6 何? その、セカイノオワリみたいなノリ?
(1)
その後、碇賀元と賽賀忍のふたりは、松本の部下の零泉円子に連れられVR室へと移動した。
VR室――
講堂のように少し広くなった空間には、スパコン類や、モノリスのような大きな量子コンピュータがあった。
部屋の中央の台には、零泉円子がヘルメットのようにVRギアをかぶり、加えて、ボーカロイドのように肘から手首まで伸びたウェラブルデバイスを装着していた。
これらによって、脳と身体とコンピュータ網を“接続”し、情報分析を行う。
よくSFなどでイメージするような、空中でキーボードをカタカタするような“アレ”で、あらゆる大量の情報に超高速でアクセスし、まるで書斎の本に触れるかのような感覚で、分析・解析することを可能にする。
まあ、近未来的に、“何かやってます感”を出しているだけかもしれないが。
そうして、
「とりま、終わたっす、ガーさん」
と、零泉円子が作業を終え、碇賀元に報告した。
「うーい、あんがとぉ」
碇賀元が、礼を言う。
なお、零泉は疲れたのか、VRギアをつけたまま、冷えたペットボトルのコーラを飲んでいた。
「しっかし? 何か、ラノベかアニメに出てきそうな格好だよな? ちょっと、エロ可愛い的なヤツ?」
「ちょっ、ガーさん……!」
碇賀元の言葉に、零泉がすこし顔を赤らめる。
続けざま、こんどは賽賀忍に向かって、
「てか? アンタも、これ着てみたらと、どうよ? セクシーな、アラサーのコスプレイヤーみたいな感じで」
「は? いやよ。てか? セクハラよ、元」
「すまん、ねい。セクハラの、お詫び――」
「何? その、セカイノオワリみたいなノリ? どっかから取ってきたネタ?」
と、つっこまれる。
それはさておき、本題を進める。
分析によると、被害者たちには、いくつかの共通する点があった。
まずは、先ほどのガイシャたちと同じく、迷惑系の動画を投稿していた者というのが、何人かいた。
およそ、三つ、四つほどのグループの者たちが、犠牲になっていたのが分かる。
ただ、そこから、不可解な点が出てくる。
今回の、“混沌事件”というか、目ん玉をくり抜かれた事件が起き始めたころこそ、そうした悪どい動画投稿者のみが犠牲になっていたの。
だが、途中から、それらをSNSで発信して拡散していた者たち――、いわゆる、ある程度の拡散力を持つSNSインフルエンサーのようなことをしている者までが、事件の犠牲者となるケースも増えていってるのが読みとれる。
「迷惑系の、動画ねぇ」
賽賀忍が、言い、
「ああ、ん……? こいつら、見たことあるかもしれんねい」
と、碇賀元も、ガイシャのうちの何人かに、ピンときた。
「一時期、問題となった私人逮捕だったりの、炎上系だったり迷惑系の動画を投稿していたみたいね」
また、賽賀忍が言うと、零泉が
「ええ……。それも、かなり冤罪が疑わしいものだったり、先の、美人局をやってたようなガイシャたちのように……、ターゲットを探し、意図的に嵌めたみたいっすね」
と、補足した。
「意図的に、ねぇ……」
賽賀忍が、つぶやくと、
「まあ、胸糞悪いねい。まあ、昔から、示談金目的で痴漢冤罪を起こす連中もいるんだ。これだけ、『ネットで注目を集めること』が金になるような世の中じゃ、“そんなこと”する連中が出てくるのも、自然っちゃ自然だろうけどねい」
と、碇賀元が言った。
また、零泉が、
「ただ……、その、動画投稿者たちだけが、一連の、“混沌事件”っちゅうんですか――? の被害者になっているのなら、まだ、話は分かるんっすけど……、すこし気になるのは、その動画をSNSで拡散させた、何でしたっけ……? SNSインフルエンサーみたいな人たちも、被害者になっているんですよね」
と、話すも、
「何だ? その、タバコ休憩中に読める程度の記事をSNSで発信している数百万フォロワーの、何か元ジャ〇ーズアイドルとハーフが融合したようなハンドルネームの、燃える系の投稿をしているようなアレかね?」
「ああっ、ピンと来たわ」
「泉、ピ〇子ね」
「ごめん、オヤジギャグ、面白くない」
と、碇賀元のオヤジギャグと賽賀忍のツッコミに、タイミングを狂わされながら、
「ま、まあ……、そんな感じといえば、そんな感じっす。まあ、その、タバコ休憩の人の二番煎じというか、副業で、SNSをやってた人たちも含みますが……」
と、まとめた。




