エピソード3 ー給仕ー
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あの決闘以降シエスタとは多少ぎくしゃくしているものの、そのほかのメンバーに関しては変わらず接してくれていた。
それどころかツヅリに関しては以前よりも距離が縮まった気がする。
自分が思っていたほど闇属性魔法への偏見はないようで安心した。
とはいえあまり公にしたくはないのも事実。
力の使いどころは見極めなくてはならないだろう。
そんなことを考えているうちに今日の授業も終了。
入学前に習っていたこととはいえ、改めて教われる機会がなかなかないのも事実。
復習と思ってしっかりと受けているので少々疲れてしまった。
「やあアルスくん。
今日このあと、良かったらみんなでお茶でもどう?」
帰り支度をしていると、ツヅリから声をかけられた。
友達と放課後にお茶だなんてあこがれていた光景の1つだ。
断る理由もないので二つ返事で承諾。
引っ張られるがままにカフェへと到着。
どうやらセオドア、ベント、リュカも一緒のようだ。
セオドアやツヅリの御三家としての出自の話を聞いていたのだが。
ツヅリが急に何かを思い出したかのように話を切り出した。
「そういえばここ最近、王都周辺で『魔法使い狩り』が出てるらしいよ。
なんでもすでに被害者は2桁にも及んでるんだって。」
「その割には魔法師団とかを見ないけど。」
ベントが早速釣られた。
確かに王都周辺での事件が多発しているのであれば、警備の巡回くらいはしそうなものだ。
「たしかにお姉さまも最近お忙しそうにしてらっしゃいますね。」
テオドラが扇子を顎に当てながら考え込む。
王国魔法騎士団副団長であればその手の話題につきなそうなものだが。
とはいえ自分に弟か妹が居たとして、それを伝えて不安がらせるようなことは俺ならしないな。
気を付けてほしいとは思うが。
「まああたしも直接見たわけではないから、あくまで噂の域をでないんだよねえ。」
「でもそれが本当なら怖いですね。
狙われる人がわかっていれば守りようもあると思うのですが。」
ツヅリもリュカも詳細は降りてきていないようだ。
御三家や聖女ですら知らないのであれば、1人で王都に来た俺に知りようがない。
ひとまずは根も葉もないうわさ、ということでいいだろう。
「まあなるべく1人での行動を減らすように心がけるくらいしか対策できなそうだな。」
「ですわね。
家やお姉さまのほうから何か情報があれば、すぐにお伝えいたしますわ。」
もともとそうなのかもしれないが、セオドアも随分と協力的になってくれた。
実力を見て、仲間として認めてくれたということだろうか。
その後はみんなで他愛のない話をして過ごした。
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さて、先日のカフェに行って思ったのだが、ここで暮らすためのお金を稼がなければ。
推薦入学で学費や寮費、学食代は全額免除とはいえ、それに甘えてもいられない。
皆で楽しく過ごしていけばもっと遊びに行く回数も増えていくだろう。
そうなったときにお金がないのでは一緒に行けないのだ。
今日は週末ということもあり学院もお休みで天気もよし。
王都を歩き回って仕事を探すにはちょうどいい。
早速いろいろと見て回ることにした。
見て回ること少々。
花屋、酒場、魔道具店といろいろな求職自体はある。
ただ、大事なことに気が付いた。
俺、あんまり人と話したことなくね?
(脳内で使い魔と話してるからにゃ。)
(森の奥深くに住んでたんだから仕方ないだろ!)
そう、周りに人里などない森の奥深くから来たのだ。
コミュニケーションを取る機会など限られていた。
つまり、ぼっちのコミュ障のできあがりというわけだ。
社会不適合にもほどがある。
とはいえこのまま何もしないのであれば皆と楽しめる時間もなくなってしまう。
勇気を出して1歩踏み出してみる場面だ。
ただ脳内シュミレーションの結果、営業系は無理だ。
絶対にどもる。
せめて酒場の調理場か、それこそモンスターを狩る冒険者なんかもいいかもしれない。
ただ後者の場合、属性のおかげで昼間にまともな活動ができない。
活動が夜間に限られるとなると睡眠時間の確保も課題になるし、それは週末限定だな。
ということで冒険者登録はするとして、学校の終わりに何日かできる仕事を探そう。
冒険者を相手にする酒場などであれば比較的話しやすい人が来るだろうということで、ひとまず募集していた酒場に来てみた。
「あの、アルバイトの募集を見て来たのですが。」
「あら、学院の学生さんかな?助かるよー!」
ここの看板娘の方だろうか。
20代前半であろう若い女性従業員さんが開店前の机を拭いていた。
「うちは見ての通り冒険者が多く来る酒場だよ。
こういうところで働いた経験とかある?」
「いえ、アルバイト自体が初めてで・・・。」
「おっ、いいねー!
お姉さんが1から全部教えてあげるから安心してね。」
とんとん拍子で話が決まってしまった。
そのお姉さんは名前はリサさんといって、学院在学中からずっとこのお店で働いているらしい。
いつも笑顔でこの仕事にやりがいを感じており、その笑顔を見に来てくれるお客さんも多いとのこと。
自分も初のアルバイトでこのお店に入ったので親近感が沸いて即採用に至ったというわけだ。
ひとまず勤務は明日からということになり、その足で冒険者ギルドへ。
週末の活動のためには先に登録しておかなければ。
王都の冒険者ギルドというだけあり、とんでもない大きさだ。
一度だけ見に行ったことがある元魔王城跡くらいには大きいのではないだろうか。
魔法が大きく発展している世界で、魔法の加護をもたない者の大きな働き口となっているのが想像できる。
「こちらへどうそ。」
呼ばれるがままにそちらへ。
先ほどのリサさんも、この受付の人も一般的に見ればとても美人さんなのだろう。
だが最近リュカやツヅリ、テオドラといった一般的を超越した美人に囲まれているから感覚がおかしくなっている気がする。
「冒険者登録をお願いします。」
「はい、登録ですね。
こちらの紙に必要事項を記入してください。」
言われるがままに記載していく。
名前、出身、年齢。
加護を持たない人も居るからだろうか、魔法の属性とか記載する箇所がなくてよかった。
紙を渡してしばらく。
「お待たせいたしました。
こちらのカードは魔法使い登録の方用のカードです。
アルスさんの魔力を登録していただければ登録完了となります。」
「普通に魔力を流せばいいのかな?」
「そうですね。カードを持って魔力を流すだけです。」
裏面に埋め込まれた魔法石でそれを読み取って本人確認、といったところだろうな。
言われた通りに魔力を流して無事登録完了。
あとは即達成できるようにどんな依頼があるのか確認しておこう。
夜中にわざわざここに来る必要をなくさないとな。
受付嬢のアスカさんからの説明によると。
最初はFランクからのスタートで、それぞれのランクの最初の依頼のみ1つ上のランクに挑めるようになっているらしい。
それに成功するとそのランクのうちは1つ上のランクの依頼を受けることができる。
Bランク昇格までは5回連続依頼達成で1つ上のランクにランクアップ。
そこからは難易度や貢献度、昇格試験などがあるため時間がかかるらしい。
ひとまず要約するとこんなものだろう。
初回ということで迷わずEランク依頼の確認。
ゴブリン討伐、討伐の証として耳を10個納品。
最初のクエストにしたらこんなものだろう。
何度でも受けれるとのことで、50個集めてくればいいということなのかな。
一晩あれば楽勝だ。
ひとまず登録と確認も終わったことだし、今日は帰るとしよう。
「あれ、アルスさん!」
帰り道、何か食べながら帰ろうと屋台を覗いているとリュカに声をかけられた。
「やあリュカ。今帰り?」
「来月の王国豊穣祭での挨拶を頼まれまして、その打ち合わせを・・・。
ってこれ言っちゃいけないやつでした!忘れてください!」
両手をぶんぶん振りながら否定するリュカのかわいい一面も見れて満足だ。
ところで、豊穣祭か。
王都でのお祭りなんて、かなりの人でにぎわいそうだ。
「豊穣祭では多くの出し物が出されるんですよ。
ところでアルスさんは本日は何を?」
「酒場でアルバイトでも始めようかと思ってね。」
「あら、素敵ですね!頑張ってくださいね!」
屋台で買った焼き餅串をリュカに1本渡しつつ帰路につく。
お祭りではこうしてリュカと並んで歩ける時間が取れたりするだろうか。
そんなことを考えながら餅を食べていた。
翌日の放課後。
ついに人生初のアルバイト。
がっちがちに緊張しているのをタロットにつっこまれたので店の外に放り出して少しは落ち着いた気がする。
まあ影移動で勝手に俺の影に入っているのはいつものことだが。
「それでは今日から新たに仲間になりました、アルスくんです!
みんなよろしくねー!」
リサさんの大袈裟な紹介ののち自己紹介。
大きめのお店なだけあり、それぞれのポジションに担当が居る。
自分は今日はリサさんについて仕事に慣れるところからだ。
営業開始してしばらくは落ち着いていたものの、夕飯時となってからは大忙しだった。
笑顔でたくさんのお客さんに接客しながら会話も多くし、時には常連さんに俺の紹介まで。
リサさん半端ねえな。
提供を練習ということで常連さんに飲み物を持っていったらチップも頂けた。
このお店には良い人が集まってるな。
それもこれもリサさんが笑顔で頑張っているのを皆がわかっているからだろう。
初日ということもあり、営業終了と共にあがりの時間となった。
最後に今日の振り返りということで、リサさんと話している。
「初日はどうだったかな?」
「なにもかも初めてなので緊張していましたが、リサさんがフォローしてくれたおかげで良い箇所も悪い箇所も気づけました。」
「アルスくんは笑顔が素敵だから、まずは笑顔を意識していくところからかな!
あとは今日の気持ちを忘れずに、何事も一生懸命にやること。」
一生懸命にやることで楽しさを感じ、それが好きにつながっていく。
そういう人がこのお店にはたくさんいるんだよ。
と教えてくれた。
「まあ、私が初日に当時の先輩に言われたことそのまんまなんだけどね。」
ペロッと舌を出してはにかむリサさん。
本当にこのお店のことが好きなのだろう。
「このお店に入れてよかったです。
またよろしくお願いします!」
「嬉しいこと言ってくれるなー!
お姉さん泣いちゃうよ?」
そんなこんなで笑いあいながら初めてのアルバイトが終了。
今まで経験したことのない、素晴らしい時間だったな。
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