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飯が美味すぎて、気づけば世界を支配していた。 ~無限魔力の料理人、物流と教育で最強国家を作る~  作者: 慈架太子


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45/104

45:罠解除

 鑑定活躍。


 二階層攻略が始まってから、村の空気が変わった。


 明らかに資源が増えている。


 地下湿地から持ち帰った巨大魚。


 発光苔。


 耐湿皮。


 魔石。


 毒袋。


 薬草。


 それらが加工され、保存され、売られ、食われ、循環していた。


 村は以前よりもさらに忙しい。


 ガルドの鍛冶場は昼夜火が落ちない。


 ジェシカの薬房には人が並ぶ。


 ヴァレリアは商人達と価格交渉を続けている。


 水路は拡張され、畑は広がり、魔導灯は夜を照らしていた。


 夜でも人が働く。


 夜でも飯屋が開く。


 夜でも子供が笑う。


 この世界では珍しい光景だった。


 そして今。


 クルザード達は再びダンジョン二階層へ来ていた。


 目的は探索範囲の拡張。


 資源回収。


 そして地図作成。


 ティグリスが鼻を動かす。


「今日は臭いが薄いな」


「湿地抜けた?」


 カタリナが壁へ触れる。


「違う」


「人工」


 全員が止まった。


 人工。


 つまり。


「遺跡系か」


 マティルデが剣へ手をかける。


 ダンジョンには種類がある。


 洞窟型。


 湿地型。


 森林型。


 そして遺跡型。


 遺跡型は危険だった。


 魔物より厄介なものがある。


 罠。


 通路を進む。


 石壁。


 古い模様。


 崩れた柱。


 明らかに自然物ではない。


 誰かが作った空間。


 そして。


 クルザードが足を止めた。


「待て」


 全員が止まる。


 カタリナが眉を寄せた。


「何かいる?」


「違う」


 クルザードは床を見る。


 普通の石。


 何もない。


 だが。


 鑑定。


【圧力感知板】


【発動:矢罠】


【毒属性】


【射出数:三十二】


【致死率:高】


 情報が頭へ流れ込む。


 以前なら理解できなかった。


 文字だけ。


 意味不明の羅列。


 だが今は違う。


 繋がる。


 理解できる。


 クルザードは静かに言った。


「床」


「踏むな」


 全員が顔を変えた。


 ベッティーナが冷や汗を流す。


「見えないわよ?」


「圧力式」


「踏むと飛ぶ」


 ドロテアが周囲を見た。


「どこから?」


 クルザードが壁を指す。


「左右」


「穴がある」


 よく見ると、小さな黒点。


 人間では気づきにくい。


 カタリナが舌打ちする。


「いやらしい作りね」


「殺す気満々」


 クルザードはしゃがみ込む。


 床へ触れる。


 鑑定。


【魔力導線確認】


【解除可能】


【必要:精密操作】


 頭痛。


 大量情報。


 魔力回路。


 構造。


 流れ。


 視界が揺れる。


 だが。


 理解できる。


 少しずつ。


 クルザードは息を整えた。


「……やる」


「解除できるの?」


 デニーゼが驚く。


「多分」


「多分!?」


 ティグリスが顔を引き攣らせた。


 クルザードは床へ手を当てる。


 魔力を流す。


 繊細に。


 本当に少しだけ。


 以前なら無理だった。


 魔力が暴走していた。


 流しすぎる。


 壊す。


 爆発する。


 だが今は違う。


 循環。


 制御。


 圧縮。


 少しずつ上達している。


 導線を探る。


 繋がりを見る。


 核。


 そこへ。


 切断。


 カチリ。


 小さな音。


【解除成功】


【精密魔力操作熟練上昇】


【罠解析経験獲得】


 ティグリスが目を見開いた。


「……解除した」


 ステファンが笑う。


「便利すぎるだろ」


「戦闘以外で化けてきたな」


 クルザードは苦笑した。


「俺もそう思う」


 戦闘ではまだ前衛達に及ばない。


 純粋な火力ならドロテア。


 接近戦ならティグリス。


 防御ならベッティーナ。


 剣ならマティルデ。


 だが。


 見える。


 構造が。


 流れが。


 それがクルザードの強さだった。


 さらに奥。


 また止まる。


【落下罠】


【天井圧殺】


【発動範囲:通路全域】


 クルザードが即座に壁を蹴った。


「下がれ!」


 全員が飛び退く。


 直後。


 轟音。


 巨大岩。


 通路が潰れる。


 土煙。


 ティグリスが呆然とした。


「今の見えたのか?」


「……なんとなく」


「なんとなくで死にたくないんだけど」


 全員が笑う。


 緊張が少し解けた。


 だが実際、凄まじかった。


 もし踏み込んでいたら全滅していた。


 遺跡型。


 危険度が違う。


 カタリナが感心したように言う。


「これ、普通の探索者なら死ぬわ」


「かなり」


「なのに進むの?」


「進む」


 クルザードは即答した。


 理由は単純。


 価値がある。


 罠がある場所には宝がある。


 そして今の村は資源を必要としている。


 人口増加。


 物流拡大。


 教育施設。


 風呂。


 食堂。


 道路。


 全部が資材を食う。


 止まれない。


 進むしかない。


 奥へ。


 広間。


 巨大空間だった。


 中央には石箱。


 古代文字。


 周囲には四つの石像。


 剣士。


 魔法使い。


 騎士。


 獣。


 嫌な空気。


 クルザードは即座に鑑定。


【守護機構】


【侵入反応型】


【起動条件:接近】


【危険度:高】


「触るな」


 ヴァレリアが眉を上げる。


「見るからに怪しいものね」


 ステファンは逆に笑っていた。


「宝箱っぽいじゃねぇか」


「罠」


「だよなぁ」


 クルザードは周囲を見る。


 魔力線。


 導線。


 繋がり。


 全部が見え始める。


 以前より鮮明に。


 情報が整理されている。


【核位置確認】


【右像内部】


【停止可能】


 クルザードは右側の石像へ近づいた。


 手を当てる。


 魔力。


 流す。


 解析。


 構造理解。


 脳が熱い。


 情報が多い。


 それでも止めない。


 少しずつ。


 少しずつ。


 自分の力になっていく。


 パキリ。


 石像内部が割れる。


 青い魔石。


 クルザードが掴み、魔力を遮断した。


 直後。


 空間の圧が消えた。


【守護停止】


 マティルデが剣を下ろす。


「本当に止めた……」


「化け物ね」


「まだ弱い」


 クルザードは本気でそう思っていた。


 できることは増えた。


 だがまだ未熟。


 魔力制御も不完全。


 戦闘も不足。


 もっと強くなる必要がある。


 石箱を開ける。


 中には。


 金属板。


 古代設計図。


 青白い鉱石。


 ガルドがいたら狂喜する類だった。


 ヴァレリアが目を見開く。


「これ、売れば……」


「売らない」


「でしょうね!」


 全員が笑った。


 クルザードは設計図を見る。


【冷却循環装置】


【魔導設備基礎】


【長時間魔力安定化】


 クルザードの目が変わる。


 これ。


 使える。


 村へ。


 物流へ。


 冷却庫へ。


 魔導灯へ。


 全部繋がる。


 ティグリスが呆れたように言う。


「また村のこと考えてる」


「使える」


「普通は金貨考えるのよ」


「技術の方が強い」


 その言葉に、ヴァレリアが笑った。


「ほんと、商人泣かせ」


 帰還。


 夜。


 ガルドの工房。


 設計図を見た瞬間、ドワーフが叫んだ。


「おいおいおいおい!」


「これ遺跡級だぞ!」


 目が本気だった。


 ジェシカも驚いている。


「古代魔導式……」


「残ってたのね」


 クルザードは静かに言う。


「使えるか?」


 ガルドが笑う。


「使うんだよ!」


「だから面白ぇ!」


 その夜。


 工房は眠らなかった。


 魔導灯。


 冷却循環。


 魔力安定。


 新技術。


 村がまた一歩進む。


 外では雪が降っていた。


 それでも村は明るい。


 温かい。


 飯の匂いがする。


 子供達が笑う。


 商人が集まる。


 冒険者が定住する。


 誰かが言った。


「なんかこの村、強いよな」


 それは兵士の強さではない。


 生きる力だった。


 食。


 技術。


 衛生。


 教育。


 物流。


 全部が繋がっている。


 そしてクルザードは理解し始めていた。


 鑑定とは。


 ただ見る力ではない。


 世界の構造を読む力だと。







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