しなら食べられる?
「皆様がそこまで、ドラゴン肉に憧れる意味が分かりませんが……」
:創作だと、ドラゴンステーキは定番なの!
:毒が無い個体なら、ワンチャンないかな?
「まずドラゴンは、基本的に火耐性があります。火に耐性を持つ魔物の肉は、死んだ後でもその性質が残るので、普通の火では焼けません」
:刺身ならワンチャン!
:ドラ刺し
:生姜醤油で食べたい
:肉が火耐性持ってるのか
:焼けないステーキ
:調理難易度が高すぎる
:素材としてはすごそう
:食材じゃなくて魔法素材か
「一応、ドラゴンの血肉は強い回復効果があり、薬やポーションの材料にもなります。その上で腐敗もしないので、極まれに流通されたりしますね」
レイは棚の上の小瓶を手に取り、光に透かした。透明な保存液の中に、赤黒い何かの肉片が沈んでいる。
:保存性はいいんだ
:謎肉サンプル。まさかドラゴン?
:薬草とか魔物素材の瓶かな
:食材じゃなくて標本っぽい
:腐らない肉、異世界すごいな
レイは何事もなかったように小瓶を棚へ戻した。
「薬で使う際は、ほんの少し溶かして使います。量によっては、幻覚や幻痛を引き起こして、最悪は死に至る場合もありますね」
:ひえ
:怖い
:ドラゴン肉、毒物扱いじゃん
:食べ物じゃなくて劇薬
:そもそも狩れるの?
「とても強いですよ。物理も魔法も最強格です」
レイは当然のように言った。
「過去に若い個体が乱獲された時期があります。今は個体数が減り、静かに暮らしていると聞きますね。人間や魔物、木や岩に姿を変えて、隠れている個体もいます」
:変身できるの?
:人間に化けてるドラゴンいるのか
:そのへん歩いてる可能性ある?
:もしかして店に来る?
「来店される可能性はありますね」
:あるんだ
:ドラゴン客フラグ
:絶対強い
:でもステーキにはできない
「皆様、食べる事への執念がすごいですね……」
:それはそう
:日本人は何でも食うよ
:失敗すると即死する魚とかも調理して食べる
:不味くても、どんな味かは気になる
:ドラゴンさん逃げて




