↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
03 【混沌事件調査】  作者: 非常口どん八
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/39

10 心の中のハム太郎




          (3)




 綾羅木定祐と上市理可のふたりは、和室スペースに移動していた。

 ダイナミックかつ、アーティテックにひび割れした土壁の間――

 ふたりはスマホをテレビ電話にし、碇賀元たちから“混沌事件”について話を聞いていた。

『――と、いうわけなの。綾羅木さん、上市さん』

 と、賽賀忍が、事のあらましを伝えた。 

 なお、テレビ電話にしているのは、四人で円滑に話を進めるというのもあるのだが、綾羅木定祐にとっては、片手がふさがってカンチョー攻撃を防げないのを防ぐ――という意味合いもあった。


「何だ? それで、私らに、調査を手伝ってくれというわけか? その、混沌事件とやらを? あぁ”?」

 綾羅木定祐が聞いた。

 すこし機嫌悪そうにふるまい、「返答次第では断るぞ」という、性格の悪そうなオーラを漂わせながら。

『そっ。だから、ちょっち手伝ってくれないかねい? 綾羅木さん?』

 碇賀元が、何とかOKしてもらおうと、機嫌を取るように頼む。

 すると、横から、

「いや、待つのだ! 綾羅木氏! この依頼は、クソの香りがプンプンするからやめておくのだッ――! と、私の心の中のハム太郎が、言っているのだ」

 と、上市理可が、横やりを入れてきた。

『『何だよ、心の中のハム太郎って? てか、何だよ? クソの香りのプンプンする依頼って、バカにしてんのかよ?』』

 画面の向こうで、碇賀元と賽賀忍がつっこんだ。


 話をもどして、

「とにかく、さ? そこを、頼んますよ、綾羅木さんたち」

 と、引き下がれない営業マンのように、碇賀元が粘り強く懇願してくると、

「ああ”……? まったく、仕方ないな……。いいよ、受けてやるよ」

『ほ、本当かい……!?』

「ああ、受けるって言ったろ」

 と、綾羅木定祐は、しぶしぶ依頼を受けてやることにすると、

「だから、やめておくのだ! 綾羅木氏! クソの香りしかしないと言っているのだ」

「おい、うるせーぞ! ハム太郎!」

 と、心の中のハム太郎を出してくる上市理可に、綾羅木定祐がウザがってつっこむ。

 それはともかく、

『とりあえず、助かるわー、綾羅木さん』

「ああ。いいから、こんど、たんまり礼をしろな」

『ええ。分かったわ』

 と、これにて、依頼は成立することになった。


 それから、碇賀たちとの電話を切った。 

 綾羅木定祐が、コーヒを入れてきて、一服する。

「しかし、何か、ムカつくな……。アイツらから、依頼を受けるの」

 と、ここにきて、根性が悪いのだろう、依頼を受けたことにムカムカしてきた。

 また、そこへ

「ムカつくからさ? あの“ドラえもん”に、枇杷でもパシらせない? 綾羅木氏?」

「おっ、いいねぇ! 理可氏!」

 と、上市理可の提案に、綾羅木定祐がテンションをあげた。 

 なお、“あのド〇えもん”とは、妖狐の神楽坂文のことを指し、ふたりとは協力関係にある、異界というか異世界の住人だった。

 某諜報する家族マンガの嫁のような、黒のアサシン風ドレス姿に、長く麗しい黒髪に狐耳と――、客観的には、絶世の美女の見た目をしているのだが、綾羅木定祐たちには都合よく妖具や妖力などを利用されており、実質“ドラえもんみたいなナニカ”扱いだった。

 さっそく、綾羅木定祐は、妖狐に電話をかける。


 ――プル、ルルル……


 と、呼び出し音を、しばらく待つ。

 すると、つながって、

「おい、このドラ〇もん野郎」

『はぅ、』

「はぅ、じゃないがッ。しゃんと返事しろってんだよ、クソダヌキ」

 と、気の抜けた声の妖狐に、綾羅木定祐がつっこんだ。

 まあ、何か頼むほうの立場なのに、ドラえもん野郎だの、クソダヌキだのとの言い草で。

『――で? どうしたのだ? 貴様たち』

 妖狐が、要件を聞いてくると、

「まあ、ちょっと用があってな。いいから、今すぐ、ちょっとこっちに来い」

『何だ、めんどくさいな。いまから、麻雀しようというところだというに』

「うるせえ。いいから、来いってんだよ。ドラ焼き野郎」

 と、ドラ焼き呼ばわりして、綾羅木定祐は命令する。 

『やれやれ、仕方ないな。このゴミ芥ども』

 妖狐のほうも、ふたりをゴミ呼ばわりしながらも、しぶしぶ来てやると答える。

 そして、


 ――ブ、ィィン……


 と、小上がりになった、この和室スペースの外(そと)――

 天井の高い土間のほうに、空中に、もろに『どこでもドア』をすこしパクッたようなドアが現れる。

 それも、重厚そうな鉄製の、本職の方の事務所のドアのような。

 ただ、ドアは現れただけで、


 …………


 …………


 と、沈黙が漂うだけで、いっこうに、開く気配がなかった。

「……」

 綾羅木定祐と、

「……」

 と、上市理可が無言で、ジトッ……とした目で見た。

「何? 全然、開かないんだけど、綾羅木氏? しかも、微妙に開けにくい高さにあるっていう」

 上市理可が言い、

「ああ……。舐めてんな、あの、クソポンコツくそダヌキ」

 と、綾羅木定祐も、同調する。

 クソポンコツくそダヌキと、クソを二回つけながら。

 そうして、

「おう、大阪や!」

 と、綾羅木定祐は、拳を振りかぶるなり、


 ――ドォ、ォンッ――!!


 と、本職の方の事務所にカチコ――、否(いな)、ガサ入れする某府警のように、ドアをぶっ叩いた。

「おぅ! 開けんかい! ゴラァ!」

 怒鳴る綾羅木定祐に、

「開けんか~い」

 と、上市理可も便乗する。

 すると、

『何だ、貴様ら? カチコミをかける大阪府警か?』 

 と、妖狐の声がして、

「やかまし、早よ出てこい、コラァ」

 と、綾羅木定祐が急かす。

『やれやれ……。ちょっと、いま、開けるから待っておけ』

 と、妖狐は言葉をどおり、やれやれとドアを開けてやる。


 ――ギィ、ィッ……


 と、見た目どおり、ドアは重い音を立てて開く。

 そうして、

 ――スッ……

 と、黒のアサシンドレスを身にまとった、美麗としかいいようのない女の形(なり)をした妖狐こと、神楽坂文が姿を現した。

 ただ、開いたドアから土間には降りてこず、ドアのふちに座るという、やる気のない様子で。

 なお、奥の、異世界と思しきほうでは、中国神話風の風体(ふうてい)の――神っぽいヤツらはだいたい友達なヤツらが、ジャラジャラとマージャンを打っているという。

「――で? 来てやったが、何の用だ?」

 妖狐が、ふたりに聞く。

「ちょっと、依頼が入ってな。また、お前の妖具をよこせ」

 綾羅木定祐が答える。

「妖具を貸せ、だと? 調査は、具体的に進んでいるのか?」

「いや。まだ、依頼されたばかりだが、」

「なら、具体的に調査が進んでからでも、いいではないか?」

 妖狐が言った。

 確かに、調査をどのように進めるか見通しが立ってから初めて、どんな妖具・妖力が必要になるか分かることもあり、一理あった。


「ふん、このクソダヌキめ……。まあ、妖具はいいから、な? お前? ちょっと、枇杷でも取って来いよ?」

「枇杷、だと……?」

 妖狐が、すこし眉を動かすと、

「うん。いま、ちょうど、旬の時期じゃない? ドラえもん」

「そうだ、ちょっと、マッハ2か3出して取って来いよ、ドラえもん野郎。ちょうど、すぐ隣の、くっそ田舎の千葉にでも行って。人様の土地じゃなくて、誰も所有してない、でっかい枇杷の木くらいあるだろ」

 と、ふたりが、妖狐に枇杷をパシらせようとするも、

「ふむ……。嫌なのだ。そもそも、貴様らゴミ芥どもには、枇杷すら勿体ない話なのだ」

 と、妖狐は、若干のハム太郎口調で拒否した。

「はぁ? 舐めてんのか? このクソポンコツダヌキ」

 キレる綾羅木定祐と、

「そうよ、文さんは、私たちのドラえもんなの。ちゃんと、自覚して?」

 と、上市理可が言うも、


 ――ギィ……、バ、タンッ……!


 と、妖狐は、ドアは閉めた。

「おい! 開けんかい! コラァ!」

 綾羅木定祐は、ドンッ――! とドアを叩くも、こんどは出てくる気配がなく、

「くっそ……、この、ポンコツダヌキめ、」

「何? ねぇ、ねぇ? 逃げるわけ? 文さん?」 

 と、ふたりは、空中に浮いたドアに文句を言う。

 すると、


 ――ギィッ……


 と、ドアが、すこしだけ開く。

「――!」

 綾羅木定祐が、反応するも、

「枇杷が欲しいのだろ? 貴様たち? なら、“これ”でもくれてやる」

 と、妖狐が言い残しながら、


 ――ポロ、リ……


 と、少し開いたドアの隙間から、パチンコの玉ほどの大きさの枇杷の種を落としてみせた。

 ポトポト……と、焦げ茶色の枇杷の種が八つほど床に転がりつつ、

「「おい、八年後に実が成って食えってか! このクソポンコツクソダヌキ! 舐めとんのか!」」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。