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人類唯一の闇魔法使い、人前では魔法を使えないけど暗闇に乗じて無双する  作者: あっきー


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エピソード2 ー決闘ー


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寮に入り数日が経過。

この学院に来てから放課後に王都を見て回るようになった。

中心街はどこの都市よりも栄えており、その近辺に関しては言うまでもなく。

だが城下町のはずれを見てみると薄暗い路地が多く、貧しい暮らしをしている人たちも少なからず存在していた。


魔法の適正を持っているのは人口の約3割、多く見積もっても4割といったところだろう。

残りの6~7割の人々は手に職をつけるのにも苦労しているのだ。

それだけ魔法が存在する世界での魔法使用率というのは高い。

一度便利さを知ってしまうと、なかなか手放せないものだからな。


ひとまずその話しはおいておこう。

学院では入学式に知り合ってからというもの、リュカ、ベント、ロベルト王子とよく一緒に過ごすことが多くなった。

今では一緒にお昼ご飯を食べる仲だ。

同年代と過ごす初めての時間ということもあり、なかなかに楽しめている自覚はある。


「アルスさんはいつも笑顔ですね。」


そんな折、リュカからそんなことを言われた。

顔に出てしまっていたのだろうか。

自分では全く意識していなかっただけあり、少し気恥しくもある。


「リュカこそいつも笑顔で居るじゃないか。」


ロベルト王子からの助け舟でなんとか自分から逸らせた。

王子の言う通りリュカはいつもにこにこしている。

そして困った人を放っておけない性格。

見た目も中身も天使のようだ。

恋人として選べるのであれば、リュカのような人がいい。


(主ー、それは属性的に致命的だにゃ。)


(例えだよ、例え!)


そんなことを念で言ってくる使い魔のタロットは現在俺の膝の上で日光浴をしている。

入学初日に抱いたまま寮に入ると、リュカとベントに遭遇してしまい存在が明るみに出てしまったのだ。

それからというもの、居れるときは常に傍にいることにしたらしく昼食の時なんかはこうして姿を現していた。

というか人の思考に茶々を入れるんじゃない。


(それは使い魔としての契約上聞こえてしまうので無理な話ですにゃー。)


こいつめ。

5歳の頃からの付き合いだから、もう10年になるのか。

最初は脳裏に響く声に戸惑ったものの、それだけ一緒に居るとさすがに慣れる。

出会った瞬間は死を覚悟したけどな。


(よく言うにゃ・・・。

あの時点でもう魔王よりも力をもっていたくせに。)


(5歳児を生贄とか言って食らおうとしてたのは誰だったっけー?)


(いやいや、魔神相手に影でものの見事に捕らえて亡き者にしようとする5歳児とか普通じゃないですにゃ・・・。)


当時を思い出してふと笑ってしまった。


「いつも笑顔で、そして穏やかな笑みで。

わたしはアルスさんのそういうところ、好きですよ。」


「「えっ?」」


俺とベントの驚いた声が同時にあがると、リュカの顔がみるみるうちに赤くなっていった。


「あっ、えっと、ごめんなさい!

なんと言いますか、穏やかで温かくて・・・光属性魔法のような安心感があるんですよ。

そういう意味で好感がもてるってことでして・・・。」


「なるほどね、リュカちゃんはアルスみたいなやつがタイプってことか。」


「もう、ベントさん!からかわないでください・・・。」


いきなりのことで驚いたが、光属性魔法か。

全くの逆属性なんだけどな。

とりあえずベントにからかわれて顔を赤くして弁明するリュカのかわいい姿を眺めていると予鈴が鳴った。

ロベルト王子の合図もあり、教室に戻ることにした。



「おいお嬢、まだそんな落ちこぼれとつるんでんのか?」


教室に戻るなりシエスタにそんなことを言われた。

お嬢とはリュカのことを指しているのだろうが、本人を目の前にして言うかね。


「アルスさんは落ちこぼれなんかじゃないですよ、シエスタさん。」


「魔法学院に入学しておきながら魔法を使用しないやつなんて落ちこぼれ以外のなんでもないだろ。

俺様やツヅリ、セオドアと組んでたほうがよっぽどためになると思うぜ?」


御三家と一緒にいたほうが、か。

確かに魔法に関してはそうだろうが、本人の意思が違う答えを出しているのだから言っても仕方ないだろうに。


「魔法知識だけでしたらそうでしょうけど、わたしは学院に入学した理由の1つに友人を作るというものがありますから。」


「俺たちではそれにはなり得ない、と?」


「少なくともアルスさんは人のことを悪く言いませんし、友人であればそういう方が良いです。」


その言葉に扇子で口をおさえながらくすくすと笑うセオドア。

まるでごもっとも、と言いたげな表情だ。

それにいらついたのか、シエスタの矛先がこちらへと向けられた。


「お前もなんとか言ったらどうなんだ、落ちこぼれ。」


「本人がそうしたいって言ってるならそれでいいと思うけど。

それともまさか、好意を寄せている相手を他の男に取られて嫉妬してる・・・とか?」


「馬鹿にしているのか、お前ぇ・・・!」


「あははははは!!君、最っ高!」


今度はツヅリが声をあげて笑い出す。

おなか痛いと言いながらこちらに歩み寄ってきた。


「君、面白いね。

この男はテラ様に何度もアタックしてはこっぴどく振られ続けてるって、結構有名な話なんだよ?」


テラというのは確かセオドアの姉だな。

たしかかなりの実力者だったはず。

ということはすでに意中の相手はいるのか。

それは悪いことを言ってしまった。


「えーっと・・・それはなんか、ごめん。」


頭を下げる俺に対しまたも噴き出すツヅリ。

彼女の中では俺は面白い人認定されてしまったようだ。

それはさておき、腕につけている端末から通知音が鳴った。

何事かと内容を確認してみると。


【  シエスタ・ロードニコルフ から

    決闘の申請が届きました。

      承諾しますか?


      yes / no       】


えっ、全然ノーだけど。

顔を上げてシエスタを見ると、まるで人でも殺めそうな目つきをしていた。

これは逃げられそうにない。

後ろから覗き込んできたツヅリがこれまた面白そうに。


「じゃあ立ち合いはあたしがやるよ。

アーケンミストの名において、公平にジャッジしよう!

なんちゃって。」


「いえ、貴女は面白いほうを選ぶ悪癖がありますわ。

ここはわたくしが立ち会いましょう。」


言いながら立ち上がり扇子を広げるセオドア。

ツヅリも自分の癖を理解しているのか、すぐに引き下がった。

観戦できるならそれでよしといった判断だろう。


振り返ると心配そうな顔でこちらを見つめるリュカ。

右手で頭を抱えながら、まるでいつかこうなると思っていたと言わんばかりの表情のロベルト王子。


てっきり止めに入ってくれるものだと思っていたのに・・・!


断れる空気でもなさそうなのでしぶしぶ承認。

端末を俺の背中にくっつきながら確認していたツヅリが、俺以外には聞こえないように小さくつぶやいた。


「性格はあんなだけど、魔法の実力では実際頭1つ抜けてるよ、あいつ。

気を付けてね、落ちこぼれくん。」


真剣な顔で言うなり、笑顔でその場を離れていった。

美人だとは思っていたけど、なかなか面白い人だな。

これを機に仲良くしてほしいものだ。


(胸さえあれば主に相応しいいい女なんだけどにゃー。)



-----


入学早々端末による決闘が承諾されたとあり、学院内にすぐに広まった。

決闘を一目見ようと多くの生徒の関心が集まる。

しかし学院長は申請の場に居た者のみの観戦を許可し、それ以外は無観客という判断を下した。

完全無観客試合が希望だったが、学院長判断であれば仕方ない。


会場に入り準備運動をしていると、リュカが声をかけてきた。


「アルスさん、気を付けてくださいね。」


「まあ、やるだけやってくるよ。」


「落ちこぼれくんはどんな魔法を使うのか楽しみだよ。」


ツヅリも近くに腰かけながらにこやかに声をかけてきた。

肩に乗っかっていたタロットをツヅリに向けながら。


「そういえばこの猫、俺とだけ喋れるんだけど。

これを機に仲良くしたいと思ったときに、こいつがツヅリの胸のこと悪く言ってたぞ。」


(主ー!?)


「ほう・・・にゃん公のくせにいい度胸じゃなわれぇ・・・!

いてこましたろか?おぉ???」


(こっわ!!!主より怖いにゃ!!!)


「ん、そうかツヅリは嫌か。

それならリュカ、預かってくれるか?」


「いいのですか!?

猫ちゃん大好きなんですよ。」


撲殺か浄化(デット・オア・デット)!!!)


「にゃーにゃーうるさいなあ。

ロベルト王子、申し訳ないけど頼めるか?」


「めちゃくちゃおびえてるじゃないか。

いいよ、おいで。」


さて、タロットの尊い犠牲で気持ちもまぎれたし。

少し寂しそうにしているリュカには申し訳ないけど。

とりあえず適当にやって適当なところで負ければいいか。


(主ひどいにゃ・・・呪ってやるにゃ・・・)


(俺にそういう類効かないの知ってるだろ。)


(そういえばそうだったにゃ!)


「アルス、シエスタ・ロードニコルフ。

両名の決闘を執り行います。

両者、準備はよろしくて?」


互いに頷いたことを確認したセオドアが扇子を前に掲げる。


「それでは、はじめ!」


「うおっ!」


開始の合図と共にとんでもない速度で炎の矢が飛んできた。

思わず声をあげてしまったが難なく回避。

だが回避した先にもきっちり飛ばしてきている。

魔法の展開速度といい、実戦経験といい、本当に御三家は並みはずれている。

シエスタを見ると背後に赤い円状の発射装置が4つ浮かんでおり、そこから立て続けに矢が飛んできていた。


「ははっ、どうした!逃げるだけか!!」


走り続け炎の矢の猛攻を避け続けているものの。

相手の魔法の出力や制度が下がる気配もなし。

そしてその1つ1つがうまく回避した先に打たれており、俺の身体能力をもってしてもギリギリの時もあった。

まあこのあたりでうまいこと被弾して終わりにしておくか。

そう思い足の動きを緩めた瞬間。


「確かにすばしっこいがそれだけだな。

お前みたいなやつと一緒にいるとお嬢の格が落ちるんだよ!」


ドゴォンー


大きな音と共にアルスが居た場所に炎の矢が着弾。

誰もが決着と判断していた。


「格・・・ねえ。

それって本人の意思より大事なものか?」


「お前、どうやって避けた・・・!」


「その人の、したいとかやりたいとか。

それを支えてあげるのが友達じゃねえのか。

そうやって自分の価値観を押し付けるのは少なくともいい友達とは言えねえな。」


「落ちこぼれの分際で俺様に説教のつもりか?

さっさと沈んでおけ!!」


シエスタが杖を横に振ると発射装置が8個に増えた。

たしかに優秀な魔法使いなのだろう。

これだけの数を同時に操っていて、威力も申し分ない。


「それはもう見飽きた。」


今度はアルスが杖を下から上に動かすと、地面から無数の影がすべての発射装置を貫いた。

驚くシエスタをよそに影から影へと移動。

瞬きをする間もなくという表現があるが、まさにその言葉通り。

一瞬で魔法使いの一番嫌がる間合いの近距離へと侵入。

つながっている影であればその中を自在に移動するなど、2歳の頃には習得していた。

シエスタがこちらへ振り向く間もなく杖を首へと突きつける。


「それまで!勝者、アルス!」


杖を下すとがっくりと膝と両手をつくシエスタ。

くやしさもあるが、今回に限っては別の感情のほうが大きかった。


「ありえ、ねぇ・・・闇属性魔法だと・・・?

魔物しか持ちえない属性を、なんで人間のお前が持ってる・・・!」


「ほら、そうなるだろ?

だから人前で魔法を使いたくなかったんだよ。

これに懲りたら人の交友関係に口を出すのはやめておくことだ。」


踵を返し、言葉を失っているロベルト王子からタロットを回収。

まあこういう反応になるわな。


ピコンッー


急な通知音に驚くも、腕の端末を開く。


【 個人ランクが上昇しました。

   個人ランク150→4  】


いきなり4位まで大ジャンプかよ。

御三家に勝つというのはそれほどまでに大きな戦果、ということだろうか。


ただまあ、ここにも居づらくなるな。


(主にはわたしがついて居ますよー。)


(はは、ありがとう、タロット。)


「アルスさん!」


「リュカ・・・?」


会場をあとにしようとしたところで、走って追いかけてきたであろうリュカに呼び止められた。

乱れた息を整え、まっすぐにこちらを見つめて。


そして、いつもの笑顔で。


「お怪我はありませんか?

その・・・ありがとうございます、わたしのことで戦ってくれて。

とても格好良かったですよ。」


そのかわいらしい嬉しそうな笑顔に心臓がはねた。

あれを見た後で変わらず接してくれるとは思っていなかっただけに、少々面食らってしまったが。


「まあなんだ・・・これからも変わらず接してくれると俺もうれしいよ。」


「もちろんです!

これからもよろしくお願いいたします!」


深々とお辞儀をするリュカ。

その姿を見れただけでも戦った意味はあったようだ。


(主が堕ちたにゃ。)


(やかましい!)


恥ずかしさをごまかすように、黒猫の両頬をひっぱるアルスであった。



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