冒険者修行 1
「グラウカ!そちらのデアウルフを頼みます!」
「了解!アルバさんも無理しないでくれ!」
昼の木漏れ日溢れる森の奥で、二十数匹の魔獣に取り囲まれた冒険者の四人組は、作戦通りアルバを先頭にマリリス、フェティダとしんがりのグラウカで、縦方向の列を組み、手負いのヴルデアウルフに真っ直ぐ突っ走る。アルバが一挙に群れのリーダーを斬り伏せ、統率の乱れた敵集団を各個撃破する戦法だ。
グラウカは素質にあっていなかった大盾と槍を諦め、今は初心冒険者が使うような幅の広いブロードソードと、丸く縁取られた魔獣革のレザーシールドを身につけている。その動きは重症を負ったあの戦闘の時よりも遥かに効率化され、群がってくるデアウルフどもを容易く斬り伏せ、近寄らせない。
フェティダはもともと弓の才能が飛び抜けていたが、今や、その矢を持つ右手には三本の弓が同時に握られ、矢継ぎ早に放たれた幾本もの恐ろしいほど速度の矢が、ヴルデアウルフの取り巻きに鈍い音を立てて着弾し、命を一瞬で奪う。
マリリスも同様に、樫の木で作られた取り回しの良い杖を振り回し、左右から包囲しようと迫るデアウルフ達に中位祝福魔法ヴルラシュを浴びせ、骨を砕き、大きな隙を作った。これは光の粒子が凝縮し、石ほどの質量を持った無数の乱れ撃ちである。空中で静止させることもできるため応用が効きやすく、威力はマリリスの習得度次第で大きく伸びるだろう。
「はああああああぁあ!!」
アルバが熱い雄叫びをあげて、形成が不利だと判断し逃げ帰ろうとするヴルデアウルフに痛烈な斬撃を与える。それは星のような五本の軌跡を描いて、引きずられた脚や尾をはねとばし、胴に走った三本目の一閃で魔獣の体を破断させる。絶命し空を舞った可哀想な魔獣は、続く四、五の剣でそれぞれ心臓、脳を真っ二つにされた。
群れの長を失って、動揺し、逃げ帰ろうとしたデアウルフ達は、フェティダの冷静な矢によって急所を撃ち抜かれ、バタバタと倒れていく。
そしてやぶれかぶれに隊列に食い掛かろうとしたデアウルフの残党は、グラウカの小さな盾を口に挟み込まれ、閉じれない口元からブロードソードで水平に引き裂かれ、即座に絶命した。もはや勝敗は明らかで、多数の有象無象の魔獣を蹂躙するほど、冒険者達は確実に腕を上げていた。今やその抵抗力のない哀れな魔獣達の数も六匹を残すのみだ。その数を見て弓兵が喋り出す。
「……グラウカあれをやってみよう。この数であればいいですよねアルバさん」
「そうしましょう!グラウカ準備はいいですね?」
「グラウカ頑張って!」
グラウカは皮の盾をマリリスに渡して、少し深呼吸をしてから、両手でブロードソードを握り込み水平に構える。右肩から生えたように幅広の剣身が三匹まとまったデアウルフ達を捉え、睨みつけ、ペレイデスの光を短い剣に集中させる。そしてついに始まった!
「アングペレイデス!!」
(……ダサ) (ダサすぎるよ!)(クールだ!!!)
剣身がわずかに前傾し、集めた光の束が一挙にデアウルフ三匹の目を潰す!ブロードソードのような、幅広の剣にしか成し得ない、隠された必殺の戦法だ。そして勇然と魔獣達にそれぞれ下から斬り上げるようにして、その勢いのまま最初の一撃と同じ要領で喉元から切り飛ばす。踊るような三連撃だ。
残る三匹はそのアルバ直伝の恐ろしい殺獣殺法を見て、恐怖し、木洩れ日の森に逃げ去っていった。
「どうですグラウカ、新しい技は?」
ハンサムな顔を元気いっぱいの笑顔で満たしながらアルバは聞いた。後衛のフェティダとマリリスは苦笑している。
「技はすごく意外性のあるものだし昼の間に現れた弱い魔獣程度なら余裕で倒せそうだよ!」(技名は変えたいけど)
「にしてもあの三連撃はすごく良かったです!剣の重心を理解して適切な角度でないとデアウルフの首は跳ねることはできません。まことにお見事でした!」
アルバが褒めるとフェティダもマリリスも拍手した。
そしてしばし歓談し、魔獣の素材を採集した後、方角を確認すると、南東のモンソニア連峰に向かって歩き出した。長旅のため荷物は重いが彼らの足取りは軽い。
アルバの愛馬フェリコンドは単身、タークの匂いを追って
いるが、口笛を鳴らせばどこからともなく現れるだろう。
今回の旅の目的は魔法生物を捕まえること。冒険者が魔法を習得するには欠かせない通り道だ。アルバに鍛えられた三人で相手をするなら、それほど恐ろしい敵ではない。




