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役立たず鑑定士を追放した配信サークル、崩壊する 〜レアドロップ逆転の俺と黒髪の最強少女〜  作者: モコナッツ


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12/22

ギルド

 自動ドアが開いた瞬間、音が押し寄せてきた。

 外の喧騒とは違う、臭いのある熱気。


 人の声が、四方八方から降り注いでくる。


「整理券お持ちの方はこちらでー!」

「本日の素材買取、ミスリル系は相場上がってます!」

「次の配信、十五分後スタートでーす!」


 怒号にも似た、呼び込みと歓声。


 巨大なロビーは、まるで競り場のようだった。


 天井近くの巨大モニターには、有名パーティの配信が映し出されている。


 モニター前にはテーブル付きのソファー。

 売り子が席を回ってビールを注いでいる。

 その後ろには、鮨詰めの観客達。


 SNSでお馴染みのインフルエンサーが、モンスターを仕留めると、どよめきが起きた。


「…まるで現代のコロッセオだな」


「一階は一般開放されてるので、休みはいつもこんな感じです」


 騒がしさとは対照的に、その目は静かだった。


 モニターから視線を流す。


 新品の装備を誇らしげに見せ合う若い探索者。

 素材の査定額に食い下がる男。

 壁際でぐったりと座り込んでいる、包帯のままの誰か。


「なるほど、夢がある」


「……で、どこ行けばいいんだ?」


 凛はエントランス横のエスカレーターを指差した。

“探索者手続き 2F”と、無機質なフォントで書かれている。


「二階はテーマパークじゃないのか?」


 凛が苦笑した。


 その時、背後で歓声がまた一段大きくなった。


 俺は振り返らなかった。


 ____________________________


 エスカレーターに足を乗せた瞬間、音が遠のいた。


 喧騒が、ゆっくりと下へ沈んでいく。


 二階に着く頃には、エレベーターの稼働音だけが耳に残った。


 壁が白い。いや、壁だけではない。床も天井も、照明から職員の制服にいたるまで、全てが真っ白だ。

 知っていなければ、一階とは別の建物に迷い込んだと思うだろう。


「目がチカチカする」


「すぐに慣れますよ」


 正面には長い受付カウンターが並び、その上に番号が振られている。

 上部の電光掲示板には、淡々と番号が表示され、無機質な電子音が一定のリズムで鳴っていた。


 ピッ。


『A-132番の方、3番窓口へお越しください』


 感情のないアナウンスが、均一に広がる。


 待合スペースには、一定の距離を保って椅子が並べられていた。


 無言で書類を確認している者。

 スマホで何かを入力している者。

 そして、書類不備で止められているのか、窓口で淡々と説明を受けている男。


「一階と同じ建物とは思えないな」


「むしろ、こっちがメインですけどね」


 俺はポケットからスマホを取り出し、軽く操作する。


「ほら、登録申請は事前入力済みだ」


「準備いいですね」


「レディを待たせるわけにはいかないからな」


 受付近くの端末にスマホをかざす。

 軽い電子音と共に、整理番号が発行された。


『B-087』


 小さく表示された番号を見て、椅子に腰を下ろす。凛も隣に座った。


 少しだけ、近い。

 俺はスマホを取り出した。


「緊張しなくても大丈夫ですよ」


「え?」


「心配しなくても神谷さんなら普通に通ります」


 そう言うと、凛は足をぶらぶらさせた。

 俺はまたスマホに目を落とした。


 ピッ。


『B-087番の方、5番窓口へお越しください』


 呼び出し音が鳴る。


「行ってくる」


「私もいきます」


 カウンターの向こうにいる受付員は清潔で、きっちりとした制服に身を包んでいる。

 業務用の笑顔だった。


「本日は、探索者登録の手続きでお間違いないでしょうか」


 柔らかい声だった。


「はい。新規登録です」


 受付員は手元の端末を操作しながら、視線をこちらに向ける。


「事前申請の確認が取れております。神谷透様ご本人ですね」


「新規登録ですが、一定の活動実績が必要になります。本日は身分証明証はお持ちでしょうか?」


「はい」学生証を見せる。


「拝見いたします。あら……統央大学ですね。活動歴を確認します……はい、実績は申し分ないですね。」


 あいつらとの経験も、役に立つもんだな。


「かなり難易度の高いダンジョンにも挑戦されておりますが、現在、どこかのパーティに所属してますか?」


「シーカーズに登録されてると思います」


「シーカーズですか……」


 受付員の目が、ほんのわずかに見開かれた。

 わずかに間が空く。


「本登録が承認された場合——」


「大学所属の探索者資格は、自動的に失効します」


 声色が、少しだけ俺に向いた。

 どうやら、完全に事務的って訳でもないみたいだ。


「それに伴い、大学からの支援——装備貸与、奨学金、医療優先措置等はすべて停止されます」


 続けて、補足するように言う。


「また、今後の探索活動は全て自己責任となります。救助・治療費用は原則個人負担となりますので、ご了承ください」


 覚悟の上だ。

 後戻りするつもりは、最初からない。


 だが実際に言葉にされると、一般の探索者と比べていかに自分が守られてきたかを実感した。


 ふと、一階の光景がちらついた。


「神谷様」


 受付員が確認するように名前を呼ぶ。


「後悔される方も多いですよ。よくお考えください」


「以上を踏まえた上で、ギルド探索者としての登録を希望されますか」


 坂城やひなの。実家の両親。他の連中。頭の中をいくつかの顔がよぎった。


 ちらりと凛を見る。

 視線が一瞬だけ泳いだ。

 だが、すぐに真っ直ぐ顔を上げた。


 ……小さく唾を飲み込む。


「お願いします」


 受付員は一つ頷く。


「確認いたしました。それでは、正式登録を進めさせていただきます」


 その言葉と同時に、音が少し遠くなった。


 坂城や……ひなのともうまくやれてた時もあった。


 だが、もう戻れない。


 まぁ、何とかなるさ。……多分な。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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