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03 【混沌事件調査】  作者: 非常口どん八
第一章 

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2 ま、まずいッ! ホールインワンしちゃう!



          ***



 そういうわけで、碇賀元と賽賀忍の、特別調査課のふたりも現場捜査に加わる。

「ふぅ……」

 と、ため息とともに、碇賀元が、懐からタバコでも取り出すようにして、

 ――スッ……

 と、うまい棒を、取り出した。

 そこそこ人気のある、やさい味。

 開けて手に取るなり、まるで煙草を吹かすかように咥えつつ、

「さって、ガイシャでも、見てやろかねい? どれどれ、ドレミちゃ~ん?」

 と、オヤジギャグを口にしながら、遺体のほうへと近づいていく。

「おいッ! そんなもん持って遺体に近づくなってんだよ!」

 当然、中年刑事が注意してきて、

「早く、しまえ!」

 と、もう一人の刑事も、強制的に取り上げようとする。

「おわッ!? ちょッ、そ、そんな、うまい棒一つで怒らんでもいいでないかい?」

「怒らんでもって、怒るだろが! 普通!」

「お前は、ふざけすぎなんだよッ! さっさと、それしまえってんだよッ!」

 と、碇賀元から、刑事たちが無理やりうまい棒を奪いとろうとした。

 その時、


 ――ポ、キンッ……!!


「あ、んっ――!?」

 と、うまい棒から乾いた音がすると同時、折れて、遺体のほうへと落ちてしまう。

 それも、よりにもよって落ちる先は、遺体の、空いた“穴”のほうであり、

「あッ!?」

「お、おぉいッ!?」

「ちょッ!? 碇賀さんッ!?」

 と、刑事たちが叫ぶ中、

「ま、まずいッ! ホールインワンしちゃう!」

 と、さすがに碇賀元も慌てる。

 そして、まさに遺体の、口にうまい棒が刺さらんとした。

 その刹那、


 ――シュババッ――!!


 と、忍者の如く――

 電光石火の身のこなしで、すばやく身を屈めると同時、穴に刺さらんとする、うまい棒を、

 ――シュパッ……!

 と、キャッチする影があった。

「おぅわッ……! あっ、ぶなかったねい……、」

 心臓バクバクの、碇賀元の見た先――

 そこには、離れたところにいたはずの相方、賽賀忍の姿があり、半分になった“うめい棒”をキャッチしていた。

「ちょっと、何してんの? 元?」

 賽賀忍が、呆れる。

「い、いやぁ、不可抗力だって……!」

 と、碇賀元が、弁明しようとすると、

「て、てか……? い、いつの間に、動いたんですか?」

「さ、さっき……、そこに、いましたよね? 賽賀、さん……?」

 と、群麻と無二屋が驚きの顔とともに、先ほど賽賀忍が立っていた場所を指さした。

 確かに、そこは、少なくとも10メートル以上は離れていた。

 普通の反応と動作では到底、さきほどのように、せいぜい人の背丈の高さから落ちる物体など、キャッチすることはできないだろう。

 というのも、この賽賀忍と碇賀元はともに、特別調査課に所属する異能力者であり、なおかつ、忍者の家系などという、マンガのようなバックグラウンドをもっていた。

 それゆえに、忍者まがいのことを、やってのけたのだろう。

「まったく、気をつけなさいよ。危うく、遺体の口に、うまい棒が刺さるところだったじゃない」

「プ、フッ……! 想像したら、ちょっと面白いねい、その絵面」

「いや、不謹慎でしょ」

 賽賀忍が、碇賀元を、さすがに諌(いさ)めた。


 話を戻して、捜査を再開し、

「しっかし、この……、目を、くり抜いたりするってのは……、何か? 意味が、あるのかねい?」

 と、碇賀元が、改めて遺体に近づき、問を投げかけた。

「そう、ですよね……」

 群麻が、同意の相づちをする。

 ここは、皆が、共通に思う疑問だった。

「何か、目の移植……、とかのために?」

 無二屋が、何となく言うと、

「はぁ? そのために、目を狩っているというのか?」

「わざわざ、こんなところでか?」

「もし、そんなことをするのであれば、もっと、足がつきにくい場所でやるだろうし、ターゲットも、選ぶんじゃないか」

 などと、答えが返ってくる。

 まあ、確かに、仮に、闇のルートで売るために目を“狩って”いるとすれば、こんな大々的に、おおやけになるようにはしないはずだと考える。

 もっと政情が不安定な場所、あるいは治安・秩序の崩壊してしまった、表から隔離されたような場所で、“もし行方不明になったとしても問題とされない者たち”を選んで行うことだろう。

 残念なことに、世界には、そのような場所が、たぶんにある。


 それはさておき、

「それか、何か、犯罪グループどうしの、報復ですかね?」

 と、群麻が、また別の仮説を口にすると、

「報復、ねぇ」

「まあ、それが、一番ありそうだろうが……」

 と、刑事たちが、口々に反応したところ、

「にしても、わざわざ、こんな遺体を残す必要があるかねい? メキシコの、麻薬戦争とかじゃあるまいに」

 と、碇賀元が、横から言った。

「あぁ”ん?」

 中年刑事が、面白くなさそうな顔をすると、

「まあ、それに……、ガイシャの多くも、多種多様で幅広いプロフィールです。このガイシャたちがすべて、何か犯罪グループの報復対象となるなど、少し、考えにくいのでは?」

 と、警察たちの中の、何か現場を分析してそうな男がメガネをクイッと持ち上げつつ、資料を手にしながら言った。

 ここで、


 …………、…………


 と、いったん、現場は沈黙する。

 確かに、当然、犯罪グループの線でも調べているのだが、いまのところ、目ぼしい成果は出ていなかった。

 そんなふうに、ああでもないこうでもないと、話すばかりの状況で、

「う~ん……? これは、もしかすると……、何か、意図のある、メッセージのようなものなのか?」

 と、誰かが言った。

 その言葉に、皆が、ふたたび遺体を見てみる。

「メッセージ、か……?」

「この、のっぺらぼうだったものに、穴を穿たれたような様(さま)――」

 と、また誰かが、言葉を交わす。

 その言葉に、皆の脳裏に、あるものが浮かぼうとした。

 すると、



「――これって、混沌……?」



 と、賽賀忍が、そう口にした。

「混沌、か……」

「あ、あ……? あの、漢文の、」

 何人かが、反応する。

 そんな、皆のイメージが、ぼんやりと固まってきたところへ、


「混沌の、じょのいこ?」


 などと、こんどは碇賀元が、微妙な表情して言った。

 まあ、微妙な表情をしてまで、言う必要などないのだが……

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