エピソード4 ー痕跡ー
-----
初アルバイトから一週間が経った。
そのうち3日出勤させてもらい、まだまだ学びながらといったところ。
早く慣れてリサさんをはじめとするお店のみんなの力になりたいところだ。
学院ではそれといって変化はなく、相変わらず4人で行動することが多い。
たまにそこにツヅリが加わることが増えた程度だ。
テオドラも仲が悪いわけではないのだが、カフェ以降は特段共に行動することもなく今に至る。
それよりも学院は来月に迫っている豊穣祭の話題で持ちきりだ。
なんでも豊穣祭で一緒にお祈りをした男女は結ばれるという言い伝えがあるそうで。
女性はそういうの好きだからな。
意中の相手が居る男子生徒も躍起になっているのが現状だ。
(主もリュカ殿を誘えばいいものを。)
(最近遠慮なくなってきたね、タロット。)
(撲殺か浄化の選択をさせられましたからにゃ。)
あの出来事は自分を落ち着かせるためだったとはいえ、タロットにとっては大きなトラウマとなっているらしい。
まあ確かにリュカが誰かと豊穣祭を回るという話はまだ耳に入っていない。
とはいえ挨拶があると言っていたから、運営側に居る可能性もある。
そうなればだれかと祭りを回ることも難しいだろう。
(素直じゃないにゃ。)
(うるさいなあ。今日はこれから狩りに出るから一旦おいておくよ。)
そう、ようやく冒険者としての初陣だ。
先週は初アルバイトの疲れでできなかったからな。
今日から本格的に始動だ。
といっても夜中にゴブリン50匹狩るなんて、正直タロットだけでも余裕でできる。
群れで寝ているところを一網打尽って具合で。
問題なのはその発見方法だけだな。
夜間の閉まっている門を抜け出すのは影移動でどうにでもなる。
そのまま誰にも見られないように移動しつつ探索が良いだろう。
ということでこの時のために買っておいた黒い装備を身に着ける。
暗闇に乗じるなんて朝飯前だ。
(夜だけどにゃ。)
-----
影に潜り無事に王都の外に出ることに成功。
このまま誰にも遭遇しないように潜って移動しなければ。
街道脇の木々の影の中を走ること少々。
目的の森へと到着した。
とはいえサーチ手段がないんだよなあ。
闇属性魔法の悪いところだ。
移動や攻撃に特化しすぎて、他の行動には大きく制限をかけられている感じだ。
地道に影に違和感がある部分を探していくしかないか。
動き回って20分ほどだろうか。
目当てのゴブリンの群れを発見。
夜中は寝てしまっているのが好都合。
これだけ暗い森の中ならば影ばかりということで、攻撃手段には困らないってな。
シエスタの発射装置を貫いたのと同じ要領で、数はゴブリンと同数。
耳さえ欠損していなければ大丈夫だし、ひとまずすべての個体の胴を串刺しに。
いくつか断末魔をあげる個体もいたが、基本即死。
あとは耳を刈り取るだけの簡単なお仕事だ。
1つ目の群れで数は12。
まずまずといったところだろう。
昼間ならこれが同時に襲い掛かってくるとなると、なかなかに難易度が高い。
それこそパーティでも組んでいないと苦戦は必至だな。
俺は夜襲をかけるだけなので楽勝だ。
体感で開始から2時間ほどだろうか。
3つ目の群れを撃破し、ようやく戦利品の耳も30を超えた。
移動しっぱなしなので多少休憩を入れよう。
ちょうどいい岩が近くにあったので着席。
持ってきていた水分を摂り、一息ついていると。
(主ー、あそこの洞窟、変なにおいがするにゃ。)
タロットが洞窟を発見。
言われるまで全然気づかなかった。
暗視スキルで様子をうかがうも、さすがに内部までは見えないか。
変なにおいというのが気になるが、入ってみなければ理由もわかるまい。
残り20弱のゴブリンは後回しにして、ひとまず洞窟へ突入。
しばらくするとタロットの言うように鼻につく嫌な臭いが漂ってきて鼻をふさぐ。
物音をたてないように奥に入っていくといびきのような音が聞こえはじめ、最深部であろう大きな空洞状の箇所が見えてきた。
岩陰から中の様子をうかがうと、3匹のオークがいびきをかいて大の字で寝ているようだ。
オークはもう少し上のランクの獲物だが、さして問題はないな。
オーク特融のにおいに鼻がやられそうになりながらもゴブリンと同じように攻撃開始。
しかし脂肪のせいか深くまで刺すことができず、1体しか仕留めることができなかった。
いきなりの攻撃に驚いて起きたオークたちは声にならない声をあげながらこん棒をもってこちらに走ってくる。
まあ貫けなければ斬ればいいだけのことだ。
影で鋭利な刃を作り出して一振り、二振り。
でかい図体が大きな音を立てながら崩れ落ちた。
(さすが主ー、この程度の雑魚では相手になりませんにゃ。)
(この程度なら同時に1万居てようやくかな?
まあその場合先ににおいにやられるだろうけど。)
(ごもっとも。)
しかしオークはどこの部位をもっていけばいいのだろうか。
先に依頼書を確認しておくべきだった。
とはいえ遭遇したのは偶然だしな。
分からないのでとりあえず全部もっていくとしよう。
「『ブラック・ボックス』。」
闇属性版アイテムボックスと思ってもらえれば。
吸い込み方がブラック・ホールのそれなので少々見た目は悪いが保存に関して問題はない。
問題があるとすれば魔法を目立つ箇所で使えないのでどこで取り出すか、だな。
さて余計な時間を食ってしまった。
空も明るくなり始めそうな頃合いだ。
急いで残りを終わらせてしまうとしよう。
その後2つの群れを討伐し、なんとか日の出にはぎりぎり間に合った。
とはいえ王都からかなり離れてしまっており戻るころには完全に日が昇っていそうだな。
なれば急ぐ理由もなし。
適当な薬草を採取しながら戻るとしよう。
-----
案の定、王都についたのは朝になってからだった。
潜る影もないのできちんと門から入り、その足で冒険者ギルドへ。
受付で依頼を受け、その場で5度の達成。
無事Eランクへの昇格をはたし、くたくたになりながら寮に向けて歩いていると向かいからリュカが歩いてきていた。
「おはよう、リュカ。どこかにおでかけかい?」
「アルスさん、おはようございます!
ええ、これから例の件でまた打ち合わせです。」
「休みに大変だね、頑張って!」
「ありがとうございます!
アルスさんはお疲れのようですし、ゆっくり休んでくださいね?」
「はは、そうさせてもらうよ。」
何があったかまでは聞かないあたりリュカの優しさがありがたいね。
その場で挨拶を交わして再び帰路についた途端、リュカに再び呼び止められた。
「アルスさん!
あの暗い路地から魔法の痕跡を感じるのですが、何かご存じですか?」
「いや、今は冒険者ギルドからまっすぐ帰ってきてたから分からないな。
魔法の痕跡なんて分かるんだ。」
「ええ、昔から歪みのようなものを感じるんです。
何か嫌な予感がするので、一緒に来ていただけませんか?」
当然1人で行かせるわけにもいくまい。
頷いて先導し、薄暗い路地へと入る。
確かに人目に付きづらいこの場所で魔法の痕跡があるというのは違和感がある。
それこそ、誰にも見つからないようにするために、この場所を選んだかの・・・よう、な・・・。
「そういえばここ最近、王都周辺で『魔法使い狩り』が出てるらしいよ。
なんでもすでに被害者は2桁にも及んでるんだって。」
まさか・・・!!
リュカの手をとり、急ぎ足で路地を進む。
掴んだ手が属性相性によりびりびりと痛みをあげているが、それどころではない。
「次の道を左です!」
声に反応し、路地を左に曲がった瞬間。
「ひっ・・・!」
リュカが小さな悲鳴をあげた。
壁には大きくBの文字。
そして、血まみれで倒れるベントの姿があった。
☆評価やブックマーク登録で応援していただけたら嬉しいです!
よろしくお願いいたします!




