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飯が美味すぎて、気づけば世界を支配していた。 ~無限魔力の料理人、物流と教育で最強国家を作る~  作者: 慈架太子


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76:深層ダンジョン

 強敵出現。


 クルザード都市。


 中央管理塔。


 夜明け前。


 空気が重かった。


 魔導通信盤が赤く点滅している。


 いつもと違う。


 静か過ぎる。


 ヴァレリアが険しい顔で帳簿を閉じた。


「第三探索隊、連絡途絶」


 部屋の空気が止まる。


 ティグリスが腕を組む。


「場所は?」


「深層第七十三階層」


 その数字。


 全員の表情が変わった。


 深い。


 あまりにも深い。


 通常の冒険者では辿り着けない領域。


 最近。


 クルザード都市の発展に合わせ。


 ダンジョン攻略速度も上がっていた。


 食料。


 装備。


 回復。


 全部揃う。


 だから。


 探索が進む。


 結果。


 深層に到達し始めていた。


 でも。


 深層は別物。


 世界が違う。


 そこを知る者は少ない。


 クルザードは通信盤を見つめる。


 わずかに残る魔力波。


 乱れている。


「生きてるな」


 即答だった。


 カタリナが驚く。


「分かるの?」


「恐怖で呼吸が乱れてる」


 鑑定。


 もう。


 昔とは違う。


 情報の洪水だった力は。


 今。


 意味を持ち始めていた。


 クルザードは剣を取る。


「行くぞ」


 全員が立ち上がった。


 深層ダンジョン。


 第七十三階層。


 そこは地獄だった。


 空気が違う。


 湿っている。


 熱い。


 なのに寒気がする。


 巨大空洞。


 赤黒い結晶。


 壁が脈動していた。


 生き物みたいに。


 ティグリスが低く唸る。


「……嫌な臭いだ」


 獣人の本能。


 危険信号。


 ベッティーナが盾を構える。


「前方反応」


 その瞬間。


 地面が割れた。


 黒い腕。


 巨大。


 異常。


 魔物。


 いや。


 災害。


 高さ十メートル以上。


 黒い外殻。


 赤い目。


 蒸気のような息。


 地面が焼ける。


 ドロテアが青ざめた。


「なに……あれ……」


 クルザードの鑑定が走る。


【深層魔獣グラドール】


【高密度魔力生命体】


【再生能力:極大】


【通常兵器無効化】


【熱蒸気噴射】


【捕食型】


 まずい。


 普通に強い。


 クルザードの目が細くなる。


「下がるな」


 直後。


 魔獣が吠えた。


 空気が震える。


 熱波。


 蒸気爆発。


 床が吹き飛ぶ。


 ベッティーナが前へ出た。


「守る!」


 巨大盾。


 光魔法。


 衝撃。


 壁が砕ける。


 でも。


 止めた。


 その隙。


 マルセルが飛ぶ。


「斬る!」


 斬撃飛翔。


 白い軌跡。


 外殻へ直撃。


 火花。


 浅い。


「硬ぇ!」


 魔獣が腕を振る。


 重い。


 速い。


 マルセルが吹き飛ぶ。


 その瞬間。


 ステファンが割り込んだ。


「うおおお!」


 拳。


 衝撃。


 軌道を逸らす。


 地面が砕ける。


 深層。


 レベルが違う。


 ドロテアが詠唱。


「ファイアバレット!」


 火弾。


 連射。


 着弾。


 爆発。


 でも。


 効きが薄い。


 クルザードは見ていた。


 蒸気。


 熱。


 循環。


 あの魔物。


 内部で超高熱を回している。


 つまり。


 熱耐性が異常。


 なら。


 逆。


「ティグリス!」


「分かってる!」


 突撃。


 速い。


 虎獣人。


 筋力。


 脚力。


 全部規格外。


 爪が走る。


 でも。


 狙いは攻撃じゃない。


 関節。


 そこ。


 僅かな隙間。


 クルザードが魔力を流す。


「ウォーターバインド」


 水。


 侵入。


 内部へ。


 魔獣が暴れた。


 熱と水。


 急激な温度変化。


 蒸気暴発。


 内部圧力が乱れる。


「今だ!」


 アランが前へ出る。


 金属魔法。


 魔獣外殻へ侵食。


 金属生成。


 拘束。


 さらに。


 クルザード。


 蒸気を読む。


 流れ。


 圧力。


 循環。


 全部見える。


 鑑定。


 意味を持ち始めていた。


「……そこか」


 核。


 胸部。


 高密度魔力炉。


 クルザードは剣を握る。


 魔力循環。


 加速。


 身体強化。


 筋肉強化。


 風。


 水。


 全部重ねる。


 地面が砕けた。


 速い。


 一瞬。


 深層魔獣の懐へ。


「スチームバレット」


 蒸気圧縮。


 近距離炸裂。


 内部へ叩き込む。


 爆発。


 魔獣が絶叫した。


 胸部装甲。


 割れる。


 赤い核。


 見えた。


「マルセル!」


「おお!」


 飛翔斬撃。


 一直線。


 核へ。


 直撃。


 破砕。


 轟音。


 巨大魔獣が崩れ落ちた。


 沈黙。


 全員息を切らす。


 強い。


 本当に強かった。


 今までと違う。


 深層。


 完全に別世界。


 ティグリスが座り込む。


「笑えねぇなこれ」


 ベッティーナも汗を流す。


「都市防衛級だぞ……」


 その通り。


 もし。


 地上へ出れば。


 街が消える。


 クルザードは魔獣の死骸を見る。


 異常な魔力。


 資源。


 素材。


 価値が高過ぎる。


 ジェシカが静かに言った。


「……これ、薬になる」


「しかも最高級」


 ガルドも外殻を叩く。


「武具も化けるぞ」


 つまり。


 深層。


 危険。


 でも。


 利益が異常。


 そこをクルザードは理解した。


 帰還後。


 都市全体が騒然となった。


 深層魔獣素材。


 初確認。


 しかも。


 大量。


 鍛冶都市。


 研究所。


 薬師区画。


 全部動き出す。


 さらに。


 深層の情報。


 それ自体が価値だった。


 冒険者達が熱狂する。


「新階層だ!」


「深層攻略始まるぞ!」


「クルザード隊が突破した!」


 士気。


 爆上がり。


 でも。


 クルザードは浮かれていなかった。


 深夜。


 管理塔。


 一人。


 地図を見る。


 深層。


 まだ先がある。


 そして。


 嫌な予感があった。


 あの魔獣。


 単体じゃない。


 つまり。


 もっといる。


 もっと強い。


 その可能性。


 高い。


 そこへ。


 マチルダが来た。


「休まないの?」


「考えてる」


「何を?」


 クルザードは深層地図を見る。


「国家規模の災害になる」


 静かな声。


 でも。


 本気だった。


 ダンジョン。


 それは資源。


 同時に。


 世界最大の脅威。


 今までは。


 浅層だけで十分だった。


 でも。


 都市が成長した。


 人口が増えた。


 食料も工業も拡張した。


 つまり。


 さらに資源が必要。


 だから。


 深層へ行く。


 結果。


 世界の危険へ触れる。


 そこまで来ていた。


 マチルダが静かに言う。


「……止まる?」


 クルザードは首を横に振った。


「止まれば死ぬ」


 それが現実。


 国家形成。


 人口増加。


 技術発展。


 全部。


 止まれない。


 なら。


 進むしかない。


 強くなるしかない。


 その時。


 管理塔外。


 夜の食堂街から笑い声が聞こえた。


 湯気。


 肉の香り。


 酒。


 笑顔。


 人が生きている音。


 クルザードは窓を見る。


 守るべきもの。


 増え過ぎていた。


 だから。


 負けられない。


 深層ダンジョン。


 そこは。


 クルザード都市が初めて直面する。


『本物の脅威』だった。







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