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03 【混沌事件調査】  作者: 非常口どん八
第二章

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9/39

9 グラブをはめて潜入するアサシンのごとく――、あるいは、ニンジャのごとく


          


          (3) 


 

 

 場目は変わって、神楽坂。

 雰囲気がフランスに似ているとか似ていないとかいわれる、お洒落な坂の街。

 神楽坂との名に、確率じかけの神遊びに思いを馳せたり馳せなかったりしつつ、小路地へと入って行ったところに、合同会社『神楽坂事務所』の古い洋館がある。

 その、洋館の二階にて、


「うわぁぁん……、チカレタ……」

 

 と、綾羅木定祐が、大きな長窓にもたれかかりながら、気持ちの悪い声で言った。

 眼下の、古そうな邸宅の庭が見える。

 そこには、濃い緑にギザギザの入った葉っぱに、食欲を誘う黄色というか橙(だいだい)色の実が成った、枇杷(びわ)の木があった。

「はぁ……、枇杷、食いてぇな……」

 綾羅木定祐が、呟いた。

 まさに、ちょうど枇杷のシーズンで、そう呟きたくなるのも分からなくはない。

 そこへ、


 ――カランコロン、カランコロン……♪


 などと、ズボンのポケットにいれた、スマートフォンが鳴った。

 手に取って画面を確認すると、

「あ”ん……?」

 と、発信の相手に、露骨に嫌そうに顔をしかめた。

 発信の主というのは、特別調査課の碇賀元からだった。

 綾羅木定祐は、機嫌悪そうに電話に出てやるなり、

「おい、殺すぞ」

『何、でッ――!?』

 と、電話の向こうから、碇賀元の驚愕した声が返ってくる。

 まあ、開口一番の言葉が『殺す』など、普通は言わない。

『い、いやぁ……、いきなり『殺す』って、夫婦どうし、似てますねい……』

「ああ”? 元(もと)だろが? もう切るぞ、そのまま着拒するからな」

『ちょッ――!? まっ、待っちくりって! 綾羅木さん!』 

「待ってくれじゃないが。わざとだろ、お前?」

『い、いや、わざとじゃないって……! つ、つい、間違えちまってさ、』

 と、碇賀元は、慌てて綾羅木定祐を引きとめようとすると、

「――で? 要件は、何だってんだ?」

 と、綾羅木定祐は、仕方なしに話を聞いてやる。

『あ、ああ……、その……、綾羅木さんたちにさ? ちょっと、うちらの調査を手伝ってほしくてねい』

「ああ”? 調査を、手伝ってくれだと――?」

 綾羅木定祐が、顔をしかめながらも、続きを聞こうとした。

 その時、


 ――グァ、バッ――!!


「ッ――!?」

 と、突然に、綾羅木定祐は後ろから搦め手のごとく――!! 口元を塞がれてしまう!!

「動(うご)きゅな――」

 微妙に噛んだ警告の声に、

「ぶ、ベイだァッ――!?」

 と、綾羅木定祐も、謎の奇声をあげる。

 ベイダーとは、ダースベイダーの、暗黒面に堕ちたフォースに似たオーラでも感じたのかもしれない。

 背後の、身長の高そうな黒い影――

 グラブをはめて潜入するアサシンのごとく――、あるいは、ニンジャのごとく背後をとった影の者は、もういっぽうの手を、下から突き上げると、

「あ、ひゅぅぅんッ――!?」

 と、綾羅木定祐は尻の穴に走った感覚にビクン――!? となりつつ、奇声で叫んだ。

 尻の穴を、カンチョーのように侵された感触――、いや、実際のカンチョー。

「う、ぐぐゥッ……!!」

 綾羅木定祐は呻きながらも、チラと見て、背後の影を確認する。

 そこにはあったのは、いまSNS界隈で話題の高身長女子と化した、相方の上市理可の姿。

 自分より2センチほど低いものの、174センチの身長に、何ゆえか厚底を履いて10センチほど嵩上げしていた。

 綾羅木定祐は、上市理可のほうを向いて、キリッ――! として、

「もうッ!! だ、か、らッ!! 良い子は人にカンチョーをするもんじゃありませんって!!」

「指じゃなくて、リアルの浣腸をしようかと……、思いとどまりますた――」

「思いとどまるのがッ、当たり前ですッ!! ――てかッ!! もはや、アブノーマルなエロ漫画かAVの世界じゃないかッ!! いい加減にしなさいッ!!」

 と、実際に手にしたカンチョーを見せる上市理可を、綾羅木定祐は一喝して憤怒した。

 そんな、ふたりのやり取りの様子を、

『……』

 と、忘れられた碇賀元は、電話の向こうの傍らで聞きながら、

(ほんと……、マジで、何やってんだよ? こいつらは……)

 と、ドン引きし、呆れるより他なかったが。



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