↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末の七勇者(改)  作者: ヤミ
五章 《終末戦争》
76/77

第七十六話 狂愛と閃く矢

皆さんこんにちは。

ヤミです。

本日は第七十六話を投稿させていただきました。

バラバラになった《暁》の仲間たち。そこを狙う《世界政府》。混沌としたこの戦いの行方は。

是非お楽しみください。

 マーガレットとアルケインの妹であるエミリアは、現世という名の知らぬ土地を二人で彷徨っていた。


「マーガレットさん…。」


「エミリア様。大丈夫ですよ。」


 マーガレットはエミリアの手をぎゅっと握り、七勇者たちと合流するために先へ先へと進んでいく。


「これはこれは。美しい女性が二人揃って。とても良い眺めね。」


 突然、二人の前に一人の女性が現れた。マーガレットは警戒しながら尋ねる。


「あなたは?」


「私はアフロディテ。あなたたちを守ってあげるわ。」


 アフロディテは二人へゆっくりと近づいていく。


「この辺りには、頭のおかしな者ばかりいるから。あなたたちのような美しい女性は、決して傷つけさせはしないわ。」


 マーガレットとエミリアは、少し安堵した様子でアフロディテに近づく。


「私はマーガレットと申します。」


「私はエミリアです。」


「あら、可愛い名前ね。さあ、この辺りは危険だから、少し離れた場所へ移動しましょう。」


 二人はアフロディテの後に続いていく。しばらく歩いたところで、アフロディテは二人を一つのビルへ案内した。


「ここは?」


 マーガレットが尋ねると、アフロディテは優しい声で答える。


「ここは私たちが隠れ家として使っている場所よ。」


 そこには、他にも多くの女性たちが匿われていた。


「アフロディテ様は、こうして皆様を守っていらっしゃるのですね。」


 マーガレットが感心したように部屋を見渡す。


「私は昔から異性を愛せないの。だから、つい女性を愛してしまう。そして…守りたくなってしまうの。」


 アフロディテは目を伏せ、少し声のトーンを落とした。


「異性を愛せないからといって、そう落ち込むものではありませんよ。人には、その人の価値観がありますから。それに、アフロディテ様は私たちを守ってくれる、とても良い方です。私はアフロディテ様のような人、好きですよ。」


 マーガレットの言葉を聞いたアフロディテの頬が紅潮する。


「あぁ…なんて美しい…。」


 アフロディテは涙を浮かべながら、マーガレットを強く抱きしめた。


「大丈夫ですよ。」


 マーガレットもアフロディテを抱きしめ返す。


「あぁ…幸せ…。」


 アフロディテは恍惚とした表情を浮かべる。しかし次の瞬間その表情が一変した。


「…可愛いわね。」


 アフロディテが隠し持っていた短剣を抜く。


「え…?」


 マーガレットが異変に気づいた時には、すでに遅かった。アフロディテの攻撃を受け、マーガレットはその場に倒れる。


「あはっ…素敵。」


 その異常な行動に、部屋にいた女性たちは悲鳴を上げ、一斉に逃げ始める。


「あら、どこへ行くの?」


 アフロディテは逃げ惑う女性たちを追いかける。


「美しいわね……。」


 そして、彼女たちへ短剣が取付けられたワイヤーを振り回し一瞬のうちに屋内は血塗られた。


「さぁ…後はエミリアちゃん。あなただけよ。」


 アフロディテはエミリアへゆっくりと歩み寄る。


「ひっ…。」


 エミリアは腰が抜け、その場に崩れ落ちる。


「その顔…。見ているだけで興奮してきちゃう。」


 恐怖に震えるエミリア。


「助けて…お兄…様…。」


 エミリアの脳内には今は亡き兄アルケインの姿が浮かぶ。


「お兄さんがいるのね?」


 アフロディテは笑みを浮かべる。


「でも、もう会うこともないわよ。あなたは私と一つになるのだから。」


 アフロディテがエミリアへ襲い掛かろうとした、その瞬間


 突然、アフロディテの身体が痙攣する。


「な…に…?」


「オリンポス十二神、狂愛のアフロディテ。」


 背後から男の声が響く。アフロディテは振り返ろうとするが、身体が思うように動かない。


「だ…れ…?」


 声の主が、ゆっくりとアフロディテの前へ姿を現す。


「っ!お、お前は…!」


「お久しぶりですね。」


 エミリアは目の前に現れた男を見て、安堵の息を漏らした。


「流星…。」


「すいません。こんなになる前に駆けつけられなくて。」


 星野流星はエミリアへ謝罪すると、アフロディテへ向き直る。


「き、貴様…!」


「僕は医者ですから。人間の身体のことなら、よく知っている。」


 流星の表情から笑みが消える。


「さて…どうやって解剖してやろうか?」


 冷徹な瞳。その奥には、牙を研ぎ澄ました獣のような殺気が宿っていた。流星は静かにアフロディテへ近づいていく。


「や…め…!」


 そして一瞬のうちに距離を詰めると、流星は手にしたメスを振るった。アフロディテは体中から血飛沫を上げその場に崩れ落ちる。


「お怪我はありませんか?」


 流星は腰が抜けて座り込んでいるエミリアの前に屈み込み、顔を覗き込む。


「はい…。」


「良かったです。」


 流星はエミリアへ手を差し出し、立ち上がらせる。二人はそのまま建物の外へ出た。屋外へ出ると、流星は一度建物へ振り返る。そして静かに頭を下げた。


「助けられなくて…すいませんでした。」


 エミリアは顔を伏せる。


 ───


 田中、高橋、ルシファーの三人は、偶然にも近い場所へ転移させられていたため、すぐに合流することができていた。


「一人になってしまったかと思ったけど、高橋くんとルシファーさんがいて心強いです。」


 田中がニコッと笑みを浮かべる。


「そうだな。」


 高橋も同意する。


「なんせ七勇者のルシファーさんがいるからな。俺たちに怖いものは無しだぜ。」


「さすがにそれは言い過ぎだ。」


 ルシファーが苦笑する。


「僕だって限界はある。自分たちの身は、自分たちで守らないと。この戦いは、何が起きてもおかしくない。」


 田中の言葉に、ルシファーは頷く。


「ああ。一人で二人を守りきれる自信はない。特に、さっきから近くに王の気配を感じる。あれとぶつかることがあれば、なおさらだ。」


「そうか。まあ、俺たちも頑張るか!なぁ、田中!」


「そうだね。最善を尽くそう。」


 三人は王からなるべく離れるように動きながら、他の《暁》のメンバーを探す。その時


「アルテミス様。そこです。」


「了解した。」


 建物の間を走っていたルシファーたちは、一瞬、何かが光り輝くのを見た。


「伏せろ!」


 ルシファーの命令に、田中と高橋は突如体が動かされたような感覚に陥る。二人はいつの間にか身を伏せていた。次の瞬間、強烈な風が吹き荒れた。


「なんだ、これ…。」


 高橋が唖然とする。


「警戒しろ。敵がいる。」


 ルシファーは周囲を見渡す。先ほどの光は、すでに見えなくなっていた。しかし、周囲に立ち並んでいたビルの一部が破壊され、何者かによる攻撃だったことだけは明らかだった。


「ルシファーさん、ありがとうございます。」


 田中は立ち上がる。


「多分、敵はスナイパーです。また位置を変えて撃ってくるはずです。さっきの威力を考えると、次の攻撃を全員で避けるのは難しいと思います。だから、バラけましょう。一人でも多く敵の狙いから外れる人を作って、その人たちで敵を討ちましょう。」


「了解!」


「分かった。」


 三人は、それぞれ違う方向へ走っていく。


 ───


「バラけましたね。誰から片付けます?」


「ルシファーからだ。」


「それでは、ルシファーの位置を伝えます。」


 建物の陰に潜む男が、遠くにいるアルテミスへ位置を伝える。


「アルテミス様の目の前にあるビルより奥へ八メートル。そこから左へ三メートルの地点に彼女はいます。」


「ありがと。」


 アルテミスと呼ばれた男は、弓に矢をつがえ、ゆっくりと引き絞る。


「穿て。」


 矢が放たれた瞬間、凄まじい風圧が周囲へ広がる。立ち並んでいたビルが次々と揺れ、瓦礫が舞い上がった。


「っ!」


 ルシファーが光を捉えた時には、すでに遅かった。矢はルシファーを直接捉えることはなかったものの、足元へ突き刺さる。


 次の瞬間、強大な衝撃波が発生した。


「ぐっ!」


 ルシファーの身体が吹き飛ばされる。


「仕留めたか?」


「いえ。命中はしていません。ですが、今宙へ吹き飛ばされています。チャンスかと。」


「位置は?」


「先ほどの照準地点より右へ五メートル、上へ九メートル地点に。」


「見つけた!」


 そこへ田中が現れ、刀を振るう。田中は素早さに能力を全振りしている。アルテミスへ位置を伝えていた男は、突然の接近に対応できず、胸を深々と斬られ倒れた。しかしアルテミスは田中には目もくれず、再び矢を放った。瞬間、爆風のような風圧がアルテミスの周囲へ放たれ、田中は吹き飛ばされる。


「ぐっ!」


 放たれた矢は、空中にいたルシファーを捉えた。ルシファーは地面へ落下する。


「ヘルメス。お前のお陰で穿てたようだ。」


「お前ぇ!」


 高橋もアルテミスの元へ辿り着く。二振りの剣を構え、アルテミスへ斬り掛かった。


「不可視の斬撃を飛ばす能力…だったな?高橋春樹。」


「アルテミス!」


 高橋の斬撃はアルテミスの弓によって防がれる。アルテミスは高橋から距離を取った。


「お前とは相性が悪い。ここは退かせてもらう。」


「させるわけにはいかない!」


 アルテミスの背後から、田中が刀を振るう。


「ちっ!」


 アルテミスは避けたつもりだった。しかし、田中の速度は人間のそれを遥かに凌駕している。アルテミスは腕を負傷し、後退する。


「行くよ、高橋くん。」


「おう!」


 高橋は剣を振るい、不可視の斬撃をアルテミスへ連続して飛ばす。


 アルテミスは走りながら、それを次々と躱していく。


 しかし、その背後にはすでに田中が迫っていた。


「殺れ!」


 突然、アルテミスが走るのを止めて叫ぶ。田中がアルテミスへ迫った、その瞬間


「田中!」


 高橋が叫ぶ。田中は攻撃を受け、その場に倒れ込んだ。


「まだスナイパーがいるのかよ…!」


 高橋は建物の影へ隠れる。物陰から少しだけ顔を出し、周囲を見渡す。しかし、スナイパーらしき人物は見当たらない。


「くそ…どこにいやがる…。」


 高橋は一旦落ち着こうと、再び物陰へ身を隠す。


「やあ。」


「っ!…ナポレオン…!」


 高橋の背後に、いつの間にか一人の男が立っていた。


「さよなら。」


 ナポレオンが剣を振るう。高橋はその場に倒れた。


「こちらナポレオン。高橋を仕留めた。それから田中の戦闘不能も確認した。」


『了解。お前はそのままルシファーの生死も確かめてこい。私たちも移動する。』


「了解。」


 耳に取り付けたインカム越しに会話を終える。ナポレオンは、ルシファーが倒れている場所へ向かって歩き始めた。

皆さん、いかがだったでしょうか。

次から次へと倒れていく《暁》の仲間たち。

多くの命が失われていく中、遂に須郷雅仁の野望が本格的に動き出す。


次回第七十七話 命の数

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。