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役立たず鑑定士を追放した配信サークル、崩壊する 〜レアドロップ逆転の俺と黒髪の最強少女〜  作者: モコナッツ


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11/22

始まり

 ダンジョン入口の広場には、人が溢れていた。


 話し声、呼び込み、配信の歓声。

 それらが混ざり合って、ひとつの熱を帯びた空気になっていた。


 入口脇の案内所では、大きなモニターに探索中のパーティ配信が、リアルタイムで映し出されている。

 歓声が上がるたび、誰かの命のやり取りが娯楽として消費されていく。


 通りを一つ過ぎれば、そこはもう小さな街だった。

 簡易診療所、道具屋、香ばしい匂いを漂わせる屋台。油と香辛料の匂いが、血と土の記憶を上書きする。


 つい先ほどまでの死闘が、ひどく遠い出来事のように感じられた。


「相変わらず、凄いな」


 思わず漏れた声に、隣で凛が小さく笑う。


「ほとんど観光名所ですからね」


 言葉は軽いのに、声色は静かだった。

 歓声が少し、遠のいた。


 歩きながらモニターを見る。

 配信といっても、大多数は上層まで。命の危険がある中層以降は、シーカーズや凛レベルじゃないとキツい。


「配信、途中で止めて良かったのか?ソロ配信で途中でいきなり切ったらリスナーは心配するだろ」


「大丈夫ですよ。私のは自分も映しませんし、声も入れません。ほとんどダンジョンのPVみたいなもんです」


 それ、配信する意味あるのかよ、と言いたくなったがやめておいた。

 人には人の考え方がある。シーカーズでも、それで揉めたようなもんだ。


「私はそんなに配信は見ないですが、シーカーズも名前くらいは知ってましたよ」


「光栄だな」


「…シーカーズと言えば、ちゃんと自己紹介してなかったな」


「改めて、神谷透かみやとおるだ。歳は21。統央大三年。前のパーティでは鑑定、索敵、ルート選定、作戦立案、後荷係と整備を担当してた」


「まあ……雑用係だ。腕っぷしはさっき見た通り。まあ、よろしくな」


 一通り言って、肩をすくめた。


「神谷さん、統央だったんですね」


「意外か?まぁ鑑定ありきで入ったようなもんだしな」


「それにしても、裏方ほぼ全部一人でやってたんですか? それで追い出されるのって、相当嫌われてたんじゃないですか?」


「…まあ、私としては良かったですけど」


 はっきり言う。こちらもその方が楽でいい。


「じゃあ改めて。黒瀬凛です。18歳で通信制の高校通ってます。趣味はダンジョン探索です。」


 小ざっぱりした自己紹介だった。


 異様な強さの理由とか、色々聞きたかったが、あまり詮索するのはやめておこう。

 言いたくない事は、聞かなくていい。


 そうこうするうち、人通りを抜けて、目的地が見えてきた。


 入口の上には、


【探索者ギルド 東都中央本部】


 と大きな看板が掲げられている。


 天を仰ぐようにビルを見上げた。

 ギルドといっても、ゲームや物語に出てくるそれとは違い、近代的な摩天楼だ。ガラス張りの窓が西陽を反射して、ソーラーパネルのように輝いている。


 探索者らしき人が頻繁に出入りするのが見える。


 自動ドアが開くと、さざめきが聞こえた。

 外見と違って、内側は活気に溢れているようだ。


「中学の時以来か…」


 確か、社会科見学で行った記憶がある。

 ただ、その時はこんなに大きなビルじゃなかった気がするが。


 ダンジョンが発見されて、二十年以上。

 ドロップの存在が、世の中を一変させたらしい。


 ダンジョンは国営化され、大きな産業として成り立っている。


 シーカーズを抜けた今、これからは俺も頻繁に通う事になるだろう。

 奨学金もおじゃんだ。今後はここが俺の生命線。


「ここからが本当のスタートですね」


 凛が振り返って、目を細めた。

 風になびいた髪が、小さく揺れた。


「だな」


 ドアが開く。

 新たなパーティの第一歩を踏み出した。


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