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【混沌事件調査】  作者: 石田ヨネ


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2 ま、まずいッ! ホールインワンしちゃう!


          ***


 そういうわけで、碇賀元と賽賀忍の、特別調査課の二人も現場捜査に加わる。


「ふぅ……」


 と、ため息とともに、碇賀元が懐からタバコでも取り出す様に、

 ――スッ……

 と、再び、“うめい棒”を取り出した。

 ちゃっかり人気のある、やさい味。

 開けて手に取るなり、煙草でも吹かすかのように咥えつつ、

「さって、ガイシャでも見てやろかねい? どれどれ、ドレミちゃ~ん?」

 と、オヤジギャグを吐きながら、遺体のほうへと近づいていく。

「おいッ! そんなもん持って遺体に近づくなってんだよ!」

 当然、中年刑事が怒鳴り、

「早く、しまえ!」

 と、もう一人のほうが、強制的に取り上げようとする。

「おわッ!? ちょッ!? そ、そんな、うめい棒一つで怒らんでもいいでないかい!?」

「怒らんでもって、怒るだろが! 普通!」

「お前は、ふざけすぎなんだよッ! さっさと、それしまえってんだよッ!」

 碇賀から、刑事たちが無理やり“うめい棒”を奪いとろうとする。

 すると、



 ――ポ、キンッ……!!


「あ、んっ――!?」


 と、“うめい棒”は乾いた音を上げると同時に、折れて遺体のほうへと落ちてしまう。

 さらに運悪く、その落ちんとする先は、遺体の、空いた“穴”のほうであり、

「あッ!?」

「お、おぉいッ!」

「ちょッ!? 碇賀さんッ!」

 と、刑事たちが叫ぶ中、

「ま、まずいッ! ホールインワンしちゃう!」

 と、さすがに碇賀も慌てる。

 そして、まさに遺体の、口のほうへと“うめい棒”が刺さらんとした、その時、


 ――シュババッ――!!


 と、忍者の如くーー

 まるで電光石火の身のこなしで、重力よりも早く身を屈めると同時、遺体の穴に刺さらんとする“うめい棒”を、

 ――シュパッ……!

 と、キャッチする影があった。

「おぅわッ……! あっ、ぶなかったねい……、」

 心臓バクバクの碇賀元の見た先――

 離れたところにいたはずの相方の賽賀忍が、半分になった“うめい棒”を手にしていた。

「――ちょっと、何してんの? 元?」

「い、いやぁ、不可抗力だって……!」

 やれやれと呆れる賽賀に、碇賀が弁明するように答えていると、

「て、てか……? い、いつの間に動いたんですか?」

「さ、さっき……、そこに、いましたよね? 賽賀、さん……?」

 と、群麻と無二屋が驚きの顔とともに、先ほど賽賀が立っていた場所を指さした。

 確かに、そこは、少なくとも5メートル以上は離れていた。

 普通の反応と動作では到底、さきほどのように落ちる物体など、キャッチすることはできないだろう。

 まあ、この賽賀忍と碇賀元はともに、特別調査課に所属する異能力であり、なおかつ忍者の家系などという設定みたいなプロフィールゆえ、やってのけたのだろうが。

「まったく、気をつけなさいよ。危うく、遺体の口に“うめい棒”がブッ刺さるところだったじゃない」

「プフッ……、想像したら、ちょっと面白いねい。その絵面」

「いや、不謹慎でしょ」

 賽賀が、碇賀をさすがにいさめる。

 そうしながらも、話を戻して、捜査を再開する。

「しっかし、この……、目をくり抜いたりするってのは、何か、意味があるのかねい?」

 改めて遺体に近づきつつ、碇賀が言った。

「そう、ですよね……」

 群麻が、同意するように相槌する。

 まあ、ここは、皆が共通に思う疑問だろう。

「何か、目の移植……、とかのために?」

 無二屋が、何となく言うと、

「はぁ? そのために、目を狩っているというのか?」

「わざわざ、こんなところでか?」

「もし、そんなことをするのであれば、もっと、足がつきにくい場所でやるだろうし、ターゲットも、選ぶんじゃないか」

 などと、答えが返ってくる。

 まあ確かに、仮に、闇のルートで売るために目を“狩って”いるとすれば、こんな大々的に、おおやけになるようなふうにはしないはずである。

 もっと政情が不安定で場所、あるいは治安・秩序の崩壊してしまった、表から隔離されたような場所で、“もし行方不明になったとしても問題とされない者たち”を選んで行うだろう。

 残念なことに世界には、そのような場所が、たぶんにある。

 それはさておき、

「それか、何か犯罪グループの、報復ですかね?」

 と、群麻が、また別の仮説を口にすると、

「報復、ねぇ」

「まあ、それが、一番ありそうだろが」

 と、刑事たちが、口々に反応するところ、

「にしても、わざわざ、こんな遺体を残す必要があるかねい? メキシコの、麻薬戦争とかじゃあるまいに」

 と、碇賀が、横から言った。

「あぁ”ん?」

 中年刑事が、面白くなさそうな顔をすると、

「まあ、それに……、ガイシャの多くも、多種多様で幅広いプロフィールです。このガイシャたちがすべて、何か犯罪グループの報復対象となるなど、少し、考えにくいのでは?」

 と、警察たちの中の、何か現場を分析してそうな男がメガネをクイッと持ち上げつつ、資料を手にしながら言った。

 ここで、


 …………


 と、いったん、現場は沈黙する。

 確かに、当然、犯罪グループの線でも調べているのであるが、今のところ目ぼしい成果は出ていない。

 そんな、ああでもないこうでもないと話すばかりの状況。

「う~ん……? それとも、これは、何か意図のある、メッセージのようなものなのか?」

 と、誰かが言う。

 その言葉に、皆が再び遺体を見る。

「メッセージ、か……?」

「この、のっぺらぼうだったものに、穴を穿たれたようなさま――」

 と、ここまで、また誰かが言葉を交わす。

 皆の脳裏に、あるものが浮かぼうとした、その時、



「――これって、混沌……?」


 と、賽賀忍が、その言葉を口にした。

「混沌、か……」

「ああ……、あの、漢文の、」

 何人かが、反応する。

 そんな、皆のイメージが固まってきたところへ、


「混沌の、じょのいこ?」


 と、今度は碇賀元が、微妙な表情で言った。

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