32:水路
灌漑。
眩い朝日が、とうとうと流れる広大な水面を白銀の色へと美しく染め上げていた。
新しく掘削された大規模な主水路。それは集落の中央を一文字に貫き、目を見張るほどの勢いを帯びて大地を潤す巨大な流れとなっていた。
雪解け水を受け止めて激しく増水した近隣の川から、綿密な計算に基づいた最適な導線で水を引き込み、自然のなだらかな高低差(段差)を完璧に利用して広大な畑の隅々へと流し落とす。
それは、古い世界の人間たちが掘るような、ただの浅くて泥の詰まった不効率な溝などでは決してなかった。この最果ての集落の全体へと生命の息吹を行き渡らせる、完全なる「村の血管」そのものであった。
クルザードは、集落を一望できる小高い高台の上に堂々と立ち、口元に明るく快活な笑みを浮かべながら、その美しく張り巡らされたインフラの全体を静かに見下ろしていた。
水の動き。
人間の動き。
そして、一分の遅延もなく物資を運び続ける荷車の動き。
すべての事象が、彼の合理主義の計算の通りに、一本の澱みのない流れとして完璧に組み合わさって駆動していた。
「――ようやく、俺たちの設計した最も正しい『熱量と水流の循環』が、完璧な速度で流れ始めたね」
「ええ、本当に信じられない速度よ」
すぐ真横で、自慢のぶ厚い帳簿を大切そうに抱え込んだマチルダが、深く感服したようにその美しい首を縦に振った。
「お前の指示したあの区画管理の通りにね、農地の拡張速度が、事前の予測値を大幅に超えて最高能率で前進しているわ」
「水が滞りなく通っている限りね、大地の全細胞は一パーセントも死滅して腐ることはないからね」
クルザードは当然の事実を告げるように、ハキハキとした明晰な声を響かせた。中身のない無駄な軽口や、意味のないお世辞はただの一言も叩かない。ただ、状況の管理のために最も気さくで明確なトーンを崩さない。
「逆に、水分の配給の流れが一度でも中央から詰まって止まってしまえばね、どんなに肥沃な農地であっても一瞬で機能停止に陥って自滅するからね。だからこれは、組織の生命維持における最優先の『判断』さ」
彼の明るい陽気な瞳は、地平の先まで伸びる広大な農地の全体へと真っ直ぐに向けられていた。
青々と育ちつつある畑。
家畜たちの健康状態を維持する小屋。
高純度な物資を蓄える倉庫群。
そして、あのオーク節を量産するための大規模な燻製施設にいたるまでの全体。
この場所に築き上げられたすべての機能美はね、最上の清潔な「水」の存在を前提にして初めて、最高効率の歯車として完璧に回るものだからね。
だからこそ、彼はこれまでの建国のプロセスの真ん中において、何よりも先にこの灌漑水路の開通を最優先の軸として掌握したのだ。
敵を威圧するための無駄な兵舎の増強よりも先。
見栄のために膨大な金をドブに捨てる、あの古い城壁の肥大化よりも先。
まず何よりも先に、物と人の流れを豊かに回すための『最強の水路網の構築』。それこそが、資源の管理者としての彼の脳内が弾き出した、最も手戻りのない絶対的な結論であった。
水路の遥か下方では、腕利きのドワーフの職人たちが、全筋肉を活発に躍動させながら強固な石材を寸分の狂いもなく美しく積み上げていた。
「おい、そこだ! その中央の石枠の結合をな、一ミリの狂いもなく完璧に固定するんだよ!」
「熱量の対流が僅かにズレるだけでよ、下流への流量の数値が劇的に低下して大損を出すのが目に見えてるからな!」
最高腕のガルドが、自慢の分厚い腕を豪快にまくり上げ、汗だくになりながらも、地鳴りのような大きな怒鳴り声を響かせて現場の差配を全遂していた。
その岩石のような分厚い顔面には、これまでにないほどに心底楽しそうな、ドワーフの技術者としての誇り溢れる最高の笑顔が浮かんでいた。
「がははは! 認めざるを得ねぇな、小僧! これほどまでに緻密に計算され尽くした巨大な土木工事の工程はよ、不条理な王都の最高級のインフラを築いて以来だぜ!」
「自分の鍛冶の才能をな、一パーセントの無駄もなく最高値でぶち込めるんだ、本気で最高に楽しいじゃねぇか、オイ!」
ドワーフの技術者という生き物はね、自らの才能を100%完全に発揮できる正しい仕事の役割を真ん中に与えておくだけでね、こちらの想像を遥かに超えて、勝手にどこまでも進化し続ける最高の歯車だからね。
クルザードはその大局の心理の流れを完璧に理解しているからこそ、彼らに無駄な規制をかけるような不効率な真似は一切せず、最も自由に動ける最高の現場と資材を振り分けるのだ。そうすれば、彼らの生み出した最高の成果の利得が、何倍にもなって組織の真ん中へと勝手に返ってくる。極めてシンプルな合理の数式さ。
水路の分岐点沿いでは、魔法使いのドロテアが、体内の水属性の魔力を極限まで緻密に解放して、水流の速度を完璧にコントロールし続けていた。
「第三流路の水門、一分の遅延もなく全開放の流れを流すわよ!」
彼女の放った精密な流体制御に従い、透明に澄み切った最上の地下水の濁流が、新しく鋪装された側溝を伝って広大な畑の全体へと滑らかに広く行き渡っていった。
その圧倒的な水の恵みの躍動を前にして、集まった農民の職人たちが、一斉に歓喜の声を張り上げて爆発的な笑顔を浮かべた。
「おい、見ろよ! 本当に俺たちの畑の真ん中まで、最高の水が勝手に走ってきたぞ!」
「あぁ、嘘だろこれ! 自分の足で重いバケツを運ぶ手戻りなんて、ただの一パーセントも必要ないじゃないか!」
「すっげぇな……これなら、どんな過酷な日照りが来ようとも、作物が途中で枯れて飢え死にする心配なんて完全にゼロじゃないか!」
これまでの古い世界の農民たちの現実は、全く異なっていた。
毎日、深い井戸の底から不効率に水を汲み上げ、あるいは天からの不確実な雨の気まぐれだけに自らの命の予測を委ねるしかなかったからね。だから、一度干ばつの異変が暴走してしまえばね、農地は一瞬で内側から澱んで腐り、彼らはなす術もなく無残に全滅の大損を出すのが当たり前だった。
だが、クルザードの構築したこの一大交易都市の内部においては、そんな非効率な環境のバグは最初からただの一片すら存在してはいなかった。
俺たちの手でね、水分という名の最も重要な資源の全体を、最高効率の技術によって完全に『管理』しているからね。
流れを管理しているということは、すなわち、そこから生み出される食料の生産ラインのすべてを、我が方で100%完璧に掌握しているということさ。
『食料の主導権の完全なる支配』。その言葉の持つ本当の恐ろしさと覇権の価値をね、集まった民たちはまだ完全には理解していなかったのかもしれない。
だが――彼らの全細胞の肉体はね、その圧倒的な快適さの事実を、骨の髄まで理解していた。
ここにいれば、理不尽に腹が減って生存の危機に瀕することなど、ただの一秒もあり得ない。
ただそれだけの絶対的な合理の利点があるだけでね、人間という生物はね、古い王国の不条理を完全に置き去りにして、自らの意思でこの場所に強固に定住し、喜んで俺たちのルールに従うのさ。
「クルザード!」
泥を力強く踏み締める重い足音を響かせながら、虎獣人のティグリスが、自慢の長槍をしなやかに揺らしながら猛烈な速度で駆けてきた。その頭頂部にある立派な虎耳が、活気にぴくぴく、ぴくぴくと敏感に激しく動き回っている。
「東側の新規の開墾区画、水路が開通したその瞬間にね、もういつでも作物の苗を植え付けられる完璧な状態へと仕上がったよ!」
「想定の範囲内を上回る素晴らしい能率だね、ティグリス。人員の動きがこれほど急激に活性化した理由の流れは何だい」
「簡単な話さ、お前! 目の前を最高の水が通り抜けたその最初の瞬間にね、民たちの心の中に『あぁ、俺たちの明日の生活は100%確実に救われたんだ』っていう、最高の確信の火が灯ったからさ! 誰一人として指示を待つ手戻りすら出さずにね、大喜びで全細胞の筋肉を躍動させて手を動かし始めたのさ!」
クルザードは口元に明るく快活な笑みを浮かべた。
当然の結果さ。人間という生物はね、自らの頭脳で明日の生存への確実な未来の予測(希望)を掴み取った瞬間にはね、翌日の労働能率を極限まで跳ね上げて活発に駆動するものだからね。
逆に、どれだけ武器を構えて脅迫したところでね、目の前に理不尽な搾取の絶望しかない暗黒の環境ではね、人は理性のシステムを機能停止させて一歩も動かなくなるものさ。以前のこのアルフェイドの最果てに転がっていた流民の村はね、まさにその後者の最悪の機能不全を起こしていたのさ。
だが、現在のこの場所は違う。ここには、一片の揺らぎもない確実な未来の予測がある。だからこそ、人が増え、技術が残り、組織の防壁がさらに最強に強くなるのさ。
新しく外の地獄から流入してきたばかりの、かつては奴隷や流民だった小さな子供たちが、新設された主要水路の透明な流れの周りを取り囲みながら、目をきらきらと輝かせて元気いっぱいに騒ぎ立てていた。
「うわぁ、見て見て! 村の真ん中に、本物の綺麗なお魚の泳ぐ川が勝手に走っているぞ!」
「川じゃないよ、バカ! マティルデ先生の学校で習っただろ、これはクルザード様が俺たちのために作ってくれた、最高の『主水路』っていうインフラの仕組みなんだって!」
「すごいや! これなら毎日お腹いっぱいに美味しいお魚が獲れるかなぁ!」
響き渡る、子供たちの心からの温かい笑い声。
かつては栄養失調によって顔色を土色に悪く濁らせ、骨の浮き出るほどに痩せ細っていたあの子供たちの姿。それが今や、クルの仕込んだ最高の飯の効果によって、全細胞の健康状態を最高値に修復し、その両頬には瑞々しい健全な生命の赤みが美しくまとわれていた。クルザードはそれらの笑顔の全体を廊下から見つめながら、その明るい陽気な瞳を、ほんの少しだけ優しく目を細めて受け止めていた。
エルフの薬師ジェシカが、上品な足取りで滑らかに歩み寄りながら、彼の真横へと静かに並んだ。
「……またしても、お前の治療室に通ってくる不衛生の病人の数値がね、劇的な最低値を更新して減り続けているわよ、クル」
「水路の開通の効果が、最も正しい因果関係として現れている証拠だね、ジェシカ」
「ええ、その通りよ。お前が最初の一歩の段階でね、汚水の排出ルートを完全に分離したその『判断』の価値がね、何よりも圧倒的に大きかったのさ」
ジェシカは、透明な水面を見つめながら、一人の医療の専門家としての確信を口にした。
「人間が口に含んで胃袋を満たすための《飲水》のルート。そして、一日の重労働を終えた後の風呂や洗濯、体内の汚物を安全に外部へと流し去るための《排水》のルート」
「この2つの流れの結合をね、最初から一パーセントの混濁も許さずに完璧に切り離してシステム化しておくこと。ただそれだけの合理の工夫がね、地方の民を全滅させていたあの慢性的な疫病のバグを、内側から完璧に叩き潰すための、何よりも最強に強い絶対の防壁になるのさ。目立たないけれど、これこそが本当の最強の強さだわ」
死なない。一人の人的資源をも不効率に死なさずに、安全に春へと流れを繋ぎ続けること。その徹底された無菌化の衛生管理こそがね、集落全体の全体の戦闘スペックを最高値に維持するための、最も重要な基礎なのだから。
日の傾き始めた昼過ぎ。
大規模に拡張された料理屋の広大な炊き出しの分配所からは、昼の過酷な重労働を終えたばかりの職人たちの肉体を内側から温め尽くすための、最高の給食の数々が、一分の遅延もなく完璧な流れを伴って次々と配給されていた。
直火で皮の表面をサクサクに焼き上げられた、肉厚な海魚の塩焼き。
全細胞の活力を引き出す、熟成された特製味噌汁。
窯の熱によってふんわりと焼き上げられた、温かい最高の白い発酵パン。
あの災害級のオークの肉を、香木の煙で完璧に脱水管理した、至高の燻製肉。
そして、農地から収穫されたばかりの新鮮な山の野菜の、特製野菜煮込みの山。
石鍋から激しく立ち上る白い湯気、そして人間の本能を胃袋の底から直接支配するような最高の香りが広場を満たしていく。
「飯の分配のラインを流すぞ! 全員一列になって順番に真っ直ぐ並びなさい!」
ステファンが、よく通る快活な声を張り上げて民たちの動線を滑らかに誘導していく。
集まった農民の職人たちは、木椀を両手で大切そうに包み込みながら、口々に心からの温かい笑顔を浮かべて大声を上げて笑い合っていた。
「おい、最高の飯の時間だ! 今日はあの肉厚の海魚の塩焼きの配給だぞ!」
「がははは! スープの深いコクに、この香ばしい塩気! 昼間だっていうのに、クルの作ったあの最高の新酒を樽ごと持ってきて煽りたくなる美味さだぜ!」
「こら、まだ昼の実務の工程が残っているだろ、バカザル! 飲酒の不効率はクルの合理主義に一番厳重に禁止されているのを知らないのか!」
広場の全体が、人間の心からの暖かな笑い声によって包み込まれていく。
以前のこの最果てのボロ廃屋の周囲ではね、絶対にあり得ないはずの美しい調和の空間。前まではね、すべての民が明日の生存への恐怖から現実に追いつめられ、心の中に一パーセントの他者への余裕すら持てずに、理不尽な喧嘩ばかりを繰り返していたからね。
だが、現在のこの場所は違う。ここには、何年でも品質を維持できる無限の保存食の備蓄がある。
体内の水分を満たす、最高の清潔な水がある。
そして、各自の才能を最高値に発揮して確実に対価を得られる、完璧な仕事の役割の振り分けがある。
基礎の土台がこれだけ無駄なく完璧に満たされているからこそね、人は心からの笑顔を浮かべて、互いに協力し合うことができるのさ。
クルザードは厨房の真ん中に立ち、大鍋の熱の流れを精密に調整しながら、自らの明るい陽気な瞳を、手元の数字のデータへと向けた。
「……スープの調味に必要な、あの純白の塩の在庫の消費ペースがね、事前の計算よりも僅かに早くなって減少しているね」
その言葉を耳にした瞬間、カウンターの奥で羽ペンを走らせていた大商人のヴァレリアが、一人の商人の冷徹な本能で即座に鋭い応答を返した。
「――分かっているわ、クル。次の一手の『判断』の流れとしてね、明日から新しく出発させる他国への隊商の物資の構成比率ね、純白の塩の精製ルートの搬出を最優先にして完璧に組み替えるわよ」
「それだけでなく、あの無限の資源を交易するための、海側の常温輸送ルートの舗装幅もね、さらに何倍にも広く拡張したいわね」
「何故だい、ヴァレリア。外への流通ラインに、何か新しい動きでも感知したかい」
「感知したなんてもんじゃないわよ、お前。俺たちの作ったあの至高の『魚節(削り節)』の価値の噂がね、すでにアルフェイドの中央の巨大な市場の商人たちの間でね、爆発的な奔流となって売れ始めて広まりまくっているからよ!」
ヴァレリアは口元を不敵にニヤリと釣り上げて、心底楽しそうな商人の笑顔を浮かべた。
「『あの最果ての崖の上の村で作られている保存食のシステムはね、世界の歴史の常識を根底からすべて破壊するほどに異常極まりない領域に化けている』ってね」
「富の流れの本質を嗅ぎつけた、目の高い大商人たちがね、自慢の荷馬車を止めて降伏の商談を持ちかけに、怒涛の勢いでここへ向けて流れてきているのさ。とんでもない覇権の価値よ!」
当然さ。クルザードの構築したこの長期保存の技術。
香木の煙を操る、あの燻製小屋の乾燥。
熟成された最高の麹による、最高の味噌と醤油の量産。
人間の肉体を温め尽くす、至高の酒の醸造。
海の旨味を閉じ込めた、魚節やオーク節の加工。
そして、それらを一パーセントの劣化も許さずに常温で何年も維持する、あの高度な簡易冷却室のシステム。
そのすべての最先端のインフラの歯車がね、一分の手戻りもなく完璧な衛生管理のもとで複合的に噛み合って回っているからこそ、ここの物資の腐敗率の低さはね、外の世界の常識から見れば100%絶対にあり得ない最高値を記録しているのさ。
腐らないということはね、どんな過酷な遠距離の物流であってもね、何の手戻りもなく安全に外へと富を流し出せるということさ。物流のサプライラインがどこよりも強固に駆動している村はね、それだけで周辺のすべての国を完全に呑み込んで膨らみ続けるのさ。逆に、そこが死んで機能停止している古い国はね、内側から一瞬で完全に止まって死ぬのさ。クルザードはその世界の真実を、最初から完璧に見通していた。
「主水路の完全なる開通によって、一回ごとに船やゴーレムで運べる輸送量の絶対数はね、さらに数百倍の能率へと跳ね上がるからね」
マティルデが帳簿の数字を更新しながら、その大局の先を見据えた言葉を繋いだ。
「……確実よ、お前。この豊かさを一目目撃したことで、明日からは外から流入してくる『移住希望者の絶対数』がね、またしても過去最高値を大幅に書き換えて増えまくるわよ」
「ああ、何の問題もないさ。一分の躊躇もなく、生きたまま完璧に全員を受け入れるよ。当然の判断さ」
「本当に、それほどの巨大な人口の質量を抱え込んで、食料や寝床の余裕はあるの?」
「余裕なんてものはね、他者から与えられるのを待つ不確実なものじゃないさ。足りないなら足りるように、俺の頭の中の計算で今すぐ新しい構造を『作る』だけだからね。心配いらないよ」
クルザードは口元に明るく快活な笑みを浮かべ、一片の迷いもなく即答した。
最前線に立つティグリスが、その一片の揺らぎもない彼の佇まいを見るや夕方、口元を大きく釣り上げて豪快に笑い出した。
「がははは! 本気で一パーセントの迷いも躊躇も宿っちゃいないね、お前は! そのブレない合理主義、私は本気で大好きだよ!」
「迷ってその場に機能を停止して立ち止まることこそがね、組織の未来の全体の流れを中央から完全に破壊する、最も非効率で手戻りの多い最悪の大損だからね。ただ前へ進める、それだけさ」
日の傾き始めた午後。
クルザードは、新しく完成した集落の最大の心臓部――「巨大な新型水門」の防壁の正面へと歩みを進めていた。
地脈の岩盤を一瞬にして隆起させて作られた、見事な石造りの超大型構造。
ガルドの長年の金属知識が細部まで完全に具現化された、木製の精密な制御盤。
そして、水圧の暴走を一瞬でも完全に制動するための、特注の最高級のドワーフ製金具の数々。
「がははは! ついに完成だぜ、小僧! 我が一族の誇りと技術のすべてを込めた、最強の新型水門のお披露目だ!」
最高腕のガルドが、自慢の鉄槌を肩に担ぎながら、誇らしげにその分厚い胸を大きく張った。
「開くぞ、全員! 衝撃の流れに一パーセントも足をすくわれるんじゃないぞ!」
ガルドの分厚い両腕によって、巨大な金属製のハンドルが、滑らかな回転の音を立てて力強く回された。
次の瞬間、大気を物理的に圧し潰すような、凄まじい水圧の重苦しい重低音が周囲に響き渡った。
ズズズン、と水門のゲートが最高速度で全開放される。
ドォン! と、海岸全体を内側から爆破したかのような猛烈な水音の轟音と共に、雪解け水の濁流が一気の奔流となって、新しく舗装された水路網の全体へと一直線に放たれていった。
透明な水の流れが、乾いていた広大な平地のすべてを一瞬にして瑞々しく濡らし、農地の全細胞へと滑らかに行き渡っていく。
その奇跡のような近代的なインフラの開通の光景を前にして、居合わせた何百人もの農民たちが、驚愕のあまりに息を呑んでその場に完全にカチリと硬直した。
「……す、すげぇ……本当に、俺たちの畑の目の前まで、最高の水が一瞬でやってきたぞ……」
「これなら……これなら、畑の全部の区画にいながらにして、一パーセントの手戻りもなくすべての作物を完璧に育てられるじゃないか……!」
一人の老人の民の男が、泥の中に膝をつきながら、我が子のように苗を見つめて大粒の涙を流して号泣していた。
「こんなとんでもねぇ仕組み、俺の長い人生の記録の中でもな、本気で一度も見たことがねぇよ……!」
それは、誇張でも何でもない、彼らにとっての剥き出しの真実の叫びであった。なぜなら、この最果ての辺境の土地においてね、物事のすべての繋ぎ目を計算して水を引く『灌漑技術のインフラ』そのものがね、世界の常識では絶対にあり得ない最高位の知識だったからね。
王都の中央の傲慢な権力者どもはね、民を奴隷として搾取し続けるために、高度な技術や知識の利権を自分たちの中央だけで厳重に「独占」し、地方の底辺の民には一パーセントの知恵の資源も流そうとはしなかったからね。だから、辺境はいつまで経っても脆弱で弱いまま、泥を啜って死ぬしかなかったのさ。
だが、クルザードの作ったこの場所は根本からすべてが違っていた。
彼は手に入った高度な技術の数々をね、自らのプライドのために隠すような不効率な真似は一パーセントもしないさ。集まったすべての民に向けて、学校の教育を通じて一から完璧に「教え、広める」のさ。
技術を独占して他者を脅迫する古いやり方なんかじゃない。圧倒的な合理の工夫をすべてオープンにして、世界中の優秀な人材と技術の資産を、この場所へ向けて勝手に吸い寄せ、吸収し続ける最強の『技術吸引のシステム』。その確固たるデザインが、ここには完成していた。
「学校の読み書き班の駆動を開始するわよ! 全員、一分の遅延もなくこっちへ一列に真っ直ぐ並びなさい!」
マティルデの、黒板の教壇から響くような鋭く通る声の差配が飛んだ。
彼女の指示に従い、学校で文字と数字の形をインプットされたばかりの子供たちの集団が、簡易な木板を両手でしっかりと握りしめながら、元気いっぱいに水門のすぐ横へと走ってきた。
「第一流路の正確な水量の数値を測定するわよ! 自分の目で、石板のメモリの形を100%完璧に記録しなさい!」
「数字の計算の流れを誤るんじゃないぞ! 覚えたての算術のスペックを、ここで最高値に機能させるのさ!」
子供たちが、拙くはあるが美しい一本の線で、木板の上へと水流の正確な数値、時間の推移、そして担当する区画の座標を、滑らかな手際で次々と記録していった。
彼らが学校でインプットした高度な教育のインフラがね、そのまま何の手戻りもなく、この新農地の現場の維持を回すための最高級の「歯車(実務)」へと、100%完全に直結して機能していた。だから、この街の生産性は世界一強いのさ。
「……勉強という名の、あの文字の形のインプットはよ……本当はこんな風に、俺たちの毎日の腹を満たすための最高の『道具』として、完璧に応用して使う仕組みだったのか……」
近くで作業をしていた若い農民の男が、子供たちのその見事な手際を目にして、心底震えるような声を漏らした。
マティルデが、その男の呟きを聞くや夕方、上品に長い銀髪をしならせながら、口元を不敵にニヤリと釣り上げて素晴らしい笑みを浮かべた。
「ええ、完璧にその通りよ、お前。文字や数字という概念はね、王都の気取った偉い人たちがね、自らの身分を飾るための無駄な『装飾の記号』なんかでは最初からただの一片すらもないのさ」
「この最果ての地で生きるすべての民がね、一パーセントの不条理に騙されることなく、自分の力で飯を腹一杯に食って生き残るための、世界で最も強固な最強の『生産の道具』そのものなのよ!」
その言葉の本質を耳にしながら、クルザードは口元に気さくな笑みを浮かべ、彼女の放った最高の至言に対して静かに首を縦に振って深く頷いた。
夕方。
クルザードは一人、新しく舗装された主要水路の岸辺に立ち、ハキハキとした足取りで歩みを進めていた。
水門から放たれた透明な流れの全体が、沈みゆく揺れる赤い夕日の光を美しく反射して、きらきらと黄金色に輝いている。
畑の至る所ではね、今日手に入ったばかりの新鮮な作物の苗の植え付けの工程が、すでに最高速度のラインを流れて開始されていた。
獣人の一族。
人間。
エルフ。
ドワーフ。
本来であれば殺し合うはずの雑多な命のすべてがね、同じ一つの泥の中に自らの手を深く差し入れ、最高の笑顔を浮かべて同じ役割の流れを完璧に連動して動かしていた。
「……はは、真横で見届けていて、本当にこれまでにないほどに不思議で奇妙な光景ね、お前」
拳闘士のステファンが、革製のグローブをはめた手をさすりながら、楽しそうな声を漏らした。
「昔のアルフェイドの汚い裏通りであればよ、目が合った瞬間に刃物を引き抜いて喧嘩を始めていたはずの連中がな……なんでこんな風に、お前の真ん中で肩を組んで一緒に真面目に泥仕事に熱中してやがるんだ」
「極めて簡単な話さ、ステファン。ここに、どこよりも腹一杯に満たされる最高の『飯の安定化』が、完璧に維持されているからだよ」
クルザードは口元に明るく快活な笑みを浮かべ、気さくなトーンのまま、ハキハキと言い放った。
「人間という生物の本能はね、腹が理不尽に減って極限の飢餓状態に陥ればね、生き残るために他者の資産を力ずくで略奪する『最悪のノイズ』を駆動させるものだからね」
「だが――その胃袋の全細胞が完璧に満たされて腹の余裕を得ればね、人は古い憎しみや偏見のバグを完全に置き去りにして、互いに手を取り合って未来の富の流れを回すために、完璧に『協力』できるようになるのさ。これがすべての基盤さ」
シンプルではあったが、一パーセントの非の打ち所もない、冷徹なまでの圧倒的な合理の具現化。
遠くの方角から、集落の全体へと向けて、心地よい夕食の始まりを告げる強固な「鐘の音」の響きが、澱みなく広く拡散していった。
一日のすべての過酷な重労働を完了させた何千人もの民たちが、心地よい疲労をその肉体に纏いながら、心からの温かい笑顔を浮かべて最高の料理屋の方角へと軽やかな足取りで帰還していく。彼らの表情には、生存への恐怖などただの一パーセントも宿ってはいなかった。
街の全体が、新時代の幕開けに向けて、完全に力強く駆動して生きていた。
クルザードは静かに、主要水路の澄み切った水面を見つめ直した。
絶え間なく走り続ける、透明な水流の?動。ただの一秒もその場に淀むことなく、次の区画へと向けて完璧な速度で行き渡っていくその流れ。
それこそが、何よりも重要な真実の本質そのものなのだ。
物事の流れというものはね、一度でもその場に不効率に機能を停止して立ち止まってしまえばね、一瞬にして内側から澱んで腐り果てて死滅するものだからね。
社会の経済も。
働く民の命の駆動も。
そして、この大地を潤す最上の水分も。
一分の手戻りもなく、最も正しい最高効率のルートを流れている限りね、俺たちは世界中のどの大都市よりも強固に、永遠に生きて進化し続けることができるのさ。
「――よし、方針は決まった。全体の水路網の開通が完了したならね、明日からは、この流れの勢いをさらに太く広げて、南側の未開の区画全体の開墾の手順へと一気のラインを流すよ」
彼の真横を一歩の踏み込みで歩み寄ってきたマティルデが、その一片の躊躇もない言葉を聞くや夕方、一人の政治の専門家の顔で半分呆れ果てたような深い感嘆の溜息を漏らした。
「……ちょっと、待ってよ、お前。これほど巨大な主水路を開通させたその日の夜にね、もう次の領土の規模をさらに何倍にも広く『拡張』させるための都市計画の数式を平然と真顔で弾き出すなんて、本当に止まるという概念を知らないのね」
「当然さ、マティルデ。外の地獄からはね、明日からもさらに多くの新しい移民の命の流れがね、生存を求めてこの場所へと向けて怒涛の勢いで流れ込んでくるからね」
「人がこれだけ増え続ける以上、現在の食料自給の絶対量のままではね、いずれ消費のスピードに耐えきれなくなって中央から完全に機能を喪失して自滅するからね」
「ならば、彼らがこの場所に辿り着くよりも前にね、俺の手でそれを遥かに凌駕するだけの最高の農地と水路の仕組みを、先に最高効率で増やして整えておくだけさ。これ以上に手戻りのない合理的な判断はないだろ?」
最前線に立つティグリスもまた、口元を大きく釣り上げて、その黄色い瞳を嬉しそうに細めて笑った。
「がははは! 本気でただの一秒もその足を止めようとはしないね、最高の病気だよ、お前は! どこまでも付き合ってあげるよ、お前のその最高の判断の盾となってね!」
夜。
小高い高台の上に再び立ち、クルザードは月明かりを美しく反射してきらきらと輝く広大な交易都市の全体を、静かに見下ろしていた。
新設された主要水路の全体が、まるで一本の巨大な光り輝く龍の如く、街の真ん中を美しく貫いてきらきらと輝いている。
至る所から溢れ出てくる、橙色の最高の灯りの絶対数。
整然と区画整理された、最高の農地の大地の広大さ。
大鍋から立ち上る、最高の味噌と魚節の香ばしい飯の煙。
そして、夜の帳を温かく包み込むような、何千人もの民たちの心からの深い笑い声。
すべてが完璧な因果関係の線として繋がって駆動していた。
そして明日も――古い街道の不条理な暗闇の向こう側からはね、自らの意思でこの場所への本格的な移住を求めて、無数の新しい人的資源の命の流れが、完璧な流れを伴って美しくここへ向けて流れ込んでくる。
不条理な飢えに追い詰められた人間。
自らの才能を発揮できる正しい仕事の役割を求める人間。
そして、理不尽な搾取の澱みから逃れて、人間として安心して生き残りたいと願うすべての人間。
俺たちの作ったこの最高の居場所はね、彼らすべての命の流れをね、一分の出し惜しみもなく無条件で最高効率で受け入れて居場所を与え続けるのさ。
なぜなら、彼らの胃袋を満たすための無限の保存食(飯)があるからね。
全細胞の病気を防ぐための、最高の清潔な水があるからね。
そして何より――すべての才能を最高値に振り分けて動かす、俺自身の一片の迷いもない完璧な『合理の判断の流れ』が、この場所の真ん中に最初から強固に駆動し続けているからね。
クルザードは静かに自らの目を閉じ、耳の奥から響いてくる、とうとうとした主要水路の流体の響きにその全神経を集中させた。
ザァァ、ザァァと暗闇の広場を濡らし続ける、その力強い流体の重低音。
それはもう、常人の耳に聞こえるような、ただの辺境の小さな小川のせせらぎの音なんかでは最初からただの一片すらもないのさ。
世界のすべての不効率な澱みを完全に中央から呑み込み、新たなる新時代の偉大なる最強の“国家の誕生の姿”を告げる、完全なる歴史の始まりの地鳴りの響きそのものであった。




