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飯が美味すぎて、気づけば世界を支配していた。 ~無限魔力の料理人、物流と教育で最強国家を作る~  作者: 慈架太子


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70:スチームバレット

 中距離制圧。


 朝。


 演習場。


 巨大な土壁が並ぶ。


 距離百メートル。


 二百。


 三百。


 さらに奥。


 鉄板。


 岩壁。


 厚い。


 普通の魔法なら止まる。


 だが。


 今日は違った。


 蒸気が白く揺れる。


 熱。


 圧力。


 空気が震えている。


 中央。


 クルザードが片手を前へ出していた。


 周囲。


 ドロテア。


 マルセル。


 エリザベス。


 ティグリス。


 全員が静かに見守っている。


「……本当にやるのか?」


 マルセルが眉をひそめる。


 クルザードは短く答えた。


「ああ」


「中距離制圧を作る」


 辺境国家クルザード。


 人口。


 物流。


 農業。


 全部伸びている。


 つまり。


 狙われる。


 盗賊程度なら問題ない。


 でも。


 国家規模になると違う。


 騎兵。


 魔法兵。


 大型魔獣。


 押し潰しに来る。


 だから。


 必要だった。


 “近づかせない力”。


 クルザードの掌に水が集まる。


 圧縮。


 加熱。


 蒸気化。


 さらに圧縮。


 白い霧が細く尖る。


 ドロテアが息を呑む。


「魔力密度が……おかしい」


 普通。


 蒸気は拡散する。


 扱いづらい。


 不安定。


 でも。


 クルザードは違う。


 魔力循環。


 魔力制御。


 異常。


 暴走するはずの蒸気が。


 一点へ固定されていた。


「スチームバレット」


 次の瞬間。


 轟音。


 空気が爆ぜた。


 白線。


 見えない。


 速すぎる。


 百メートル先。


 土壁。


 貫通。


 二枚目。


 貫通。


 三枚目。


 さらに奥。


 鉄板。


 爆発。


 赤熱。


 溶ける。


 沈黙。


 熱風だけが残る。


 ティグリスの耳がぴくりと動く。


「……は?」


 エリザベスが呆然とする。


「騎士団砲撃級……」


「いや、もっと速い」


 ガルドが低く笑った。


「馬鹿みてぇな威力だ」


 クルザードは眉を寄せる。


「まだ荒い」


「貫通しすぎる」


「制圧なら範囲も必要だ」


 全員黙る。


 基準がおかしい。


 普通なら完成。


 でも。


 彼は止まらない。


 ドロテアが興奮気味に前へ出た。


「蒸気弾を圧縮してるの?」


「水と火の複合?」


「ああ」


「熱と圧力を維持してる」


「風も混ぜてる」


 空気制御。


 圧縮。


 射出。


 つまり。


 水。


 火。


 風。


 三属性複合。


 普通。


 無理。


 魔力暴走で死ぬ。


 でも。


 クルザードだけは成立する。


 無限魔力。


 異常制御。


 だから可能。


 クルザードが再び掌を上げる。


 今度は。


 数。


 増えた。


 一つ。


 二つ。


 十。


 二十。


 白い蒸気弾が空中に浮かぶ。


 周囲温度が上がる。


 空気が歪む。


「散開」


 発射。


 連続轟音。


 地面が爆ぜる。


 岩が砕ける。


 土煙。


 熱。


 視界が白く染まる。


 中距離演習場が半壊した。


 ベッティーナが盾を下ろす。


「……これ、軍隊消えるわよ」


 実際。


 そうだった。


 蒸気。


 つまり。


 熱。


 圧力。


 貫通。


 爆裂。


 全部乗っている。


 鎧。


 意味がない。


 木盾。


 一瞬で吹き飛ぶ。


 しかも。


 速度が異常。


 回避困難。


 クルザードは静かに考える。


「射程はまだ短い」


「連射安定も必要」


「あと熱量制御」


 マチルダが苦笑した。


「十分すぎると思うのだけど」


「他国なら国家機密よ」


「もう国家機密だ」


 クルザードは平然と言った。


 事実だった。


 技術。


 物流。


 教育。


 さらに。


 戦闘。


 全部噛み合い始めている。


 そこへ。


 斥候のカタリナが駆け込んできた。


「クルザード!」


「東街道!」


「魔物群!」


 全員の空気が変わる。


 クルザードは即座に動いた。


「規模」


「三百以上!」


「大型混ざってる!」


 早い。


 最近。


 人口流入で街道が伸びた。


 つまり。


 魔物と接触する。


 避けられない。


 でも。


 今のクルザードは違う。


「迎撃する」


 街道。


 避難誘導。


 物流ゴーレムが住民を下げる。


 魔導通信。


 即時伝達。


 兵士。


 冒険者。


 全部動く。


 以前の辺境なら。


 混乱して終わりだった。


 でも。


 ここは違う。


 整っている。


 つまり。


 強い。


 東街道。


 土煙。


 魔狼。


 猪型魔獣。


 大型爬虫類。


 群れ。


 暴走。


 商人達が青ざめる。


「終わりだ……!」


「数が多すぎる!」


 その時。


 前へ出た影。


 クルザード。


 後方。


 ドロテア。


 マルセル。


 エリザベス。


 全員配置。


「近づけるな」


「中距離で削る」


 蒸気。


 白い霧。


 クルザードの周囲が熱で揺れる。


 大型魔獣が咆哮。


 突進。


 速い。


 普通なら騎兵でも止められない。


 でも。


 クルザードは冷静だった。


「スチームバレット」


 轟音。


 白線。


 大型魔獣の頭部。


 消失。


 血と蒸気が爆ぜる。


 さらに。


 連射。


 空気を裂く。


 魔狼群。


 まとめて吹き飛ぶ。


 蒸気弾は着弾時。


 熱風を撒き散らす。


 つまり。


 周囲制圧も可能。


 前衛が近づく前に崩れる。


 ティグリスが笑う。


「楽だな!」


 飛び出す。


 虎獣人。


 超速。


 残った魔物を切り裂く。


 マルセルが斬撃を飛ばす。


 エリザベスが騎士剣で押し潰す。


 完全連動。


 後衛制圧。


 前衛処理。


 役割が噛み合っている。


 つまり。


 強い。


 大型爬虫類が口を開く。


 火炎。


 その瞬間。


 クルザードが左手を振る。


 氷壁。


 瞬時形成。


 防ぐ。


 次。


 蒸気弾。


 眼球貫通。


 内部爆裂。


 巨体が倒れた。


 静寂。


 終わり。


 三百規模。


 数分。


 商人達が震える。


「……何だこの国」


「辺境じゃない」


「軍事国家だ」


 違う。


 もっと厄介だった。


 食料。


 物流。


 医療。


 教育。


 さらに。


 戦闘。


 全部高水準。


 だから。


 崩れない。


 クルザードは死骸を見る。


「肉は回収」


「内臓分別」


「牙と骨も使う」


 全員即座に動く。


 無駄がない。


 魔物すら資源。


 つまり。


 経済へ変わる。


 街へ戻る。


 夜。


 酒場。


 湯気。


 鍋。


 焼き肉。


 酒。


 香り。


 今日倒した魔物肉も並んでいる。


「うめぇ!」


「柔らか!」


 笑い声。


 子供達。


 冒険者。


 商人。


 全部混ざる。


 安心感。


 強さ。


 豊かさ。


 それが同時に存在している。


 ヴァレリアが酒を傾ける。


「完全に流れ変わったわね」


「周辺国家、震えるわよ」


 マチルダも頷く。


「教育で人材を増やして」


「物流で支配して」


「食料で人口を抱える」


「そこに軍事まで乗った」


 国家完成。


 それに近い。


 クルザードは鍋を食べながら静かに言った。


「まだ途中だ」


 でも。


 全員理解していた。


 もう。


 辺境の小都市ではない。


 クルザード国家は。


 “止められない成長段階”へ入っていた。







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