エピソード5 ー確信ー
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第一発見者となった俺たちは魔法師団が到着までにリュカが回復魔法を。
そして俺は現場の調査を行った。
リュカのおかげでなんとか一命をとりとめ、ベントは病院へ搬送。
魔法師団からの事情聴取、気づいた点をまとめているところだ。
事件現場をざっと調べたところ、争った形跡はなかった。
つまり一方的にやられたということになるのだが、この路地の奥でだ。
そもそもなぜこんなところに居たのか。
そこも気になる理由の1つだな。
他に気になるのは、やはり壁に大きく書かれたBの文字。
これはいったい何を現しているんだ。
情報が足りなすぎる。
「失礼、通してくれ。」
魔法師団からの事情聴取を受けていると、今度は魔法騎士団の面々が現れた。
その先頭に立っている水色髪の凛々しい女性はおそらく、セオドアの姉のテラさんだろう。
「魔法騎士団副団長のテラ・ローラングレイスだ。
被害者の早期発見、ご苦労だった。」
「アルスです。
セオドアにはクラスメイトとしていつもお世話になっております。」
「なんと、セオの同級生か。
家訓の通りに美しくあろうと頑張りすぎてしまう子だが、根はとてもいい子なんだ。
仲良くしてやってくれると嬉しいよ。」
「はい、ありがとうございます。」
「それで、今回の件だが・・・。
いや、ここではなんだ、場所を移そう。」
そう言い詰所へと連れていかれることに。
リュカは打ち合わせが外せないとのことでそちらに向かっていった。
「今回の被害者は君の友人という確認もとれた。
無関係というわけでもないだろうし、友人のためにも真相の究明に力を貸してほしい。
正直なところ、この一件はわたしたちのほうでも情報不足でね。
少しでも情報がほしいというのが本音だ。」
こちらも情報が欲しかったところだし、互いに利のある話だ。
頷くと被害者の写真と情報がまとめられたファイルを渡された。
1つ目から目を通していく。
『1人目の被害者 オードリー・ファンドス 魔道具店店員 Oの文字』
『2人目の被害者 ゼルタ・シャンバラス 魔法杖販売員 ℤの文字』
『3人目の被害者 ヨルタ・フォーゲンス 魔道配達員 Yの文字』
「ここまで見ると、残されていたアルファベットは被害者のイニシャルのようにも見えますね。」
「そうなんだよ。
我々もその線で追っていた。
ただ、4人目からおかしくなってくる。」
『4人目の被害者 ニーランド・アンバーマン 魔道技師 Nの文字』
「ニーランドの綴りは【Kneeland】。
つまりここまでの推理通りであるならば、Kのはずだ。
それ以外は基本的にはイニシャル通りなんだが、他にも違和感のある時がいくつかある。」
言われて名前とアルファベットを確認する。
『8人目の被害者 フィリップ・セスタ 魔道研究者 Fの文字』→綴り【Philip】
『14人目の被害者 ハリード・サウスタ ギルド魔法部門職員 Hの文字』→綴り【Khalid】
そして今回、23番目の被害者であるベント・アンドロッソ。
残された文字はBで、綴りは【Vent】。
「確かに耳で聞くと残された文字が正しそうに聞こえますが、綴りに興すと別の文字になりますね。」
「そうなんだよ。
だから正直誰が狙われるのか皆目見当もつかなくてな。
猫の手も借りたいということで、君にも話したというわけさ。」
「綴りはともかく、残る文字は、AとRとSです・・・か・・・。」
そこで気づいてしまった。
いや、気づきたくはなかったのだが、何かに気づいたことをテラさんに気づかれた。
「何か分かったのか?!」
「いえ、正直怪しまれるので言いたくはないのですが。」
「些細なことでも大丈夫だ、なんでも言ってくれ!」
「その・・・残った文字を続けて読むと・・・【Ars】。
つまり僕の名前の綴りです。」
これは偶然か?
それとも俺に罪をかぶせようとする犯人の狙い・・・?
「偶然にしてはできすぎだな。」
「そう思います。」
「つまり犯人はお前に罪をかぶせようとしている可能性があるわけだ。」
「自分で言うのもなんですけど、疑ったりはしないのですか?」
「正直に言うと疑っているさ。
だが、証拠もないうちから決めつけるのはよくないからな。
それに何より、自分が犯人なのであれば自分の綴りなんて気づかぬふりをするだろ。」
腕を組みながら、嘘であの驚いた顔はできん、と付け足すテラさん。
思っていたよりも柔軟な考え方の人で良かった。
危うく身柄を拘束されるのではないかくらいまでは思考がいってたぞ。
「とにかく、Aの君はもちろん要注意だ。
そしてRとSのイニシャルをもつ者が身近にいる場合は、すまないが守ってやってくれ。」
「分かりました。」
お礼を言われ、その場は解散。
疑われる結果となってしまったが、ひとまずは情報収集はできたかな。
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翌日、昨日の一件のことをずっと考えながら登校。
自分は範囲内とはいえ、RとSは身近に居ないんだよな。
近いのは3人だが、リュカは【Lucas】、ロベルトは【Lloberto】、セオドアは【Theodore】だ。
いや、待てよ。
何かを見落としている気がー
「きゃああああああああああああああああ!!!」
大きな悲鳴に振り向く。
(タロット!!今のリュカの声!!どこからだ!)
(校舎裏にゃ!)
「ちっ、真逆じゃねえか・・・!飛び降りたほうがはええ!」
言うなり窓を開け、3階から飛び降りる。
きっちりと受け身を取り、校舎裏のほうへ走る。
角を曲がると、リュカが誰かに回復魔法をかけていた。
「しっかりしてください!!」
駆けつけるとかなり派手にやられている女子生徒の姿。
いつも扇子をもっている右手はあらぬ方向へと折れ曲がり、左足に関しては見ていられない状態だ。
「アルスさん、この傷はわたしの魔力だけでは完全に治しきれません!!
魔力を貸してください!!」
「分かった、いくらでも使ってくれ!」
言いながら手を差し伸べると、急いでその手をとるリュカ。
その目からは大粒の涙がこぼれていた。
誰だ。
こんなにもいい子を泣かせたやつは。
誰だ。
俺のクラスメイトに手を出したやつは。
リュカに触れられ魔力を大きく吸われ、左腕の感覚がもはやなくなっていることなどどうでもいい。
犯人への怒り。
そして危険に気づけなかった自分への怒り。
今までこんなにもどす黒い感情にのまれそうになったことはない。
絶対に許さねえからな・・・!
地面に書かれたSの文字。
耳で聞いた文字で人のイニシャルを変えるんじゃねえ。
これで確信した。
次に狙われるのは、俺か、ロベルト王子か、リュカだ・・・!
俺の規格外の魔力の半分ほどを持っていき、傷がようやくすべてふさがった。
処置したリュカは疲労により汗だくでふらついてしまったので保健室に連れていくとして。
到着したセラさんの慌てようが、目について離れなかった。
俺も先ほどよりは気分が落ち着いてきたとはいえ、まったく晴れない。
あの感情は魔神アスタロトの負の部分だな。
今はかわいい黒猫に化けてはいるが、本来は人間の負の感情を操作したり、知的に人を腐敗させる性質を持っている。
使い魔に堕ちたとはいえ、本当に人の身に余る力だ。
タロット自身無意識なのが困りものだが、危うく堕ちかけた。
(ごめんにゃ主ー・・・。)
(タロットのせいじゃなくて、俺の精神力の問題と犯人のせい!
だから気にすんな。)
顔を半分だけ影から出して申し訳なさそうにしているタロットを撫でながら影に押し込む。
すると、腕の端末が通知音を鳴らした。
「誰だってんだこんな時に。」
通知を開くと。
【 シェリー・マックジェラルド から
メッセージが届きました。
少し、面を貸せ。 】
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