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飯が美味すぎて、気づけば世界を支配していた。 ~無限魔力の料理人、物流と教育で最強国家を作る~  作者: 慈架太子


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90/104

90:都市国家

 成立。


 朝。


 鐘が鳴った。


 都市中央。


 巨大な石造りの広場。


 そこに、人が集まっていた。


 農民。


 職人。


 冒険者。


 商人。


 兵士。


 薬師。


 教師。


 獣人。


 エルフ。


 ドワーフ。


 種族も身分も違う。


 でも。


 全員が同じ方向を見ていた。


 壇上。


 クルザードが立っている。


 二十二歳。


 若い。


 若すぎる。


 だが。


 この街を作った男だった。


 彼の後ろには。


 ティグリス。


 マチルダ。


 ヴァレリア。


 ガルド。


 ジェシカ。


 仲間達が並んでいる。


 誰も豪華な服を着ていない。


 実務者の顔だった。


 広場には香りが漂っていた。


 朝食。


 炊きたての麦飯。


 骨肉と野菜の味噌汁。


 焼きたてのパン。


 燻製肉。


 湯気。


 香り。


 腹が減る。


 つまり。


 生きている匂いだった。


 子供達が走っている。


 笑っている。


 泣いていない。


 痩せていない。


 これだけで。


 昔との違いが分かる。


 クルザードが前を見る。


 静かだった。


 数万人。


 全員。


 言葉を待っている。


「今日から」


 声は大きくない。


 でも通る。


「ここは都市国家として独立する」


 ざわめき。


 しかし。


 驚きは少なかった。


 皆。


 もう分かっていた。


 国だった。


 既に。


 税がある。


 法律がある。


 軍がある。


 教育がある。


 物流がある。


 医療がある。


 つまり。


 成立条件を満たしている。


 クルザードは続ける。


「王国にも帝国にも属さない」


「誰かに食わせてもらう国でもない」


「自分達で作り、自分達で守る」


 言葉は短い。


 でも。


 現実だった。


 食料自給。


 水路。


 港。


 工房。


 保存食。


 物流。


 全部ある。


 もう止められない。


 ティグリスが周囲を見る。


 泣いている獣人がいた。


 元奴隷。


 元逃亡者。


 元難民。


 つまり。


 居場所を持たなかった人間達。


 その彼らが。


 初めて。


 ここを故郷と思っていた。


 広場の端。


 老人が呟く。


「……国になっちまったか」


 隣の商人が笑う。


「とっくにな」


 それが本音だった。


 都市は止まらない。


 夜でも明るい。


 下水が流れる。


 病気が少ない。


 仕事がある。


 つまり。


 普通の国が負けている。


 クルザードが手を上げる。


 地図が広げられた。


「北区拡張」


「第二港湾建設」


「学校増設」


「医療院増築」


「農地第三水路開通」


 歓声。


 理由。


 全部生活が良くなるから。


 抽象論ではない。


 現実。


 だから強い。


 マチルダが前へ出る。


「税率は維持」


「食料価格安定化継続」


「教育無償範囲拡大」


 またざわめく。


 普通。


 独立は増税。


 徴兵。


 苦痛。


 ここは違う。


 効率化で回す。


 物流で回す。


 技術で回す。


 だから。


 人が増えるほど強くなる。


 ヴァレリアが笑う。


「商会連合から正式加盟申請が来てるわ」


「もう止まらないわね」


 当然だった。


 この国。


 儲かる。


 安全。


 壊れない。


 つまり。


 商人にとって理想。


 ガルドが腕を組む。


「鉄足りねぇぞ」


「工房が増えすぎだ」


 クルザードが答える。


「海運増やす」


「鉱山も拡張」


 会話が早い。


 決断が早い。


 止まらない。


 それが強さだった。


 昼。


 街。


 視察団が歩いていた。


 他国の貴族。


 騎士。


 商人。


 全員。


 顔が固い。


 理解できない。


「何故こんなに清潔なんだ」


「臭わない……」


「子供が働いていない?」


「夜に女が歩いている?」


 全部異常だった。


 王都より上。


 それが問題。


 下水。


 スライム浄化。


 街灯。


 警備。


 医療。


 全部機能している。


 つまり。


 統治が強い。


 兵士より。


 住民が優秀。


 これが恐ろしい。


 市場。


 湯気が上がる。


 味噌煮込み。


 肉串。


 魚介鍋。


 焼きたてパン。


 香辛料の匂い。


 人が並ぶ。


 笑う。


 食う。


 幸せそう。


 視察貴族の一人が呟く。


「……戦時中だぞ」


 その通り。


 周辺国家は崩れ始めている。


 飢餓。


 暴動。


 流民。


 なのに。


 ここだけ違う。


 理由。


 食。


 物流。


 保存。


 つまり。


 準備。


 クルザードは最初から積み上げていた。


 だから強い。


 医療院。


 デニーゼが動いている。


 子供を治療。


 老人を診察。


 回復魔法。


 薬。


 衛生。


 全部同時。


 死亡率低下。


 寿命改善。


 人口増加。


 つまり。


 国力。


 ジェシカが薬棚を見る。


「薬草不足しそう」


 即座。


 隣の文官が書き込む。


「栽培区域拡張します」


 速い。


 止まらない。


 誰か一人の天才ではない。


 仕組み。


 だから壊れにくい。


 夕方。


 学校。


 獣人の子。


 エルフの子。


 人間。


 一緒に学んでいる。


 文字。


 計算。


 物流。


 農業。


 魔法理論。


 教師が足りない。


 だから。


 他国から流れてくる。


 頭脳流出。


 まだ止まらない。


 夜。


 港。


 海上輸送船が並ぶ。


 冷蔵庫付き。


 保存庫付き。


 物流ゴーレムが荷を運ぶ。


 魚。


 肉。


 小麦。


 味噌。


 酒。


 全部動く。


 止まらない。


 つまり。


 都市国家の血液だった。


 マルセルが海を見る。


「昔なら信じなかったな」


 ステファンが笑う。


「俺もだ」


「国ってもっと偉そうなもんだと思ってた」


 違う。


 本当に強い国は。


 生活が強い。


 そこへ。


 一人の老人が来た。


 元王国将軍。


 亡命。


 疲れた顔。


「……兵を連れてきた」


「食わせてくれ」


 クルザードは即答した。


「働くなら歓迎する」


 それだけ。


 老人は目を閉じる。


 王国では。


 兵士は消耗品。


 ここでは。


 労働力。


 家族。


 住民。


 だから。


 流れる。


 夜更け。


 中央塔。


 クルザードは街を見下ろしていた。


 灯りが続く。


 工房。


 市場。


 酒場。


 劇場。


 学校。


 全部生きている。


 ティグリスが隣へ来る。


「本当に国になったな」


「ああ」


「怖くないのか?」


 クルザードは少し考えた。


「怖い」


「だから止めない」


 ティグリスは笑う。


「変な男だ」


「よく言われる」


 風が吹く。


 遠く。


 鐘が鳴る。


 都市は眠らない。


 理由。


 人が未来を信じ始めたから。


 他国はまだ気付いていない。


 本当に恐ろしい国家とは。


 巨大な軍でも。


 伝説の勇者でもない。


 人が。


 ここで生きたいと思う国だった。







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