1 ちょっと、スイーツ男子に準ずるナニカ――、あるいは通学中に食パン咥えてながら角から現れる女子高生的なナニカの可愛さに通ずる
南海之帝為儵,北海之帝為忽,中央之帝為渾沌。儵與忽時相與遇於渾沌之地,渾沌待之甚善。儵與忽謀報渾沌之德,曰:「人皆有七竅以視聽食息,此獨無有,嘗試鑿之。」日鑿一竅,七日而渾沌死。
※※『荘子』より
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また、“ガイシャ”が、何体か、転がっていた。
まず、目につくのは、暴行を受けたと思しきあとに、“目をくり抜かれている”こと。
さらに続いて、舌を、おそらくは酸を染みこませたスポンジのようなものを口につめられたのか、声帯まで焼かれていた。
まるで、のっぺらぼうに、穴を穿ったような有り様――
なお、ガイシャたちの指は、すべて切断されていた。
ちなみに、こんな凄惨な状態だが、同様の事件の被害者のうち、それが幸か不幸なのか――、大半は、そのまま絶命しているのだが、ある者は、絶命することなく生きているているという……
さて、肝心の、そんな凄惨な犯行の犠牲者たちが発見されたのは、早朝の、都内は新宿の繁華街ちかくの公園の、すこし人目につきにくい一角でのことだった。
「やれやれ……、また、か……」
と、奥に救急車が見えながら、まだ息のある“もの”を救急隊員らが運ぶ中、刑事が、ため息するように言った。
手前には、三〇代ほどの、タトゥーの入った厳つそうな、少しアウトローな見た目の、息絶えた“男だった物”が転がっていた。
やはり、目はくり抜かれており、口の中は声帯まで焼かれている。
さらには、どんな風にされたのだろうか? 右腕が、圧し折られているという。
「この奴さんは――、このまま、仏さんになれたから、まだ良かったの、か……」
中年刑事が言うのを、
「そうです、ね……」
と、金髪ゆるふわパーマ女子の、まだ歴の浅い刑事の無二屋が相づちした。
“生存してしまった”ガイシャたちが、これからどうなるのかということを想像するに、何とも言えない気分になる。
それはさておき、
「しかし、腕を圧し折るとは、」
と、別の人間が、信じられないとの顔でつぶやく。
そこへ、
「犯人は、けっこうな戦闘力――、なんですかね?」
と、無二屋の相方の、埼玉県にでも住んでそうなパンチ力に全振りしたスキンヘッド男に似た見た目の男、群麻が会話に入ってきた。
「けっ、何が、戦闘力だ」
中年刑事が舌打し、
「どうせ、犯人たちが、複数人で襲ったとかだろうが、」
と、別の刑事も、「しょうもないこと言いいやがって」と言わんばかりの顔をした。
また、そこに、別の警察の人間も加わって、
「ただ、そうすると……、ガイシャたちも、男三人と女一人ですが、四人と、恐らくグループで行動していたはずですし、」
「女をのぞいて、彼ら三人も皆、見た目で判断するのもアレですが、喧嘩慣れは、してそうでして、」
「はぁ、」
などと、ああでもないこうでもないと話し出す。
また、ある警察の男が、
「すると……、何か、対立する組織やグループなどと、トラブルでもあったのか――?」
と、話を展開しようとした、その時、
「ぶぇぃ~い……、っす……」
と、ローテーションで、うめくような声とともに、中年男が現場に入ってきた。
「「「――!?」」」
一同が、いっせいに反応する。
そこには、寝癖まじりの天然パーマだが、特別調査課という部署に所属する、碇賀元の姿があった。
なお、国民的な駄菓子の、『うまい棒』の天ぷら味を口にくわえており、さらに、もう一本を、まるで、双眼鏡でも構えるかのようにして、現場をのぞきこんでいるという。
そんの、ふざけた姿に、
「「ブ、フッ――!?」」
と、群麻と無二屋が、思わず噴きだす。
そこへ、
「何が、『ぶぇぇ~い』だッ! 圧し折ってやろうか! その、うめい棒を、おぉん!」
「ま、まあまあ……! そ、そんな、カッカせんでも! うめい棒、中折れしちゃうって!」
「おい、ふざけてないで、さっさと捜査に加われってんだよ! おう? あくしろよ」
「わ、わぁった、って……!」
と、怖そうな刑事たちにつめられ、碇賀元がまいった様子で答える。
また続けて、
「――そうよ、早く捜査に加わろ、元。てか? そのうまい棒、食べながら登場する必要、ある?」
と、こんどは碇賀元の相方の、ワインレッド色の髪をした女、賽賀忍が現れた。
彼女の問いに、
「いや、“ある”でござりゅ」
「“ある”――、とは?」
「だって、ただ、ひょっこり現場に入る系おじさんするよりも、さ? 何か、駄菓子食ってる系おじさんして入ったほうがさ? ちょっと、スイーツ男子に準ずるナニカ――、あるいは通学中に食パン咥えてながら角から現れる女子高生的なナニカの可愛さに通ずる要素があって、良くないかい?」
「何? その、可愛いとかって、言われたいの? 元」
「うん。おじさんも、可愛いって言われたい――!」
と、碇賀元と賽賀忍の二人が、謎のやりとりをしていると、
「おい! 何、いちゃいちゃ喋ってんだよ! お前ら!」
「捜査しないなら、帰らすぞッ!」
と、中年刑事らがキレてきた。
「わ、分かった、分かったって……!」
碇賀元が詫びつつ、
「じゃあ、早く、こっち来いよ」
「現場を、ちゃんと、はぁくしろよ!」
「ええ、分かりました」
「うぃ、っしゅ」
と、賽賀忍とともに返事し、しぶしぶと現場の調査に加わった。




