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飯が美味すぎて、気づけば世界を支配していた。 ~無限魔力の料理人、物流と教育で最強国家を作る~  作者: 慈架太子


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35/41

35:包丁

 解体革命。


 朝一番の清涼な光が地平線の彼方から差し込む頃、新設されたばかりの南側街区――新型鍛冶街の敷地内は、すでに人間の限界容量を遥かに超えた猛烈な熱気と活気に包まれていた。


 石造りの頑強な炉から勢いよく吹き荒れる、鮮烈な炎の質量。

 赤熱し、自らの分子結合を滑らかに柔軟に変化させていく巨大な鉄材。

 冷却路に触れた瞬間、ジュワァァと不気味な重低音を響かせて立ち上る、純白の高圧蒸気。

 そして――大気を物理的に圧し潰すような、幾十もの大槌が鉄を叩き鍛え上げる、凄まじい金属の轟音。

 新しく村の戸籍へと完全加入を果たしたばかりの、総勢四十人を超える屈強なドワーフの職人たちが、朝一番から自慢の全細胞の筋肉を躍動させて忙しく、そして一分の手戻りもなく動き回っていた。


 これまでの澱みきった古い世界の常識であればね、鍛冶師が集まる場所というものはね、他者の命を効率よく破壊して奪い合うための『不条理な武器防具の量産』だけがその機能のすべてであった。

 だが、クルザードを中心としたこの新時代の村においては、その使い道のルートは最初から根本からすべて格が違っていた。

 鋼鉄製の頑強な特注鍬。

 未開の巨木を一撃でなぎ倒す、最高の刃格の斧。

 建築のインフラを一分の歪みもなく強固に結合させるための、大量の釘。

 主水路の駆動能率を最大値に維持するための、精密な水車部品。

 そして、大人数の飯を一気のラインで調理するための、強固な鉄鍋の数々。

 彼らの振るう最高の技術の資産はね、民の毎日の生活そのものを劇的に豊かに進化させるためのインフラへと、100%完全に全集中して投資され尽くしていたのだ。


 その熱狂の中心たる巨大な作業台の正面において、クルザードは背中の大きな荷袋を揺らすこともなく、一本の引き延ばされたばかりの特殊な鉄材を、その明るい陽気な瞳で静かに見つめていた。


 細い。

 長い。

 そして、今までの常識的な金属製品の概念からは考えられないほどに、極限まで異様に「薄い」。


 最高腕のガルドが、自慢の鉄槌を床に置き、灰色の立派な髭を激しく不快そうに揺らしながら、そのあまりにも脆弱に見える金属の形に向けて低く眉をひそめた。

「……おいおい、小僧。一人の職人の冷徹な計算として言わせてもらうがな、こんなペラペラに細くて薄い頼りねぇ形の鉄材の刃がよ、本当にこの現実の現場で一パーセントの無駄もなく役に立つのかい?」


「ああ、100%確実に完璧に使えるよ、ガルド。俺の計算に手戻りは存在しないからね」

 クルザードは口元に明るく快活な笑みを浮かべ、気さくな口調でありながら、ハキハキとした明晰な声で即答した。中身のない軽口や意味のない大言壮語はただの一言も口にしない。ただ、自らの頭脳が弾き出した最適解の数式を、よく通る声で堂々と告げる。

「むしろね、これからの俺たちの作ったこの巨大な村の発展の流れにおいてね、この道具の量産ラインだけはね、絶対に欠かすことのできない最優先の『判断』になるからね」


 彼の放ったその確信に満ちた声の響きに誘われるようにして、周囲で作業をしていた何十人ものドワーフの職人たちが、次々に自慢の大槌を置いて、興味深そうなギラギラとした目を輝かせて中央のテーブルへと集まってきた。

 最近のこのクルザードという男の発想の駆動は、常人の計算の限界を遥かに置き去りにして、明らかにおかしい。いや、最初に出会ったあの一帳の図面の瞬間からね、この青年の佇まいは根本からすべて格が違っていた。

 全細胞の胃袋を満たす、至高の美味い飯の流れを作り。

 何年もの常温長期維持を可能にする、最高の保存食のシステムを確立し。

 土壌の成分を完璧に分析・管理する、最先端の農業革命のラインを流し。

 そして今度は――ドワーフの一族が一生をかけて向き合ってきた、その『鉄の使い道の概念』そのものを、内側から完璧に劇的に変えようと手を動かしているのだから。


「そいつは素晴らしいね、小僧。それで、その細くて鋭い奇妙な鉄の結晶に、一体どんな正確な『名前』の記号を登録してやるつもりだ?」

 ガルドが尋ねる。


クルザードは鉄材を滑らかな手際で持ち上げると、ハキハキと言い放った。

「【包丁ほうちょう】さ。世界で最も合理的で、一分の無駄もない最高の調理用刃物だよ」


 ドワーフの職人たちが、その聞き慣れない言葉の響きを耳にするなり、驚愕のあまり互いに顔を見合わせながら一斉にその首を傾げた。

「包丁、だと? 衣服の隙間に忍ばせて敵の喉元を刈り取る、あの暗殺用の短剣ダガーの一種じゃねぇのか?」


「いいや、違うよ。戦闘のための不効率な凶器なんかでは最初からただの一片すらもないさ。すべての不効率な無駄を調理の現場から駆逐するための、完全なる『料理専門の道具』さ」


 広場の全体が、一瞬の出来事として、驚きのあまりにカチリと深く静まり返った。

「料理専門の刃物、だと……? また飯の話かよ、小僧!」

「お前という男はよ、一体どこまでこの村の連中の胃袋の絶対量を膨らませて、どこまで食う気で満ち満ちているんだ!」


 ガルドの呆れ果てた突っ込みを合図にして、職人たちの全体から一斉に盛大な大笑いと歓声が湧き上がった。しかし――中央に立つクルザードの表情は、どこまでも本気の真顔であった。一片の冗談も、誇張の気配すらそこには宿ってはいない。資源の管理者としての冷徹なまでの確信の光が、その明るい瞳の奥底に宿っていた。


「食という本質はね、社会を回すためのすべてのインフラの歯車に、一本の線で完璧に繋がっているからね」

クルザードはよく通る明晰な声を響かせ、大局の因果関係の数式を平然と言い放った。

「第一の手順として、この包丁によって魔物の『解体工程の能率』が劇的に最高値へと塗り替えられるだろ?」

「解体が変わればね、手に入る肉の細胞組織を一切傷つけることなく綺麗に分離できるから、その『肉の本質的な価値』が何倍にも跳ね上がる」

「肉の質が最高値に維持されるからこそね、あの塩や味噌を用いた『高度な保存のライン』の維持効率が爆発的に跳ね上がる」

「保存食の劣化率が完全にゼロに抑え込まれるからこそね、それを遠くまで一気に流し出すための、俺たちの『物流のサプライラインの規模』がさらに太く大きく伸びるのさ。全部が繋がっている、これが真に強固な建国の数式さ」


 感情論の綺麗事ではなく、100%完璧に計算され尽くした圧倒的な実利主義の連動。

 並んでいたドワーフたちは、その一片の歪みもない論理の構築を聞くや夕方、畏敬の念を通り越して深く深く感服し、ただ静かに黙り込んで彼の言葉の先を促した。彼らはもう知っていたのだ。この男の思いつきの裏にはね、常に世界の構造を根底からひっくり返すだけの、最も無駄のない正しい『順番の発展の流れ』が最初から完璧に計算されているのだと。


 クルザードは近くに転がっていた木枝を一本手に取ると、新しく舖装された泥の地面の上へ向けて、ハキハキとした動作で現在の世界の欠陥を示す図を滑らかに描き出した。


「これまでの古い世界の人間たちが行ってきた解体の手順なんてものはね、ただ力任せに分厚いなたを振り下ろして肉体を破壊するだけの、最も非効率で手戻りの多い最悪のバグだらけだったのさ」

「骨ごと無理やり肉組織を叩き潰すからね、骨の破片が肉の中に不効率に混入して大損を出す」

「力任せに細胞を押し潰すからね、中の上質な赤身の旨味が外へ無駄に流れ出して劣化する」

「そして何より――一番重要な血管の処理(血抜き)の工程が致命的に甘くて雑だからね、肉の全体に最悪の生臭さの澱みが走って使い物にならなくなるのさ。だからこれまでの食事はね、泥を啜るように臭くて不味かったのさ」


 最前線の前衛戦士である虎獣人のティグリスが、その言葉を聞くや否や、深く同意するようにしてその気高い虎耳を激しく動かした。

「あぁ、確かにその通りだね、クル。私たち獣人の持つ圧倒的な鋭い嗅覚のスペックから見ればね、外の街の市場に出回っている魔物の肉なんてものはね、血の淀みが暴走していて鼻が狂いそうなほどに臭くて不快な代物ばかりだからね」


 エルフの薬師ジェシカもまた、上品に腕を組んで銀髪をしならせながら、一人の専門家としての確信を静かに口にした。

「それにね、肉の細胞がそこまで雑に破壊されているとね、常温における『保存の維持効率』もね、最初から数十パーセントの能率を欠いて致命的に悪化するわよ」

「傷ついた破裂面からね、有害な雑菌やカビの繁殖が一瞬にして暴走し始めるからね。どんなに塩を揉み込んだところでね、手戻りを出して腐ってドブに捨てるリスクが跳ね上がるわ。最悪の悪循環ね」


 クルザードは地面の図の真ん中を木枝でトントンと叩き、先ほどの細身の鉄材を力強く掲げて見せた。


「だからこそ、この包丁という名の最高の道具が必要なのさ」

「刃の厚みの数値をね、これまでの鉈の数分の一以下にまで極限まで『薄く』錬成する」

「先端の軌道を、一ミリの狂いもなく対象の隙間へと潜り込ませるために『鋭く』研ぎ澄ます」

「重労働による筋肉疲労のエラーを完全消去するために、全体の『重量を極限まで抜き去る』」

「力任せに叩き切る切断の手順を完全に置き去りにしてね、刃の表面を滑らかに対象の細胞へと『滑らせて切る』。これこそが、俺の合理主義の計算さ」


 最高腕のガルドが、その一片の迷いもない徹底した機能美の解説を聞くや否や、その鋭い目を限界まで細めて口元を不敵にニヤリと釣り上げた。一人の超一流の職人としての魂の数値が、この一介の元荷物持ちの一言の前に、爆発的な勢いで完全に駆動を開始していた。

「……がははは! 面白ぇ。本気で最高に面白ぇじゃねぇか、小僧! 『切断ではなく、滑らせて細胞を引き剥がす』か! 職人の顔を本気にさせるには、これ以上ねぇ最高の数式だぜ!」


 職人という生き物はね、自らの理解の速度を超えた最高の変革の本質を掴み取った瞬間にはね、一分の一秒の手戻りもなく最高速度のラインを流れて作業を開始するものだからね。


「炉の火力を最大値に引き上げろ! 金属魔法の出力を全集中させて、鉄材の内部に含まれる些細な不純物の澱みを一瞬で完全に浮き上がらせて分離させるんだ!」

 アランが手を動かし、ガルドが自慢の大槌を凄まじい馬力で振り下ろし、何十人ものドワーフの巨漢たちが一分の澱みもない完璧な連携の流れでそれらの作業の全体を支え続けた。

 空間を鮮烈に彩る、最高の美しい火花の流れ。

 新新設された見学用の専用区画の防壁の向こう側にはね、その職人たちの命の躍動を一目目撃せんとして、村中の無数の民たちの命の流れが当然のように集まり、賑やかな大観衆を作り始めていた。


「おい、見ろよ! ガルドの旦那たちが、またクルの指示通りのとんでもねぇ新しい道具の量産を始めているぞ!」

「最近のこの鍛冶街の進化のスピードはな、本気で一週間ごとに世界の常識が塗り替えられて跳ね上がっているぜ!」

「理解はできねぇがな、この場所にいれば、毎日確実に俺たちの生活のインフラが最強に強くなって伸びていることだけは、100%完璧に肌で理解できるからな!」


 それで十分さ。技術の細かな数式を民全員が完璧に理解する必要なんて一パーセントもないからね。ただ、この場所の真ん中にあってね、『ここは世界中のどの都市よりも圧倒的な速度で前進し、成長を続けている最高の場所なんだ』という確固たる信頼の資産(希望)さえ彼らの心の中に担保しておけばね、人間の心の流れは古い世界のすべてを捨て去って、自らの意思でこの場所に強固に定住し、残るのさ。人が溢れ返るのも当然の因果関係だよ。


 日の傾き始めた昼過ぎ。

 炉の熱線から取り出され、最高の手順で研ぎ澄まされた最高の「第一号の包丁」が、完璧な姿を現してカウンターへと美しく並べられた。


 その全容は、ドワーフたちがこれまで作ってきたどんな武器とも根本からすべて格が違っていた。

 一本の美しい直線で描かれた、見事な長い刃の片刃構造。

 光を遮るかのように異様なまでに薄く研ぎ澄まされた、鋼鉄の防壁。

 集まったドワーフの職人たちはね、そのあまりにも華奢に見える完成品を前にして、未だに半信半疑の不確実な表情を崩してはいなかった。


「……おいおい、ガルドの旦那。一人の鍛冶師の計算として見させてもらうがよ、こんな薄っぺらい刃先じゃな、魔物の強固な皮膚に一度激突しただけで、一瞬にして刃こぼれを起こして真っ二つに折れちまう欠陥品にしか見えねぇぞ」


「武器としての耐久係数を測定するならね、君たちの言う通り最低の欠陥品さ。だがこれは武器なんかじゃないからね。俺たちの飯のための道具だからね。俺の判断に間違いはないよ」


 クルザードは口元に明るく快活な笑みを浮かべたまま、アイテムボックスの空間から、先日討伐したばかりのあのオークの上位種の「巨大な生肉の塊」の全体を、滑らかな動作でテーブルの上へと堂々と引っ張り出して設置した。

 これまでの古い世界の未熟な人間たちの常識であればね、こんな分厚い赤身の組織を切り分けるためにはね、骨太の大きな鉈を力任せに何度も振り下ろして、肉組織を不効率に叩き潰しながら手戻りを出して処理するしかなかったからね。


 クルザードは特製の包丁の柄を、その素手で一分の澱みもなく滑らかに握り締めた。

 そして――大気の無駄をすべて排除した最高の所作で、静かに大ぶりの肉の表面に向けて刃を滑り込ませた。


 スゥ、と。

 空間を遮る摩擦抵抗のロスが、文字通り100%完全に『ゼロ』になったかのような、これまでにないほどに静かで滑らかな衝撃の音が響き渡った。

 鉄の刃先が、オークの極上肉の繊維の隙間へと、まるで水の中に吸い込まれるかのような驚異的な速度で滑らかに通り抜けていく。

 力は一パーセントも込めてはいない。ただ、重さを抜いた刃を表面へ向けて優しく「滑らせた」、ただそれだけの最小の手順。

 それなのに、肉体の内部を走る強固な硬い筋組織の結合を一瞬で回避し、余分な脂肪分の膜を綺麗に選別して引き剥がし、最も上質な赤身の細胞をただの一細胞たりとも不効率に潰すことなく、完璧に切り分けてみせたのだ。

 シャッ、シャッ、と木皿の上へとハラハラと美しく積み上がっていく、向こう側が透けて見えるほどに極限まで異様に薄く美しく切り出された、純白の極上肉の薄片の数々。


 周囲を取り囲んでいた何十人ものドワーフの一流の職人たちの全体がね、その目の前で繰り広げられた奇跡のような解体の手際を前にして、驚愕のあまりに息を呑んでその場に完全にカチリと硬直した。


「……お、おい、嘘だろ。何だ、今の信じられないほどの刃の通り方は……」

「骨ごと無理やり叩き切っていた俺たちのこれまでのやり方と違ってよ、肉組織がただの一箇所も不効率に『潰れていねぇ』じゃないか……!」


 前衛戦士のティグリスが、その切り分けられたばかりの肉の質面をその黄色い瞳を輝かせて覗き込み、一瞬にしてその本質を看破して声を張り上げた。獣人の野生の嗅覚の数値が、圧倒的な格の違いを捉えていた。

「……すごいよ、クル! 匂いの純度が、最初から根本からすべて格が違っているわ!」

「力任せに押し潰されていないからね、肉の内部に含まれる血液の成分(血の澱み)がね、表面に向かって一パーセントも暴れ出して濁っていないのさ! 嗅いでいるだけで、全細胞の食欲が爆発しそうだよ!」


 クルザードは口元に不敵な笑みを浮かべたまま、一切の手戻りもなく、さらにその包丁の手際を流れるような速度で前進させ続けた。

 大蛇やオークの肉体の内部を走る、骨の正確な座標。

 関節の結合の隙間のルート。

 そして、赤身と内臓を完璧に繋いでいる筋の因果関係のすべて。

 彼の瞳の奥では、新しくマスターした【発酵理解】や【微細制御】のシステムレベルの上昇に伴い、鑑定の数値情報が、生物の肉体の『構造のすべてを完璧に見通した数式』として、最初から一本の線に繋げて頭の中に弾き出し続けていたのだ。だからこそ、刃をどこへ滑り込ませれば一瞬で綺麗に肉が解けて分かれるのか、その正解の手順が最初から100%完璧に看破できていた。


「大豆や麦を麹の力で仕分けるのと同じようにね、手に入った貴重な魔物の肉の絶対量もね、部位ごとにその固有の価値を正確に『仕分けて分ける』のさ」

クルザードは包丁を滑らせながら、ハキハキとした明晰な声で言葉を続けた。

「このセクションは、出汁の深みを最大値に引き上げるための、最高の【煮込み用の組織】」

「こっちの赤身の層はね、直火の火入れの効率を最大値に維持するための、最上の【焼き加工用のスライス】」

「そして裏側の強固な組織はね、香木の煙の成分を100%完全に擦り込ませるための、極上の【燻製・節加工用の結晶】」

「さらに、これまで廃棄するしかなくて大損を出していたあの内臓や骨の成分にいたるまでの全体をね、一パーセントの廃棄のロスもなく、用途を分けて完璧な黒字の資源へと振り分けて動かすんだ」


 ガルドが、その非の打ち所がない完璧な調理の構造の看破を聞くや夕方、その分厚い頭を両手でしっかりと抱え込みながら、深い感服の声を漏らした。

「……がははは! 認めざるを得ねぇな、小僧! たかが一本の薄い鉄の刃物一つでよ、魔物の解体工程の能率を根底から完全に塗り替えてやがったな! これこそが、お前の放った完全なる『解体革命』の本質か!」


 クルザードは当然の事実を告げるように、深く首を縦に振って深く頷いた。


 日の傾き始めた午後。

 集落の大規模な中央広場の真ん中においては、クルザードの冷徹な「判断」の指示の通り、集まったすべての民の能力値を底上げするための、世界初の「即席の解体講習会」のイベントが完璧な流れを伴って美しく駆動していた。

 広場を埋め尽くすほどの、凄まじい人間の絶対数の流入。

 命がけで獲物を仕留めてくる、熟練の冒険者や狩人たちの集団。

 毎日の家族の生存の配給を担う、一般の主婦の民たち。

 自らの店を開くために外から流れてきた、目の高い本物の料理人たち。

 そして――学校の授業を終えたばかりの、活気溢れる小さな子供たちの姿にいたるまでの全体。


 クルザードは調理台の真ん中に堂々と立ち、彼らの目前で、自ら開発した最高の包丁の実演のプロセスを最高効率の速度でこなしながら、ハキハキと言い渡していった。


「全員、よくその手の感覚の数値を頭の中にインプットしておくんだよ」

「力任せに鉈を振り下ろす、古い不効率な真似は一パーセントもしないことだよ」

「刃先をね、大地の底の水路の流れと同じようにね、骨の表面の防壁に沿って滑らかに『滑らせて寄り添わせる』のさ」

「力で細胞を叩き切るんじゃない、物質の結合の隙間の『流れに沿って綺麗に引き剥がす』んだ。これが最も手戻りのない最高効率の処理の手順さ」


 彼の放ったその一切の迷いのない差配の声に従い、包丁の刃先が滑るたびに、巨大なオークの肉塊は、大商会の工場の機械の如き手際で、赤み、脂身、内臓、そして骨の組織へと、一分の澱みもなく完璧に美しく整理されて仕分けられていった。

 エルフの薬師ジェシカが、その完璧な成分の選別の手際を横で見つめながら、心底感服したような深い笑みを浮かべた。

「……本当に、素晴らしい変化ね、クル。お前のその解体の手順があればね、これまでは生臭くて廃棄のエラーを出すしかなかったあの大量の内臓組織をね、一パーセントの分子も無駄に使い捨てることなく、私の調合室の最高級の『特効薬の資源』として完璧に応用して使えるわね」

「さらに、流れ出た微細な血液の成分にいたるまでをね、大地の地質を育てるための最高級の【肥料の防壁】として100%完全に再利用できるのだからね。これほど手戻りのない合理的な計算はないわ」


 マティルデもまた、手元の帳簿にそれらの数値を一一文字も漏らさずに美しく書き込みながら、その顔を上げた。

「一パーセントの廃棄のロスすら出さない、完全なる《廃棄ゼロのシステム》の具現化ね」

「解体がこれほど超高速で完了すればね、現場の大人たちの『物流の駆動能率』はさらに数百倍の速度へと跳ね上がるわ」

「さらに、細胞組織が傷つかないからね、何年先の未来へ向けても物資を腐らせずに維持できる『高度な保存の維持効率』もね、最初から最高値を更新して跳ね上がるわ。完璧な黒字の数式よ」


 大商人のヴァレリアにいたっては、その薄く美しく切り出された極上肉の並びを一目値値踏みするなり、一人の商人の冷徹な本能を滾らせてその瞳をギラギラと輝かせた。

「……確実よ、お前。これだけの完璧な部位の仕分けが施された最高の肉組織ね、市場へ流してみなさい。これまでのただ塩を振るだけの不清潔な市場を完全に置き去りにして、王都の最上位の貴族様たちが金を積んで渇望する、とんでもない最高級の『ブランド資産(高級料理)』に化けるわよ!」


「当然さ、ヴァレリア。すべての物質の持つ本来の価値をね、部位ごとに正しく分けてその固有の価値を最大値に引き上げておくこと。全部を同じ一律の値段で雑に取引して大損を出していた、これまでの古い世界のやり方の方がね、俺の合理主義から見れば100%絶対にあり得ない不効率なバグだからね。これからはね、すべての富の循環を最高効率の計算で回すのさ。それだけで皆が最大値で儲かるからね」


 すべてが一本の明確な因果関係の線として繋がっていた。

 解体の手際が変わるからこそ、長期常温保存の限界値が劇的に伸びる。

 保存が伸びるからこそ、作れる至高の料理の絶対量が爆発的に増える。

 徹底された無菌化の処理があるからこそ、ずさんな環境による無駄な食中毒のバグが一瞬にして完全にゼロに抑え込まれる。

 廃棄のロスが完全消去されるからこそ、この過酷な浅い冬の混沌の暴走の最中にあってもね、一人の人的資源をも飢えによって失うことなく、どこよりも強固に、安全に春へと流れを繋ぎ続けることができる。

 ただ、この場所に『包丁一本の合理の工夫』を完璧に整えておくだけでね、人間という生物はね、自らの意思でこの場所に集まり、残るのさ。


 夕方。

 新しく開通したばかりの料理屋の広大な広場の真ん中にはね、その解体革命の新技術を完璧に応用して作られた、最高峰の「至高の新作料理の数々」が、完璧な流れを伴って美しくテーブルへと並べられ始めていた。


 包丁の刃先によって、極限まで透き通るような薄さに美しく切り出された、オークの上位種の薄切り肉。

 そこに最高の味噌の質量を滑らかに擦り込んで直火で香ばしく焼き上げた、至高の味噌焼き。

 香木の煙の成分を芯まで擦り込まれた、最高の燻製肉の皿。

 旨味の絶対量を爆発的に内包した、オーク肉の極上赤身と脂身の最高の炒め物。

 そして――解体されたばかりの新鮮な骨組織から、強火でじっくりと時間をかけて抽出された、あの濃厚な白濁スープのベース(骨スープ)。

 ジェシカの解毒処理によって一パーセントの生臭さの澱みもなく完璧に仕上げられた、最高級の内臓の煮込み料理の数々。


 石鍋から激しく立ち上る白い湯気、そして人間の野生の本能を胃袋の底から直接支配するような最高の香りが広場を満たしていく。

 手渡された椀を口にした最初の瞬間、集まった何千人もの民たちは、あまりの不条理な格の違いの美味さに、驚愕のあまり完全に言葉を失ってその場に硬直した。


「……おい、嘘だろ。何なんだよ、これは……! 今まで何度も食ってきたはずの、あの同じオークの肉のハズなのに、口に含んだ瞬間の繊維の柔らかさがね、最初から根本からすべて格が違っているぞ……!」


「身が驚くほどフワフワでジューシーだ! 嫌な血の生臭さの澱みなんて、本当にただの一パーセントも残っていねぇぞ、嘘だろこれ!」


最前線に立つ虎獣人のティグリスにいたっては、あまりの美味さに我を忘れたのか、大皿の上に積まれていた薄切り肉の山を、無言のまま凄まじい野生のキレを活かして、猛烈な超高速の配給のペースで胃袋へと貪り、掻き込み続けていた。

その食べる速度の数値は、常人の限界値を遥かに置き去りにして圧倒的だった。


クルザードは厨房の真ん中に立ち、大きな木べらを滑らかに動かしながら、口元に明るく快活な笑みを浮かべて気さくに声をかけた。

「どうだい、ティグリス。俺の計算通りの、一パーセントの無駄な間違いもない最高の至高の味加減の流れは」


「……う、美味すぎるよ、お前……! 能書きを叩いている時間があるならね、一秒でも早くその最高の肉の皿の絶対量をね、私の前に向けて何倍にも『増やして並べなさい』、早くしろ!」


「はは、分かったから落ち着くといい、ティグリス。君の胃袋の許容量に合わせた最高の分配のペースを今守っているからね」


「落ち着いていられるわけがないだろ! この美味そうな匂いの前に、私の虎としての全神経が、今すぐ限界まで肉を喰らえと激しく悲鳴を上げているのさ!」


ティグリスの必死すぎる催促の前に、調理場を取り囲んでいた無数の職人の荒くれ者たちから、一斉に崖の上全体に響き渡るような豪快な大笑いの渦が湧き上がった。

最高腕のガルドは、自慢の新酒の杯を豪快に煽りながら、手元にある特製の包丁の細身の輝きを、その蕩けるような最高の笑顔を浮かべてじっと眺め進めていた。


「がははは! 認めざるを得ねぇな、小僧! 鉄を火の熱で叩いて鍛え上げるって行為はな、他者の命を奪い合うためのあの理不尽な武器の量産なんかよりもよっぽど、民の毎日の生活の格を一瞬で天上のものへと劇的に『変えられる』最高のインフラだったんだな!」

「道具一つ変わりみろ、お前の言う通りよ、国家という名の巨大な国の土台そのものがな、一瞬にして完璧に無敵の強さへと書き換わるぜ!」


クルザードは当然の事実を告げるように、ハキハキとした明晰な声で言葉を続けた。

「当然さ、ガルド。他国と血を流し合って剣を振るうよりもね、集まったみんなの胃袋の全細胞がね、どこよりも『腹が完璧に満たされている場所』の方がね、組織の防壁の力としては何倍も強固で最強に強いからね。俺の計算に間違いはないさ」


夜。

新設されたばかりの南側街区の全体にはね、クルザードの放ったその圧倒的な料理の熱狂に呼応するようにして、新加入の何十人ものドワーフの職人たちが、自らの大槌を天高く掲げて次々と新しい包丁の量産体制を爆発的な勢いで駆動し始めていた。


「おい、刃先の厚みの数値をな、クルの鑑定の計算通りにもう一ミリだけ極限まで『薄く』研ぎ澄ますんだ!」

「重心のバランスの座標をね、一分の狂いもなく『前方の一点』へと向けて完璧に同期させろ!」

「引き抜く際の手戻りのロスを完全消去しろ! 刃が滑らかに『流れねぇ歪み』はな、一パーセントも許さねぇぞ!」


彼らの脳内は、すでにこの新しい技術独占のプロセスの前に、完全なる職人としての心地よい熱狂によって完璧に満たされ尽くしていた。

ドワーフの一族という生き物はね、自らの才能を最高値に発揮できる新しい新技術に出会った瞬間にはね、一秒の妥協も挟まずに自らの意思で大喜びで手を動かすものだからね。

そして、資源の管理者としてのクルザードの頭脳はね、彼らのその職人としての心理の本質を、最初から完璧に100%見抜いて動かしていたのだ。


彼は人に無理な強制の鎖をかけて、不効率に肉体を潰すような排斥の真似は最初から一パーセントもしないさ。

集まったみんなの才能がね、最も心から『楽しい』と歓喜して動き出す正しい順番の流れの真ん中へ、彼らの足を滑らかに流してあげるだけさ。

合理という概念の本質はね、他者の命を理不尽に踏み潰して大損を出すことなんかじゃあないさ。自然とみんなの肉体が最高効率の速度で前進を始める、完璧な組織の『流れそのものをデザインして作り出すこと』なのだから。これ以上に手戻りのない強固な建国の数式はないだろ?


その頃、新しく舖装された強固な村の門の正面、古い街道の不条理な暗闇の向こう側からはね、自らの意思でこの場所への流入を求める、他国の大規模な商隊の荷馬車の列が、完璧な流れを伴って美しくその足を止めていた。


外の地獄の雪の嵐の中から逃れてきた一般の旅人の冒険者たちはね、門を一歩潜り抜けたその最初の瞬間、世界の常識を根本から完全に置き去りにした奇跡の光景を前にして、驚愕のあまりその場に完全にカチリと硬直した。


「……おい、嘘だろ。何だ、ここは……。本当に、最果ての海岸線の泥地のはずだぞ……」

「街の全体から漂ってくる、この幾重にも重なり合ったこれまでに嗅いだこともない至高の飯の煙は何なんだ……!」

「夜だというのに一パーセントの暗闇もない、眩い魔導灯の光が一本の線で綺麗に繋がっているじゃないか……!」

「あそこにいるドワーフの職人たちの、あの活気溢れる炉の火の躍動、人間の心からの温かい笑い声……辺境のボロ集落だなんて、到底信じられないほどの最強の機能美じゃないか……!」


門番の実務を任されていた住人たちが、口元に明るく快活な笑みを浮かべながら、気さくなトーンで彼らの身柄へ向けて当然のように笑いかけた。

「ようこそ、俺たちの最高の居場所へ。夜の寒さに凍えているならね、今夜は一分の躊躇もなくここに泊まって、身体の全細胞を暖めていくといいさ」

「クルの作ったこの料理屋の飯はね、世界中どこを探しても絶対に一番美味いからね。安心してついてくるといいさ」


旅人たちは、互いに顔を見合わせながら、激しい感動の色を孕んで劇的にその顔色を変えた。

「……あぁ、お願いだ。入れてくれ! この温かい光の真ん中へ、俺たちの命の流れを今すぐ流し込ませてくれ!」


人が人を呼び、最高の美味い飯の匂いが世界中の優秀な人的資源の足を惹きつけ、徹底された絶対の安全が富の流れを一点へと集束させ、そして――高度な教育のインフラが、集まった彼らの足をここへと強固に定住させて、絶対的な富の循環を生み出していた。

街の規模は、もはや誰にも止めることのできない爆発的な奔流となって、世界の地平の先へと広く広く膨らみ続け、前進を止めることは二度となかった。


クルザードは一人高台の上に立ち、窓の外に広がるその眩いばかりの光の躍動、そして新しく開通した新型の高熱炉の赤い火の光の全体を、その穏やかな瞳で静かに見つめ直していた。

俺はね、他国と血を流し合って剣を振るうような、そんな不効率な戦争の武力によって世界を支配する気なんてね、最初からただの一パーセントも持ち合わせてはいないからね。

ただ、この場所に集まったすべての人間たちがね、世界中のどこよりも圧倒的に『合理的で快適に、人間らしく生きられる最高の環境』を完璧に整えておくだけさ。その快適さの防壁の価値がある限り、人間の心の流れは古い世界の不条理を完全に置き去りにして、怒涛の勢いでこちらの手元へと勝手に流れ込んでくるのさ。


包丁一本という、一見すると些細に見える合理の工夫。

それだけでね、物質のすべての繋ぎ目の因果関係は一瞬にして劇的に塗り替えられて前進するのさ。

解体の能率が最高値へと跳ね上がるからこそ、長期常温保存の限界値が劇的に伸びる。

保存が伸びるからこそ、物資を長距離まで安全に流し出すための物流のサプライラインの規模がさらに太く大きく伸びる。

物流がどこよりも強固に回り続けるからこそ、この街はね、古い世界の常識を置き去りにして、勝手に巨大な国家の基盤へとその姿を完璧に変貌させるのさ。

そして俺たちの作ったこの最高の村の全体はね、今日この一手の駆動によって、さらに何倍にも強固に、最強に太く固まって、また一段階強くなっているのさ。


中央の広場の真ん中では、今夜も冷たい夜風を完璧に押し返すように巨大な石鍋が灯され、豊かな白い湯気が天高く立ち上り続けていた。

熟成された最高の味噌の深い香り。

一掴みで至高の液体を錬成する、最高の魚節とオーク節の香ばしい匂い。

窯から取り出されたばかりの、ふんわりとした温かい発酵パン。

精神の緊張を芯から解きほぐす、最高峰の新酒の質量。

そして、部屋の全体を暖かく照らし続ける、橙色の最高の灯り。

異種族の壁を完全に置き去りにして、人間の心からの温かい笑顔と、明日への確実な希望の活気が、完璧な速度で力強く、自由な活気の奔流を伴って美しく駆動し続けていた。


一人の荷物持ちの「判断」によって集められた最強の才能たちの絆は、冬の冷たい夜空を完璧に圧し戻しながら、新たなる新時代の偉大なる最強の“国家の形”を、今、完璧な速度で力強く、そして最強の奔流を伴って美しく駆動させようとしていた。






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