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9 グラブをはめて潜入するアサシンのごとく――、あるいは、ニンジャのごとく


          ■■ 4 ■■



 場面は、変わって。

 同じく東京の、新宿区の神楽坂。

 雰囲気がフランスに似ているとか似ていないとか言われる、洒落乙な坂の街。

 神楽坂との名に、確率仕掛けの神遊びに思いを馳せたり馳せなかったりしつつ、小路地へと入っていったところに、合同会社『神楽坂事務所』の古い洋館があった。

 その、洋館の二階にて、


「うわぁぁん……、チカレタ……」

 

 と、綾羅木定祐が、大きな長窓にもたれかかりながら気持ちの悪い声を漏らした。

 窓から眺める景色に、眼下の古そうな邸宅の庭が見える。

「はぁ……、枇杷、食いてぇな……」

 綾羅木定祐が、眺めて呟く。

 眺めた先には、濃い緑に、少しギザギザの入った厚い葉っぱに、食欲を誘う黄色というかだいだい色を混ぜたように実が成った、枇杷びわの木があった。

 まさに、ちょうど、枇杷の美味しいシーズン。

 綾羅木定祐が、そう呟くのも無理もない。

 そのようにしていると、


 ――カランコロン、カランコロン……


 と、ズボンのポケットにいれた、スマートフォンが鳴った。

 綾羅木定祐は、手に取って画面を確認する。

「あ”ん……?」

 と、発信の相手を見て、露骨に嫌そうに顔をしかめた。

 その、発信の主というのは、特別調査課の碇賀元からだった。

 そのまま、機嫌悪そうに電話に出てやるなり、

「おい、殺すぞ」

『何、でッ――!?』

 と、電話の向こうから、碇賀の驚愕の声が返ってくる。

 まあ、開口一番の言葉が『殺す』だから、無理もないだろう。

『い、いやぁ……、いきなり『殺す』って、夫婦どうし似てますねい、』

 碇賀が感心したように、余計なことを言いいつつ、

「ああ”? もとだろが? もう切るぞ、そのまま着拒するからな」

『ちょッ――!? まっ、待っちくりって! 綾羅木さん!』 

「待ってくれじゃないが、わざとだろ、お前?」

『い、いや、わざとじゃないって……! つ、つい、間違えちまってさ、』

 と、慌てて、綾羅木定祐を引き留めようる。

「――で? 要件は、何だってんだ?」

 綾羅木定祐が、仕方なしに聞いてやる。

『あ、ああ……、その……、綾羅木さんたちにさ? ちょっと、うちらの調査を手伝ってほしくてねい』

「ああ”? 調査を、手伝ってくれだと――?」

 綾羅木定祐が、怪訝な顔をしながらも、話を聞こうとした。

 その時、



 ――グァ、バッ――!!


「ッ――!?」

 と、突然に、綾羅木定祐がは後ろから搦め手のごとく、口元を塞がれる。

うごきゅな――」

 噛み気味な警告の声に、

「ぶ、ベイだァッ――!?」

 と、綾羅木定祐も、謎の奇声をあげる。

 ベイダーとは、ダースベ〇ダーの、暗黒面に堕ちたフォースに似たオーラでも感じたのかもしれない。

 その、綾羅木定祐の背後の、身長の高そうな黒い影。

 グラブをはめて潜入するアサシンのごとく――、あるいは、ニンジャのごとく背後をとった影の者は、もう一方の手を下から突き上げるなり、


「あ、ひゅぅぅんッ――!?」


 と、綾羅木定祐は尻の穴に走った感覚にビクン――! となりつつ、奇声で叫んだ。

 尻の穴を、カンチョーのように侵された感触――

 いや、実際に、カンチョー。

「う、ぐぐゥッ……!!」

 綾羅木定祐は呻きながら、背後の影を確認する。

 そこには、いまSNS界隈で話題の高身長女子の、相方の上市理可の姿があった。

 自分より2センチほど低いが、身長174センチに、何ゆえか厚底を履いて10センチほど嵩上げしているという。

 その、上市理可のほうに、キリッ――! と綾羅木定祐は振り向いて、

「もうッ!! だ、か、らッ!! 良い子は人にカンチョーをするもんじゃありませんって!!」

「指じゃなくて、リアルの浣腸をしようかと、思いとどまりますた――」

「思いとどまるのがッ、当たり前ですッ! ――てかッ!! もはや、アブノーマルなエロ漫画かAVの世界じゃないかッ!! いい加減にしなさいッ!!」

 実際に手にしたカンチョーを見せる上市理可を、綾羅木定祐は一喝して憤怒した。

 その様子を、

『……』

 と、忘れられた碇賀元は、電話の向こうの傍らで聞きつつ、

(ほんと……、マジで何やってんだよ、こいつら……)

 と、ドン引きしつつ、呆れるより他なかった。



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