74:鍛冶都市
工業化。
朝。
まだ日も昇り切らない時間。
クルザード都市東部。
そこだけ空気が違った。
熱。
鉄。
蒸気。
金属を打つ音。
巨大な槌音が街全体を揺らしている。
カン。
カン。
カン。
一定。
規則的。
まるで都市そのものが巨大な機械になったようだった。
「炉温上げろ!」
「鉄流すぞ!」
「搬送開始!」
怒号。
火花。
蒸気。
汗。
大量のドワーフ達が走り回っている。
その中央。
巨大溶鉱炉。
石と鋼鉄で組み上げられた異様な建造物。
内部で真っ赤な鉄が煮え滾っていた。
クルザードは高台から工場区画を見下ろしていた。
「……回り始めたな」
隣。
ガルドが腕を組みながら笑う。
「ここまで来るとはなァ」
ドワーフの顔。
完全に職人の顔だった。
三ヶ月前。
ここはただの荒地だった。
岩。
土。
森。
それだけ。
でも。
クルザードは鑑定した。
地下。
鉱脈。
鉄。
銅。
銀。
さらに。
魔鉄。
高純度鉱石。
全部埋まっていた。
つまり。
工業地帯適性。
そこで。
即決。
輸送ゴーレム。
水路。
蒸気炉。
全部接続。
結果。
巨大鍛冶都市誕生。
ガルドが笑う。
「普通はな」
「鉱山掘って終わりなんだよ」
「だがここは違う」
違った。
採掘。
加工。
流通。
販売。
全部繋がっている。
つまり。
利益率が異常。
さらに。
技術流出を抑えている。
そこが強い。
工房街。
完全に別世界だった。
巨大水車。
蒸気機関。
魔導炉。
輸送レール。
物流ゴーレム。
鉄材が流れていく。
止まらない。
休まない。
人間だけでは無理な規模。
でも。
クルザード都市は違う。
ゴーレムがある。
だから。
職人は“加工”だけに集中できる。
効率が跳ね上がる。
ガルドが鉄塊を持ち上げた。
「見ろ」
「不純物がほぼねぇ」
異常だった。
理由。
光属性。
精製。
浄化。
さらに。
アランの金属魔法。
完全にチート。
普通。
鉄精製には時間が掛かる。
でも。
ここでは数分。
だから。
武器量産速度がおかしい。
さらに。
品質まで高い。
その結果。
冒険者達が殺到した。
「マジで折れねぇ!」
「軽い!」
「斬れる!」
食堂街。
酒場。
全部。
武器の話。
それくらい品質差がある。
そこへ。
エリザベスが訓練用剣を持って来た。
「試す」
中庭。
訓練場。
鉄鎧を並べる。
マルセルが前に出た。
「行くぞ」
斬撃。
飛ぶ。
瞬間。
鉄鎧が真っ二つ。
周囲が静まる。
「……おい」
「これ軍用じゃねぇか」
その通り。
完全に軍需レベル。
しかも。
量産可能。
つまり。
国家戦力。
クルザードは静かに言った。
「輸出制限する」
ヴァレリアが即反応する。
「当然です」
「全部売ったら危険です」
だから。
階級化。
一般品。
冒険者品。
軍用品。
全部分ける。
そして。
核心技術は絶対出さない。
そこが合理。
夕方。
工場区画。
子供達が並んでいた。
職人学校。
教育施設。
そこでは。
ガルドが教えている。
「火を見るな」
「鉄を見ろ」
少年達が真剣だった。
さらに。
エルフ。
獣人。
人間。
全部混ざっている。
ここでは種族関係ない。
技術。
能力。
それだけ。
マチルダが静かに言った。
「これ、強いわね」
「ああ」
「人材育成が一番強い」
クルザードは即答した。
その通り。
武器は壊れる。
金は減る。
でも。
技術者は残る。
だから。
教育。
つまり。
未来への投資。
夜。
工業区。
赤い。
炉の火。
蒸気。
煙。
巨大都市が生きている。
食堂では職人達が鍋を囲んでいた。
味噌鍋。
燻製肉。
焼き魚。
酒。
全員食っている。
笑っている。
「この街やべぇな」
「稼げる」
「飯うまい」
「風呂ある」
「治安いい」
「帰りたくねぇ」
それ。
全部重要。
快適。
つまり。
定着率。
職人は流れない。
結果。
技術が蓄積する。
そこが強い。
さらに。
クルザード都市では。
怪我しても治療がある。
子供死なない。
税軽い。
だから。
家族ごと来る。
結果。
人口爆発。
そして。
市場が拡大。
さらに。
工業化が進む。
完全循環。
深夜。
工場中央。
巨大炉前。
クルザードが鉄塊を見ていた。
赤熱。
眩しい。
熱風。
ガルドが隣で笑う。
「お前、分かってやってるだろ」
「何がだ?」
「これ、もう“村”じゃねぇ」
クルザードは静かに炉を見る。
「知ってる」
その目。
冷静。
でも。
確信があった。
農業。
物流。
食。
教育。
観光。
そして。
工業。
全部揃い始めている。
つまり。
国家基盤。
しかも。
異常な速度。
理由。
合理。
無駄がない。
そして。
人が集まり続ける。
翌朝。
さらに馬車隊が来る。
鉱石。
商人。
移民。
鍛冶師。
全部増える。
理由。
『仕事がある』
『稼げる』
『飯が美味い』
『安全』
そして。
『技術が学べる』
その日。
クルザード都市は。
『食の都市』から。
『工業国家』へ変わり始めていた。




